第90話 猛特訓
夏休みに入り、ほとんどの生徒は実家に帰省をしている
しかし、私はヴァイオリンコンクールの練習の為朝から学園に通い、夕方まで毎日特訓している
無限に回復できる白魔法が憎い
ニックには休憩という概念がないのか
“もしかして食べなくても白魔法があれば生きていけるんじゃないのかな?”
なんて言い出した時はさすがに逃げ出そうとした
ご飯休憩がないなら私は伴奏なんてやめてやる!と強気に言ったらご飯休憩だけは勝ち取ることが出来た
あとはずっと弾かされてるけれど
こんなに毎日長時間弾いているのにも関わらず
ほんとうに少しずつしか上手く弾けるようにならないんだから
辛い
指が高速で動く魔法とかあればいいのに
“近道をせずに地道にコツコツと自分の力で積み上げたものにこそ価値があるんだ。楽をしようとするな。楽して手に入れたものは大事に出来ないものだ。”
これは前世のお父さんの言葉
私のビジュアルの良さで
楽して生きていくことを懸念して
耳がタコになるほど言われた言葉だ
本当に辛くて
しんどくて
大変だけど
今の練習が
努力が
必ず自分に返ってくるのだ
全ては繋がっているのだから
二週間の猛特訓を終えて
予選の時より安定して弾くことが出来るようになった
時間はかかるが
練習は身を結ぶから
出来るようになることが嬉しい
いよいよ明日、キッカ国に出発する
「僕も行く!!!」
マオが一緒に行きたいとずっと言っている
「マオはくしゃみするだけで破壊するんだから危険だもん。連れていけないよ。」
「スノーからくしゃみ止めの薬を貰っているから大丈夫!」
「薬があってもダメ。万が一があれば他国だし私一人では庇いきれないよ。人に向かってくしゃみして人がぶっ飛んだらしゃれにならないよ。」
「そんなこと言って僕をずっと魔塔に閉じ込めておくつもり!?」
「そうじゃないけど…」
「魔塔に来てから一度もくしゃみをしてないし、破壊もしていないだろう?安定してるじゃないか!僕だって行きたい!!」
「遊びに行くんじゃないの。」
「僕達は運命共同体だろう!?いつでも一緒じゃなきゃ嫌だ!!マナと一緒のベッドじゃないと寝れないよ!!」
「…仕方ないなぁ。」
「やったーー!!絶対邪魔しないから!!ありがとうマナ!!」
「明日行くから最低限必要な物をカバンに詰め込んでね。」
急遽マオも一緒に行くことになった
ミケお爺ちゃんは不安そうな目でこちらを見ている
爆弾を抱えて行くようなものだからな
マオの危険性は誰よりもミケお爺ちゃんはわかっているから
それでも私はマオのおねだりには弱い
マオの願いなら仕方ない
キッカ国が破滅しないように見張るしかない
「