夕食
「凛、今日は学校どうだった?」
「いつも通りだったよ。でも、明日は友達と図書館で勉強するって約束したんだ」
夕食を食べながら、いつもの母の何気ない質問に応える。
「そうなの。それって、今日一緒にいたっていってた子?」
母は感が鋭い。
それに加え、美久ちゃんのことについて触れないといけない雰囲気にもなった。
下手なことは言えないが、美久ちゃんは芸術に興味があるし両親のことも知っている。
「うん、美久って言う子で、芸術に興味があるらしくて色々教えてほしいって言われたんだ」
嘘のみの話より、本当と嘘が混じった話のほうが人は信じやすい。
いつか読んだ本にそう書かれていたことを覚えている。
こんなところで役立つとは思わなかった。
知識をつけておいてよかったと、勉強を頑張っていた頃の私に心の中で感謝した。
「そうなの。じゃあ、その子が家に呼びたいって凛が言ってた子なのね」
「うん、そうなんだ」
母には、芸術が好きな子としか話してなかったはず。
どうしてそこまで結びつけられたかは分からない。
私がいつもと違うって気付いて鎌をかけた?
それともただ単純にそう思っただけ?
父も視線を1度こちらに向けたが、すぐカレーに視線を戻した。
何が気になったのだろう?
芸術が気になっているという部分?
それとも何か別のこと?
いつもはそんなこと考えないのに、言葉や視線の1つ1つが気になってしまう。
あれ?
どうして私はそんなに美久ちゃんのことを後ろめたく思っているの...?
私にとっては大切な友達だけど、そんなこと両親は知らないしこれから話すことに関わっているんだから話していたほうが楽なはず。
私は何を思った?"下手なことは言えない"だなんて。
...仮面をつけたフリなだけ。
心の中までそんなこと思わなくてもいい。
もう仮面を取ったっていいのに。
決心がつかない、外すのが怖い。
美久ちゃんの家を出たときには、固く決心がついていたのに。
そんなことを考えているうちに、夕食のカレーはほとんど食べ終わっていた。




