優しいが故に
「タオル持ってきたよ!」
開いた扉から2,3枚ほどタオルを持った日置さんが出てくる。
「ぁ、ありがとう..」
わたしは差し出されたタオルを受け取りながら言った。
いつもの表情はつくれなかった。
代わりに、戸惑いや不安の見える表情になっていた。
しかし日置さんはあまり気にしていない様子だった。
そればかりか
「やっぱ全身濡れてるから着替えもいる?下着も貸すし..あ!そこまでやるなら、お風呂入ったほうがいいよね〜あったまるし」
なんて頼んでもいないのに、私を善意でもてなそうとしてくれている。
質問のことは忘れたのかな...?
きっと私を気遣ってくれているんだ。
いつまでもこのままじゃ申し訳ない。
「...なんで逃げたか、聞かないの...?」
考えをかなり巡らせたにも関わらず、そんな言葉しか出てこなかった。
「あー…えっとぉ...」
...?
何故か日置さんはバツが悪そうだった。
しばらく「うーん」と唸っていたが決心したように顔を上げて
「ごめん!!凛ちゃん!!」
と、両手を顔の前で合わせながら言ってきた。
わたしは訳がわからず放心状態だった。
「ど、どうして謝るの」
私のほうがひどいことをしたはずなのに。
謝るのは私のほうなのに。
「タオル取り入ったときちょっと遅くなったでしょ?あたし、自分勝手すぎたかもって考えちゃって」
そう話す日置さんは、今までと違いどこか悲しそうだった。
何かを思い返し、それを噛みしめるように
「前の学校でね、困ってそうな子がいたんだ。あたし、そういう子ほっとけなくて笑 毎日何かあったら話してねって声かけるようにしたんだ。そしたら、その子から『迷惑、鬱陶しい』って言われちゃって...笑」
無理やり笑顔を作りながら、暗くならないように話してくれる。
私の顔もこんなふうに見えてたのかな。
「あたしもバカだよね、またおんなじことしようとして笑 これで何度目だろうな〜」
日置さんは優しかった。
きっとタイミングが悪かっただけなのに。
「あ、さっきも勝手に連れてきたりとかしちゃってたし」
放っておかず探してくれて、こんなにも良くしてもらって、わたしのほうが申し訳ないのに。
「凛ちゃんの気持ち考えなくて、」
わたしは言わなくても気遣ってくれる、その優しさが嬉しかったのに。
「ホント、ごめんね?」
「そんなふうに言わないで、美久ちゃん」




