第86話 きっと素晴らしい人生に
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二時間程土下座をして王様を説得してなんとかベルチェ様の死刑判決だけは免れた
私の勇姿を見守っていてくれたベルチェ様とは友情が芽生えたと思っていたのに
あっさりと振られてしまった
やはり恋敵と友情を育むのは難しいのだろうか
友達になりたかったのに残念だ
それから三日程経ち、ベルチェ様の処分が決まったと報告をミケお爺ちゃんから受けた
世界最強の魔法使い様は王城と繋がりが固く情報も入りやすいらしい
ベルチェ様は国外追放処分
身分も剥奪され
平民になる
コーラン家はベルチェ様を追放すれば貴族として家門が残ることになったらしい
もうすぐニック様とのバイオリンコンクールの予選があるこら忙しいのだが
練習後に私はベルチェ様に会いに行くことにした
馬車を呼んで王城行くのは時間がかかりすぎるので
私はアーネルド・マリアにお願いをして王城まで連れて行ってもらう
ちなみに私がベルチェ様の無罪判決をお願いした時もマリアちゃんにお願いをして連れて行って貰った
私はベルチェ様と面会を許可して貰う為にまずは王様に会いに行く
「えへへー!また来たよーん!」
「はぁ…。来なくていいから…。」
「ちゃんとお礼言ってなかったから。我儘ばっかり言ってごめんね。ベルチェ様を死刑じゃなくて、国外追放にしてくれてありがとう。一番理想的な処分にしてくれたから。」
「マナと二度と関わらないで欲しかっただけだがな。」
「えー。国外旅行した時に会いに行くよ?私は。」
「…何故そんなに友好的なんだ?自分を燃やした相手なのに。」
「なんでだろうね。なんとなくほっとけなくて。じゃあ私はベルチェ様に会いに行ってきますね。」
「…勝手にしろ。」
私はベルチェ様に会いに行く
マリアちゃんは気遣って私とベルチェ様を部屋に二人きりにしてくれた
「国外追放処分おめでとうございます!」
「何がめでたいのよ。」
「晴れて自由の身じゃないですか。自由に生きられるなんて羨ましいです。」
「もうこの国に足を踏み入れることは出来ないけどね。」
「ベルチェ様に会いたい人は国外にでも会いにきてくれますよ。」
「私にそんな相手はいないわ。家族は今回のことで関係性が最悪だし。面会に一度も来てくれなかった。あの人達にとって私は利用出来る駒を動かしていただけにすぎなかったんだな。」
「そんな人達ほっとけばいいんですよ。本当に全てを捨ててやり直せるんですから。」
「私の人生ほんとゴミだったな。こんなことになって私に会いにくる人はマナだけなんだもん。」
「あら。私に出会えたことが一番の財産でしょう?」
「マナがいなければこんなことにはなってないけれど。」
「そんなこと言わないでくださいよぉ。嫉妬して火の魔法を暴走させるような男より私の方が絶対いいでしょう?」
「クリス様は素晴らしい人だよ。マナよりもずっとね。」
「クリス様のこと今でも好き?」
「当たり前でしょ。大好きだよ。」
優しく微笑むベルチェ様の姿は
恋するヒロインのそのものだった
「クリス様と離れることは辛い?」
「辛いよ。でも一緒にいることも辛かった。だから死のうと思ったんだ。辛いけど生きていれば素晴らしい人生になるってマナがか言ったから。その言葉を信じて頑張ってみるよ。」
「ベルチェ様なら絶対大丈夫だよ。国外にまた会いに行くからね。」
「私はもう二度と会いたくないけれど。」
そう言っていらずらっぽくニコッと笑ってくれた
「じゃあ…お元気で夜遅くなったし帰りますね。」
「マナ。」
「なんですか?」
「クリス様は素晴らしい人よ。」
「…そうですかね?」
「うん。だからクリス様をよろしくね。」
「私はそんなことよろしくされたくないんですが…」
「マナがクリス様を幸せにしてあげてね。私には出来なかったからさ。」
「やだ。私にも手に負えないよ。無理。」
「フフフッ。恋したらね。めんどくさいことだってなんでも愛おしくなるから。私がこんなこと言っても説得力ないかもしれないけれど恋って楽しいものだよ。」
「想像できないな。そんな感情。」
「辛くてもしんどくても相手を思う時間が愛おしくて楽しいの。私はねクリス様に恋をしてよかったよ。クリス様には感謝してる。」
「私はちゃんと恋が出来るでしょうか。」
「さぁ。わからないけれど。でも…マナが恋をすれば今よりもずっと素晴らしい人生になるよ。私が保証する。」
それは私がベルチェ様にエールとしてこの先の人生が素晴らしくなるよう言った言葉だ
恋愛に自信がない私を見据えて言ってくれたのかわからないけれど
魔法の言葉を貰えた気がした
恋をすれば破滅をすると思っていたけれど
そうじゃないのかもしれない
だって目の前の女の子は
恋をして
失恋をしても
こんなにも美しいのだから
「ありがとう。ベルチェ様。私、ベルチェ様に会えてよかった。素敵な恋が出来るように頑張るね。」