分かる
「え。」
今度は日置さんが放心状態になる番だった。
私は先程まで俯きがちだった顔を上げ、真っ直ぐ日置さんを見つめる。
「私は迷惑だなんて思ってないし、むしろ嬉しかったくらい」
靴を汚してまでも私を探してくれていたのを思い返し、顔が綻ぶ。
そのまま私は話を続けた。
「私、美久ちゃんが話しかけてくれたこと、すごく嬉しかった、それと探しに来てくれたことも。美久ちゃんの優しさが嬉しかった」
そう伝えると、美久ちゃんは静かに涙を流した。
泣かれると想像していなかった私は動揺した。
「あたし、仲間はずれが嫌で、誰かと一緒にいたくて、悩んでることとか、一緒に解決したくて、でも、いつも空回りして、みんな離れちゃって、ひとりになって、」
美久ちゃんはところどころ声を詰まらせながら話し始めた。
私はうんうんと頷きながら話に耳を傾けた。
「あたし、お兄ちゃんがいるの。でもね、生まれつき、足が動かなくて、いつも、お兄ちゃんには、パパかママが、一緒にいて、あたしはいつもひとりだったの、羨ましかったの。でもね、お母さんの手伝いをしたら、"いい子"って褒めてもらえて、あたしを見てくれて、すごく、すごく嬉しかったの、」
そう話す美久ちゃんは、とても悲しそうだった。
「だから、いっぱい手伝ったの。掃除も洗い物も、できることは何でも。褒めてほしかった、いい子って、ありがとうって、もっと言ってほしくて。そしたらね、手伝うのが、当たり前になっちゃって、褒めてもらえなくなって、またひとりになって、。だからね、クラスの人の悩みとか解決して、"ありがとう"って言われたとき、嬉しくて、もっと頼ってほしくて、やりすぎちゃって、うざがられて、また、ひとりになって、」
そこまで話すと、美久ちゃんは俯いてしまった。
わかる気がする、美久ちゃんの気持ち。
私も、両親に認めてもらいたかったんだ。
誰かの期待に答えたかったんだ。
全部誰かのために動いていたことから始まったんだ。
このことを気づかせてくれて、こんな辛かったことを話してくれて
「ありがとう」
今度は私が話す番だね




