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第87話 コンクール

アーネルド・マリアから

エラート・マナに入れ替わってから

怒涛の日々を送っていた

マリアとして穏やかに過ごす日々も大好きだったけれど

マナとして忙しない毎日を過ごすことも案外悪くない

そんな忙しない毎日の中

私が努力して頑張ってきたことがある

それはオーケストラ部の活動であり

ピアノの練習だ

努力をしなければ報われない

努力をしても報われるとは限らない

努力も必要であり

才能も必要だ

そんな実力主義のこの世界で

私は強くなりたいと願いながら

毎日練習を続けた

そして今日はいよいよ本番

ニックのバイオリンコンクールの伴奏を私は演奏する


本番前の舞台袖でニックが話しかける

「緊張してる?」

「びっくりするぐらい緊張してます。私、昔から舞台度胸はあったから緊張なんてしたことなかったのに。私が主役じゃなくてサポートだからでしょうか。私だけの舞台じゃないって緊張しますね。あと、やっぱり準備期間一ヶ月は早すぎますよ。納得が出来るレベルの伴奏を出来る確率が低すぎる。」

「間違えなければそれでいいよ。」

「完璧に演奏することが難しいの!!私は!!」

「一週間ぐらい前までは本当に大丈夫かなってレベルだったけれど、三日前ぐらいからはようやく人前で弾けるレベルに仕上がってきてたし大丈夫だよ。」

「そんな完成度で本当に大丈夫なのかな…。もうすぐ本番だ。集中しなきゃ。」

「集中しなくていいよ。」

「…え!?なんでですか!?」

「マナは集中したら他の音色聞こえなくなってるから。」

「え…そうなんですか?そうなのかも…??」

「いつも通りでいいよ。いつもの音楽室で練習してるぐらいの気持ちでリラックスして弾けばいい。俺がなんとかするから。」

「かっこいい。」

「優勝出来なかったらマナのせいな。」

「ちょっと!プレッシャーかけないでください!」

前の人の演奏が終わりいよいよ私達の出番だ


「俺の音をよく聴いて。俺は審査員の為じゃなくて、マナの為に今日は弾くから。俺に合わせて気持ちよく弾いてくれればそれでいいさ。俺達の最高のハーモニーを聴かせてやろう。」

そう言ってニックが私の手を引く

ニックは私の憧れだ

夢をしっかり持っていて

目標に向かって行動をしている

才能に溺れることもなく

努力をしている

自分を律している

驕ることなく

謙虚であり

常に向上心を持っている

すぐに怠けてしまう私とは大違いだ

だからこそ

この人についていけば

この手を信じてついていけば

いつか憧れのニックのように

少しはなれるかな


私達は舞台に上がる

ピアノの前に座ると緊張が溶けてリラックス出来ていた

準備が出来たのでニックを見ると

余裕そうにいつも通り笑っていた

かっこいいなぁなんて思いながら

私は一呼吸して伴奏を始める

ニックの音が今日はよく聴こえる

いつもの音楽室の設備もとても良い場所なんだけど

今日は更に凄い舞台で弾いているからか

音が七色のように輝いて聴こえる

舞台慣れしてる音だななんてぽんやりと考えながら私は弾いた

合わせるように

溶け込むように

意識をして弾いた


演奏が終わり、私達は舞台袖へと移動する

ニックが私に抱きつく

「わっ!」

「ありがとう!マナ!!やっぱりマナのピアノは最高だよ!!」

「えっ…えへへー!!ありがとうございます!!ニック様のバイオリンも最高でしたよ!!」

「そうだろう?俺は今日人生で一番いい演奏が出来たよ。マナのお陰さ。」

「えぇ!?私は寧ろ足を引っ張ってばっかりだったし…」

「そんなことないさ。マナのピアノだからこそ俺は力を発揮できたんだ。マナに伴奏を頼んでよかった。」

「そんなっっ!!まだ結果も出てないのに泣かせにくるのやめてくださいよ!」

「そうだったな。ごめんごめん。」


コンクールは終わり結果発表がされる

ニックは見事に一位を獲得した

「おめでとうございます!!ニック様!!」

「ありがとう。マナのお陰だよ。」

「うぅぅ…ニックが頑張って教えてくれたお陰だよ…。ありがとうございます…。」

私は鼻水と涙でぐちゃぐちゃになりながらお礼を言う

「次の本選はキッカ国だから。」

「え?」

「これは予選だよ。本選はまた一ヶ月後にキッカ国であるから。」

「そ、そうなんですね。知らなかった。」

「言ってないからね。」

「あ、じゃあ私本選はピアノ伴奏やらないんですよね?」

「一緒に行くよ?」

「聞いてないですけど!?」

「言ってないからね。」

「まさか別の曲を…?」

「当たり前だろ。また一カ月特訓するからな。」

「…。」

私はニックに憧れて

怠け者になりたくなくて

始めたピアノだけど

スパルタすぎるよ

休む暇もないじゃない

今日で一段落して夏休みはゆっくり過ごせると思っていたのに

また地獄の特訓の日々が一か月続くのか…

「疲れても白魔法で回復出来るから無限に練習出来て便利だからいいよね。また一ヶ月身体を駆使して頑張ろうね!!キッカ王国にも俺達の音楽を聴かせて驚かせようぜ!!」

ニックの目は輝いていて

眩しかった

この人は音楽を愛して

音楽の為に生きてるんだろうな





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