第85話 重罪
「自分の犯した罪の重さがお前にわかるか。」
俺は王城に強制帰宅をイシュタル先生に命じられて
スザクに王城まで送られた
そして父上に
この国の王様に
この国で最も偉い人間に
そう言われた
「申し訳ございませんでした。」
「謝ってすむ問題ではないことはわかっているな。」
「はい。覚悟は出来ています。」
ハーバランド家から追放されるなら
寧ろ好都合だ
マナは貴族社会を嫌っている
権力ある人間が苦手なのだろう
平民として彼女と生きていけるなら
これ以上ない幸せだ
「今日犯したお前の罪を説明しろ。」
「俺が嫉妬で火の魔法を暴走させてしまったことです。」
「犠牲になったら者は?」
「スザクとアレクサンダーが火傷の怪我をしました。」
「観覧車の中にはレックスとマナがいたにも関わらず観覧車を燃やしたそうだな。」
「意図的ではありませんが、観覧車を燃やしたことは事実です。」
「マナを危険に晒した。」
「はい。」
父上が近づき俺に平手打ちをして
その後背中を踏みつけられる
「ぐっ…」
痛みで声が漏れる
「お前はいったい何様のつもりだ?」
「…。」
「この国の唯一の後継の一人息子の王子だから調子にのってるんじゃないか?」
「そんなつもりはありません…。」
「口答えをするな。愚息が。」
俺は顔を踏みつけられる
「お前の代わりなんていくらでもいる。血筋にこだわるならまた王妃にまた子供を産んでもらえばいいだけだ。それに俺の弟の息子だっているんだ。直系ではないが、お前でなくてもこの国は問題ない。お前が死んでもこの国は繁栄する。」
「…。」
「だが、マナの代わりなどこの世のどこにも存在しない。彼女が死ねばまた魔王が復活した時にこの国は滅ぶ。彼女しかこの世で白魔法が使えないんだ。この世の唯一の聖女。エラート・マナ。この世界の宝だ。絶対に安全に保護しなくてはいけない。」
「俺はマナを危険に晒す気はなく…」
「実際には観覧車が燃えてマナを危険に晒しただろう?」
「…はい。」
「それがどれだけ罪深いかわかってるのか?マナがいなければこの国もこの世界も魔王に殺されて死んでいただろう。精鋭騎士達が誰も敵わなかった魔王をマナはたった一人で倒したんだ。お前に出来るか?魔王を倒すことが。無理だろう?」
「…はい。」
「お前ごときの人間がマナに選ばれるわけないだろうが。恥を知れ。」
「…俺が選ばれないなら誰が選ばれるのですか?」
「そんなこと私が知るわけないだろう。」
「じゃあ俺でもいいじゃないですか。」
「マナが選ぶならクリスでも私は反対しないよ。」
「ほ、本当ですか!?」
「マナが決めた運命の人が誰でも私は反対しないよ、マナこそこの世界の理の全て。マナの怒りを買うことがどれだけ恐ろしいことか。マナは安全で幸せであるように保護しないといけないのに。知っているか?マナは魔王を倒した日は本当はこの世界を滅ぼす予定だったんだ。」
「…は?」
「マナの気が変わったからこの世界は平和になっただけにすぎない。マナのことを刺激するな。マナの気分でこの世界は滅ぶぞ。冗談ではない。本気でやるよ。そういう女だ。あいつは。」
「マナの悪口は言うな。」
「うるさい。口答えするな。マナの言うことは絶対だ。マナにクリスが毎日うるさくて嫌だから殺してくれと言われたら私は迷わずクリスを処刑する。」
「…。」
「マナが慈悲深い女でよかったな。クリスを殺す方が嫌がるようなお人よしだからな。」
「俺は愛されたいだけなんだ。」
「ハハハッ!お前の傲慢さを押し付けるだけの愛なんて鬱陶しいだけだよ!!」
「俺は…どうすればマナは愛してくれるんだ?」
「知らない。マナの好みの男なんて誰もわからないからな。」
「俺よりもいい男なんていないだろう!?」
「お前よりもいい男は山のようにいるよ。人の大事な手紙を破いたり、観覧車を燃やして殺しかけた男なんて選ばれるわけないだろう?」
「…どうすればいいんだ?」
「クリスは性格が悪いから終わってるよ。諦めな。雲の上のような神様に一番近い存在なんだ。そんな尊い存在に選ばれるなんて夢のまた夢だと思え。自分が一番いい男と思い込んでるナルシストなんて気持ち悪いよ。」
「…。」
「それでは牢屋へ行きなさい。」
「部屋じゃないのか…。」
「当たり前だろ。この世界の英雄の聖女様を危険に晒した罪は重罪だ。死んだ方がマシだと思わせるくらいに拷問してやるから。」
「え。」
「王子だろうが関係ない。嫉妬だろうが意図的ではないだうが関係ない。マナに対して危険な行動を続けるなら私は絶対に許さない。マナを大事に出来ないなら関わるな。この世の宝を私は守る義務がある。危険分子は潰しておかないとな。」
俺は牢屋に連れていかれて
そして鞭打ちの罰を受けた
マナを大事に出来なかった
俺の嫉妬の気持ちが暴走して行動してしまった
これが罪か