第94話 マオの初めての友達
次の日になり、私は食事以外防音室に籠りひたすらピアノの練習をさせられていた
そして今日の夜ご飯はニックのディナーショーを聴きながら食べる
私とマオと…
「初めまして。僕の名前はキャンベル・チーノです。」
「初めまして。私の名前はシエルです。弟のマオと仲良くしてくれてありがとう。」
彼の名前はキャンベル・チーノ。マオの人生初めてのお友達だ。年齢は十歳の可愛らしい男の子だ。
「マオの姉ちゃんすんげえ可愛いね!」
「可愛い見た目に騙されないで。シエルは恐ろしい女だから。」
「怒るとこわいの?」
「人の心を掌握して操る魔性の女だよ。」
「かっけぇじゃん!!」
「ダメだよ!近づいたら操られるから!危険なんだ!本当だよ!」
「人を操る魔法を使うの?」
「そうさ!」
「すげぇ…!!」
「そんなこと出来ないわよ…私は魔法は使えません。」
正体を隠して乗船しているので、私が白魔法を使えるなんて言うわけにはいかない
私は今白魔法しか使えないので無能力者になってしまう
「シエルお姉ちゃん魔法使えないの?」
「うん。」
「俺もまだ使えないけど、大人になったら雷の魔法使いになりたいんだ!!」
「両親が雷の魔法使いなの?」
「パパとママはどっちも土魔法だよ。でも土魔法なんて面白くないじゃないか。雷がいい!!かっけぇもん!!」
「フフフッ。なれるといいね。雷の魔法使いに。」
「俺は今からイメトレしてるから完璧だよ!イナズマサンダーってね!!」
「かっこいいじゃん。」
「だろう!?マオは?何魔法使いになりたいの?」
「俺は黒魔法使いだよ。」
「え?黒魔法?」
…マオ。正直に言うんだ
初めての友達なのに
一緒にいて楽しめる人なのに
黒魔法が使えると告白すれば
離れていくかもしれないのに
私は不安を募らせながら見守る
「僕は破壊したり洗脳させることしか出来ないんだ。」
マオはどんな気持ちで告白しているのだろうか
チーノの答えが怖くて
私が震えてしまう
「…かっけぇ。」
「え?」
「かっけぇ!!すげぇ!!そんな魔法聞いたことないよ!!」
「でも…僕は人を傷つけることしか出来ないんだ。」
「いいじゃん!悪の組織をぶっ壊せるぜ!!この世の悪を殲滅すればいいんだよ!!そしたらマオはこの世界のヒーローになれるさ!!」
「僕がヒーローに?」
「そうだよ!俺も魔法使えるようになったら一緒に悪の組織を滅ぼそうぜ!」
「悪の組織ってどこにあるの…?」
「わかんねぇ!!あーあ!!聖女が魔王を倒しちゃったから平和になってつまんないよなぁ!!魔王が生きてたら俺がぶっとばしてヒーローになれたのになぁ!!」
「…ブッ。」
「…フフッ…。」
「「アハハハハハハハハハハハ!!!!」」
私とマオは笑うのを堪えきれずに二人で大笑いしてしまう
平和になって
つまらないから
魔王を倒して欲しくなかったなんて
そんなこと言われたことなかったから
「フフフッ。平和な世界も楽しいよ?」
「やだよ。僕は魔王を倒して伝説の英雄になりたかったの!」
「魔王を倒すより魔王と友達になる方が面白いと思わない?」
「悪の親玉と友達になるわけないじゃないか!」
「悪い魔王じゃなかったら?」
「この世界にいい魔王なんているわけないだろう!?」
「いるかもしれないよ?世界は広く、私達のまだまだ知らない世界がたくさんあるのだから。」
「シエルお姉ちゃんは将来何になりたいの?」
なりたいものか
考えたことなかったな
今はシエルだから
ピアニストにしとこうか
「ピアニストかな。」
「ふーん。つまんないの。」
「かっこいいでしょうが!!」
「ハハハッ。僕は平和になってよかったと思っているよ。だって…ずっと欲しかった家族と友達がいて。僕は今一番幸せだから。」