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思い出からの復縁

引っ越し準備で段ボールを片付けていた時、古い写真アルバムが出てきた。


「これ、もう捨てようかな...」


開こうとしたアルバムの隅から、一枚の写真が滑り落ちる。3年前、遊園地でのツーショット。彼との最後のデート。


「翔太くん...」


写真に写る彼の笑顔を見つめていると、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。


別れは私からだった。仕事に打ち込む彼を、寂しいと責めてしまった。でも本当は、自分の未熟さが原因だったのかもしれない。今なら分かる。誰もが必死で自分の道を歩いているということを。


携帯を取り出し、削除しなかった彼の連絡先を見つめる。最後のLINEは「お元気で」。それ以来、連絡は途絶えていた。


窓の外では桜が舞っていた。この時期になると、いつも思い出す。初めてのデートで、彼と歩いた桜並木のこと。


「やっぱり、伝えたい」


行動を起こさなければ、何も変わらない。そう思い、指が震えながらもメッセージを打ち始めた。


「突然すみません。お元気ですか?」


送信ボタンを押した瞬間、心臓が飛び出そうになる。返信なんて来ないかもしれない。それでも、この想いは伝えたかった。


数分後、既読がつく。そして...


「元気だよ。葵さんこそ、元気だった?」


思わず涙が零れた。変わらない優しさに触れて、もっと大切にすべきだったと悔やまれる。


「実は、引っ越しの準備をしていたら、遊園地の写真が出てきて...」


言葉を続けると、彼からの返信が続いた。


「懐かしいね。あの観覧車、すごく並んだよね」

「今でも時々、思い出すんだ」


胸が高鳴る。


「よかったら、お話できませんか?」


送信して、待つ。


「今度の土曜日、時間ある?」


その日、私たちは初デートの場所、桜並木で再会した。


彼は少し痩せていた。でも、笑顔は覚えているままで。


「仕事、今でも忙しいの?」


「うん。でも、今は上手くやれてるよ。葵さんに言われたこと、ずっと考えてたから」


話していくうちに、お互いの近況が見えてきた。彼は仕事と向き合い、私は自分の未熟さと向き合った。離れていた時間が、二人を成長させていた。


「実は、葵さんのこと、まだ...」


彼の言葉を遮るように、桜の花びらが舞う。


「私も、です」


二人の間に流れる空気が、少しずつ温かくなっていく。


「もう一度、一緒に歩いていけたら」


彼の言葉に、私は静かに頷いた。


思い出の品から始まった再会。でも、これは過去への回帰ではない。積み重ねてきた時間と経験を胸に、新しい関係を築いていく始まりだった。


散りゆく桜の下、私たちは新たな一歩を踏み出した。今度は、もっとお互いを理解して、大切にしていける。そう信じながら。

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