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第82話 愚かな者

遊園地の事件は収束し、クリス様は二週間の停学処分になり学園寮ではなく自宅謹慎になった

自宅謹慎。つまり王城で謹慎生活をクリス様は過ごすことになった

スザク様、レックス様、アレクサンダー様が頑張ってくれたお陰で大きな怪我人も死人も出なかったし、私がスザク様とアレクサンダー様の治療をしたから損害は観覧車の破損だけだった

一歩間違えれば殺人犯なのに

二週間の停学程度では済まさないで欲しいよ

王城で偉い大人から圧力かけられて大反省しろ

トマト毎日丸齧りしろ

噂によるとクリス様は恐ろしく厳しい教育を受けてきたようなので

クリス様を説教する偉い大人はたくさんいると思う

毎日心折るぐらい追い詰めてほしいよ

あのバカ王子

ともかくバカ王子もといクリス様がいないスカーレット学園はそれはそれはとても平和に過ごせて楽しもうと思っていたのに

何故こんなことになってしまったんだろう

元の世界もこの世界も理不尽なことだらけだ

私が私である限り

この地獄は繰り返すのだろうか

前世を振り返っても

今世を振り返っても

答えは出せないまま

きっと来世も繰り返すのだろう

自分の愚かさに

無力さに

心底絶望を感じる


朝,下駄箱を開けるといつものカオスなお手紙が溢れていた

ファンレター、ラブレター、呪いの手紙、いじめの告発文の盛りだくさんだ

クリス様がいないからだろうか

いつもの倍の量が詰まっていた

みんな私の下駄箱を何だと思っているんだ

でも真剣に書いてくれた子の手紙もあるだろうから

私は一つ一つよく目を通して教室で読む

「こんな人目につく場所で手紙を読むだなんて配慮が足りないんじゃないですか?」

パッと顔をあげるとコーラン・ベルチェ様がいた

ベルチェ様が話しかけてくれたようだ

「教室の隅だから大丈夫かなって思っちゃった。みんな気を遣って覗いてみようとする人もいないし…。」

「みんなに配慮して貰おうとするその態度が傲慢だわ。さすがは庶民ね。気品や気高さが全く感じないわ。」

「そうですね…。配慮が足らず申し訳ございません。」

「どうしてクリス様は貴方なんかに執着しているのかしら。」

「それは私にもよくわからないです。」

「白魔法って人の心も操って狂わせることも出来るんじゃないの?観覧車を燃やすなんて前のクリス様なら絶対にそんなことはしないのに。貴方がクリス様を操ってこの王国を滅ぼそうとしてるとか。」

「まさか…。白魔法にはそんな力はありませんよ。」

「貴方しか使えない魔法なんだから貴方が秘密にしていたら誰もわからないもの。恐ろしい女だわ。」

「さすがに言いがかりがすぎます。クリス様が遊園地で暴走した原因は貴方も聞いたでしょう?くだらない嫉妬だったじゃない。私は観覧車の中にいたんだからそんなこと出来るはずもないのに。」

「くだらない嫉妬。」

「…?」

なんだか様子がおかしい

「貴方にはわからないでしょうね。大好きな人が自分を愛してくれなくて。他の人間に夢中で嫉妬で頭も心もおかしくなるような気持ちが。」

「…わからないよ。そんなのわかんないよ。ベルチェ様にだって。私の気持ちなんかわからないくせに。」

「貴方の気持ち?」

「愛されても気持ちに答えてあげられない。この苦悩が。ベルチェ様だってわかんないくせに。」

「…ハハハ!!!何それ自慢??私は愛されすぎて困っちゃーう♡って言ってんの?」

「そうだよ!!愛されすぎて困ってるの!!」

「そんな贅沢な悩みを私のこの苦しみと一緒にしないでくれる!?私は小さな頃からクリス様に憧れてていつかクリス様と結婚できるようにって毎日毎日努力したのに!!貴方は何?急に出てきて。クリス様に溺愛されて。しかも告白を断って!!何様なの!?」

「そんなのただの逆恨みじゃない!!私は何も悪くない!!」

「嫌い。嫌い。嫌い。嫌い!!!!貴方なんか大嫌い!!!」

そう言うと同時にベルチェ様は私に向かって火の魔法を放つ

火の魔法は私の顔に命中して私の顔はあっという間に大火傷のまる焦げになった

「あっついいいいいいいいい!!」

私は教室が大騒ぎになっている声だけが耳に残る

大狂乱の教室の騒ぎの中

私はたしかに聞こえた

ベルチェ様が“ごめんなさい”と呟いた言葉を


「もう。いくら白魔法で全回復するとはいえダメージをくらう時は痛いんですから。少しは手加減して下さいよ。ベルチェ様。」

私は白魔法で顔を治療をして教室の様子がやっと見えるようになった

ベルチェ様は数人に抑えられ床に拘束されていた

「そんな大袈裟な…。もう離してあげてよ。私は白魔法で治療して無傷なんだし…。」

「何言ってるの?この世界の唯一の聖女様の顔を焼いたのよ?しかもこれだけ証人がいる前で。コーラン・ベルチェの人生はもうおしまい。死刑判決よ。」

ローズ様が言う

「…は?なんで??私と少し喧嘩しただけでしょう!?こんなことで死刑だなんておかしい!!」

「おかしくないわ。罪を犯した者は罰されなければならない。」

「罪?これのどこが??何もなかったわよ!!私が許してるんだからその他の人間は関係ないで…」


パンっと私が言い終わる前にローズ様が私の頬に平手打ちをする


「いい加減にしなさい。罪を犯した人には罰を与えなければいけないの。許してはダメ。マナの顔を焼いたことは大罪。この世界のルールに従いなさい。」

私は呆然と立ち尽くす

何故私はいつもこの地獄を繰り返すのだろうか

前世でも

今世でも

そしておそらく来世でも

一生逃れられないのだろうか


あーぁ


ほんとに…








愚かだ








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