温度
雨はどんどん強くなり、大雨と言えるほどになった。
制服は濡れたことにより肌に張り付き、重くなった。
靴にも水が入りこみ、不快感が募る。
視界も悪くなり、段々と歩みが遅くなる。
そして悪天候の中、とうとう私の足は完全に停止した。
どこかで雨宿りしようと急ぐような声、私の横を怪訝そうな顔をして通り過ぎていく人々。
私は立ち止まったまま、空を無意味に見上げる。
黒い雲がいつもの空を覆い隠している。
私のこともいっそ、隠してくれたらいいのに。
あまり働かない頭でそんな事を考える。
少し、寒気がする。
動くのをやめたせいで、雨に濡れた体がどんどん体温を奪われていく。
家に帰らなきゃ。
でも、母になんて言おう?
突っ立ったまま考えていると、私の横をトラックが走っていった。
その際水溜りがあったらしく、全身に水しぶきを浴びた。
「惨めだな、わたし」
小さく呟いた言葉は雨音にかき消され誰にも届かなかった。
けど
「どうして逃げたの?」
後ろから声がした。
振り返ると、傘を差している日置さんがいた。
履いている赤のスニーカーは、濡れて色が変わっていて泥もついている。
…もしかして、私を探してくれていた?
だとしたら、本当に申し訳ない。
急にいつもと違う私になったり、置いてきぼりにしたり、約束についての進捗も話さずに、体調不良で迷惑かけたり。
「...ぁ、ぇッと」
なんて言おう。
置き去りにしてごめん?
ごめんで許されるのかな?
いや、質問されたから先に答えたほうがいいのかな?
いつもみたいに言葉が浮かばない。
答えられず立っているだけの私を、日置さんが痺れを切らして手を引っ張った。
「やっぱ後で聞く!風邪引いちゃう」
そのまま私を持っていた傘の下にいれ、私の家とは別の方向へ少し急ぐように歩き始めた。
握られた手は、雨で濡れた体にはとても温かく感じた。




