探したい
私は仮面をたくさん作った。
みんなが望む、私になるために。
失望されないために。
[天才] [話しやすい子] [クラスのリーダー] etc...
いつも付けて、はずれないように。
そうしているうちに、仮面は一つになった。
[私]
この仮面はどんなわたしも完璧にしてくれた。
周りが望み、思っているわたしに。
誰の前でも外すことなく付けたままにしていたら、外した顔を、わたしを忘れていた。
分からなくなっていた。
でもそんなのどうでも良かった。
周りさえ、両親さえ良ければ。
そんなふうに考えていたら、仮面を付けていることすら忘れていた。
何も分からなくなっていた。
今の今まで、そのことにすら気が付かないほど。
「___だから、ありがとう」
美久ちゃんの話で気がついた。
話してくれていなかったら、会うことがなかったら、一生このままだったかもしれない。
「私、自分のしたいこと探したい」
本当にしたいこと。
誰かが望んでいる、期待している、当たり前だと思っている、そんな未来じゃない。
私が望む未来を、他の誰かじゃない 私 が見つけたい。
けど、今のままじゃ見つけられない。
だから、
「協力してくれないかな?」
私と同じだった美久ちゃんと一緒になら、見つけられる気がする。
美久ちゃんなら、きっとどんな私でも失望しないでくれると思う。
初めて本音で語り合えたから。
「うん!…あの、あたしのしたいこと探しも協力してくれる?」
美久ちゃんは少し不安そうに聞く。
そんな質問、選択肢なんて1つだけなのに。
「もちろん!」
私は大きく頷いた。
まだ問題の解決策もゴールもわからないけど、今よりきっとわたしらしくいられる。
根拠も何もないが、何故かそう思った。
外はいつの間にか雨がやみ、灰色の雲の隙間から光が溢れていた。




