一呼吸
この度は投稿の順番を間違えてしまい、大変申し訳ありません。
投稿エピソードの確認が不十分であったために起こったミスです。
今後このようなことがないよう精進して参りますゆえ、どうか寛大な心でお許しください。
では、物語を引き続きお楽しみくださいませ。
しばらく歩くと、ある一軒家の前で立ち止まった。
外観はオレンジの屋根に白いレンガ模様の壁、家の表札には「日置」と書かれていた。
日置さんは傘を閉じて家の戸を開け、私を中へ招き入れた。
「玄関で待ってて、タオル持ってくる!」
そう言い、日置さんは部屋に続く扉の奥へと消えていった。
雨の音が鮮明に聞こえてくる。
一人玄関に残された私は暇を持て余し、辺りを見渡した。
家の中は木材を基調とした空間で、どこか安心感がある。
壁際に先程まで使っていた傘が立てかけられ、まだ雨水が滴っている。
玄関に出ているのは日置さんの靴のみで、ビビットカラーだった赤の靴が濡れて変色している。
シューズボックスの上にはピンク、白、黄色など様々な色のガーベラの造花が飾られている。
「...?」
他に目を移そうとしたとき、造花の奥に写真立てが見えた。
何故か造花に隠されるように置いてある。
だめだと思いつつ、興味に負けて写真立てを手に取った。
__いつもなら相手に許可を取るのに。いろんなことがあり気が抜けていたのだろう。
写真は濡れていたのか、思いきり握られたのか分からないが、しわだらけだった。
写真には小学生位の日置さんと、そのお母様とお父様と思われる人物、そして日置さんのお兄さんであろう中学生位の人物が写っていた。
みんな笑顔で楽しそうな様子が撮られていて、日置さんは動いていたのか少しぶれてしまっている。
写真の中でも日置さんの活発な様子が伝わってくる。
お兄さんはどこか不自由なのか車椅子に乗っていたが、笑顔は輝いていた。
扉の奥から足音が聞こえる。
私は慌てて写真立てを元の場所に戻した。
そして、頭の片隅に置いていた、あまり考えないようにしていた、日置さんからの質問の答えをどうするかという問題が再び浮かび上がり、少し緊張感が走った。
...いつも通りにできるだろうか。
いや、今から繕ったところで無駄かもしれない。
ならどうするべきか。
本当のことを話してもいいのか?
わからない。
私は決めきれずにいたが、扉は開くのを待ってはくれなかった。




