表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のわたし  作者: Miko
20/20

怖い

母が食器を片付け始める。

父も席を離れようとしている。

今言わなきゃ、きっともう言えなくなる。

もう怖いを言い訳に引き延ばさない。


「あの、、お父さん」

緊張で声が掠れる。でももう引き返さない。

美久ちゃんと決めたことだから

「うん?どうした、凛」

「私______



    __新しいキャンバスがほしいの」


いま、わたし、、なんて?


「__公募展に出す絵がうまくいかなくて、もう1枚描きたいの」

「そんなことか。いいぞ、いま部屋から持ってくるな」

「ありがとう、お父さん」

違うの

私はキャンバスなんて欲しくなのに

言えない、どうして、、?


「はい、これ。凛は熱心だな」

「ありがとう!だってお父さんのむすめだもん」

ああ、そっか。

まだ私、怖がってるんだ。

美久ちゃんに、ちゃんと伝えるなんて言ったくせに。

わたし、決心したつもりだったんだけどな、、笑

きっと美久ちゃん呆れちゃうな、こんな私を見てなんて思うかな?

わたしは心のなかで自嘲的に嗤った。


自室に戻ると急に視界が狭まり、床に座り込んだ。

体の調子が悪かったことなんてすっかり忘れていた。

"仮面"はそんなとこまで隠してしまうのか。

今、この部屋でも"仮面"が取れなくなったらどうなってしまうんだろう?

その光景を想像しようとするだけで、目眩がしそうだ。

というより、本当に目眩がした。

熱が上がり、世界が回っているような気さえした。

父から渡されたキャンバスをその場に置き、這いつくばりながらベッドへ向かう。

が、イーゼルにぶつかり描いた絵が落ちてきた。

『画材は粗末にしないこと』

記憶の中からそんな言葉が思い出される。

拾わなきゃ。さっき置いたキャンバスも持ってこないと。

、、いや、今は早く寝ないと。

でも、、。

私は重い体に鞭を打ち、2つのキャンバスを丁寧に壁に立てかけた。

朝放置していた絵の具、筆、パレットもいつもの位置に戻した。

習慣がつくのは恐ろしいことだと思った。

わたしはベッドに倒れ込みながら、そんなことを考えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ