第91話 旅立ち
「マオも一緒に行くことになったからよろしく。」
私はマオと手を繋いで堂々とニック様に言う
「…あのねぇ。出港直前でいきなりもう一人乗せるなんて無理だよ?」
「金ならある。」
「部屋も二つしか取ってないし。」
「私とマオは毎日一緒のベッドで寝てるから問題ないわ。」
「君達毎日一緒のベッドで寝てるの?」
「そうよ。」
「マナ…こんな子供まで誑かしてるの?さすがに倫理観に欠けすぎててドン引きだよ。」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる!?マオは私の弟だから!!」
「え?全然似てないけど。」
「血は繋がってないから。」
「そうなんだ…それでも一緒のベッドで寝るのはさすがにもうやめた方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「マナの体はもう子供じゃないんだから子供には刺激的すぎるんじゃないかな?マオ君がいつ狼になるかわからないよ?」
「マオはキスしようとしただけでも緊張しちゃうお子様だから大丈夫だよ。」
「キスしようとした?」
「あ、やべ。」
「マナ…君は本当に悪い女だね。」
「聖女のはずなんだけどな。」
「…一緒に来るなら部屋は別々にして。」
「やだよ。マオに抱きついて寝ないと落ち着かないもん。」
「この悪女からマオ君を救わないといけないからね。」
「ちょっと待ってよ!私達はお互いに抱きついて寝ないと寝れないから…」
「うるさい。大人がしっかり線引きしないといけないのに何してるの?」
「でも兄弟だし…マオは子供だしセーフかなって…」
「ダメです。船の客室はもう一つ部屋を取って別々の部屋で寝ること。そうしないと連れて行かないから。」
「うぅ…わかったわよ。」
「はいこれ。」
そう言われて差し出されたのは金色のウィッグと碧眼のコンタクトレンズだった
「なにこれ。」
「変装して。」
「なんで!?」
「そりゃあこの世界唯一の聖女様を学園外に出すのは危険だからね。誘拐されて人身売買されるよ。」
「そんなに恐ろしい世界なの!?」
「悪い人間はたくさんいるんだよ。だから今日からマナは変装して別人になってもらう。」
「フッ。仮の姿というわけね…。」
「マナは厨二病入ってるよね。クロネコガールの時もそうだったけど。」
私は渡された金髪ウィッグと碧眼のコンタクトレンズを装着する
「どう?」
「うーん…恐ろしいほど美人で目立つね。メイクもしよう。」
「メイクは苦手なんだけど。」
「俺がするよ。」
「できるの!?」
「舞台に立つ時にメイクはして貰うからね。見よう見まねだけどやってみるよ。」
そう言ってニック様が私の顔をメイクしてくれた
「どうですか?モブになれましたか?私。」
「全然。宇宙人みたいになったよ。」
「宇宙人が船にいたら大騒ぎになりますよ。」
「そうだね。メイクは諦めよう。黒髪と黒目を隠せたらまぁ大丈夫でしょう。」
「名前は?変えますか?」
「そうだね。一応。」
「我が名はメソポタミア・カメール・ルルアンシエル!」
「長いからやめようね。」
「かっこいいのに!!」
「シエルでいいか。」
「我が名はシエル!!ハーバランド国の隠れた秘宝!!私の音楽で世界を制するピアニストである!!」
「マナは変装すると厨二病が発症するんだね…。」
「マナではない!!シエルと呼べ!!」
豪華客船の客室はあまりがあり、当日でもマオを乗せて貰えることが出来た
私達三人はこうしてハーバランド国を旅立ち
キッカ国へと豪華客船で向かった