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第81話 非日常

僕達は豪華な昼食を終えて外に出た

メリーゴーランドやお化け屋敷へと入ったが

俺達の班は常に最悪の雰囲気だった

クリス様は文句を言うか無視をすることしかしないし

ミメット様はクリス様の気を引こうと常に元気でいるが俺とローズ様にはちっとも相手にしてくれない

ローズ様は唯一話し相手に出来る相手だったのに

先程の質問をしてから嫌われてしまったようだ

ミメット様が話していることを俺達は聞き流しながら歩くという

地獄の空間だった

課外活動の思い出は苦い思い出になった

新聞部員でなければ普通に遊園地を楽しむことが出来たのだろうか

後悔先に立たず

学園に帰ってエド部長に褒めて貰うだけではなく

何かご褒美ぐらい欲しい

初めて任務遂行したのだからお祝いに何かねだってみようか

そんなことをぼんやりと考えながら歩いているとベンチに座っているミメット様とニック様を見つけた

「あ…。」

つい声が出てしまった。

「おい!!マナはどこ行ったんだ!!」

クリス様がミメット様とニック様に問い詰める

「マナならレックスと一緒に観覧車に乗ってるよ。」

目の前には観覧車があった

観覧車の中にマナ様とレックス様が乗っている姿が見える

「何故二人きりで乗っている!!密室で男女二人きりなんてデートみたいじゃないか!!」

「意図的に二人きりにさせたんだけど。」

「何故そんなことをした!」


「それはもちろんレックスがマナに告白出来るようにだよ。レックスの告白が上手くいけば晴れて二人は恋人になれるからね。今頃カップル誕生してるんじゃない?」


その言葉を聞いた瞬間クリス様は激昂し、クリス様の火魔法が暴れだす

全身から火が溢れ出し暴走する


「マナは誰にも渡さないと言っただろうがあああああああ!!!俺が最初に見つけたんだあああああああ!!横取りするなんて許さないからなああああああああ!!」


そう叫び、炎のドラゴンを召喚し、ニック様へと攻撃する

ニック様は土魔法で防御をして擦り傷一つつかなかった

「こ、こわ!!殺す気かよ!!ミメット逃げるぞ!!」

「は、はい!!」

そう言ってミメットの風魔法で二人は逃げていった

「てめぇ!!逃げてんじゃねえええええ!!」

そうクリス様が叫ぶと同時にどこからかわからないが、クリス様の護衛騎士のスザク様がクリス様を抑え込む

「観覧車に火が燃えうつってしまっている!!俺はクリス様の炎のドラゴンを制止することで精一杯だ!!誰か水魔法使いは急いで観覧車を消火しろ!!」

「えっ…は、はい!!」

俺は急いで水魔法で観覧車の消火をする

特進クラスに入れるぐらいの実力があるとはいえ

燃え盛る観覧車を一人で消火することは無茶だった

このままでは観覧車の中の人達が死んでしまう

ぼ…僕が弱いせいで…??

必死に俺は水魔法の力を上げようと努力するが

一長一短ではどうすることも出来ず

観覧車は燃えていく

絶望感

無力感

僕はだから何もできない

才能もなければ

努力だってそんなに出来ない

そんなただの…モブ人間なのだ

泣きながら

手が震えて

僕はついにその場に崩れ落ちた

「だ…大丈夫!?アレクサンダー!?」

そう言ってローズ様が駆け寄ってきた

「ハハハッ…僕なんかが特別な何かになれるわけないのに。自分をよく見せようなんてするから罰が下ったんですよ。ローズ様の言うとおりに身の丈にあった生活をしなければいけなかったんですね。」

「バカ!!そんなの関係ない!!アレクサンダーはよく頑張ってくれたじゃん!!」

「でも…観覧車はもう…」

「きっと大丈夫!!アレクサンダーが頑張ってくれたから救助が間に合うかもしれない!全部無駄なんかじゃないよ!!絶対!!」

気休めの言葉かも知らないけれど

俺を労わる言葉に思わず大粒の涙が流れる

「ありがとうございます…ローズ様…先程は失礼なことを聞いてすみませんでした…。」

「そんなこといまどうでもいいから!ほら!諦めないで!!観覧車消火しよう!!」


「お前のことも知っている。アレクサンダー。いつもマナを追いかけ回しているストーカー。マナのことを狙う邪魔な者は全員死ね!!!」

クリス様が急にこちらに向かって炎のドラゴンを攻撃してきた

このままでは俺もローズ様も燃えて死んでしまう

俺は必死に水魔法で抵抗する

「う、うぐぐっ…」

「アレクサンダー!!」

俺は肩を火傷したがなんとかローズ様を守ることが出来た

「クリス様!!落ち着いてください!!すみません俺がいるのに…」

スザク様が俺達に謝罪をする

「いえ…少し火傷しただけなので大丈夫です…。」

ストーカーしていたこと

クリス様にバレていたんだ

どうしよう

マナ様のストーカーをしていたなんてバレたら

俺はもう特進クラスに居場所なんてないだろう

何故そんなことも気づかずそんなことをしていたんだろう

自分の罪の重さを今更ながらに痛感する

僕はなんて愚かな人間なんだ


観覧車は火に気づいたレックス様があっさり水魔法で消火した

ほとぼりが冷めてミメット様とニック様が帰ってきてミメット様がマナ様とレックス様を風魔法で救助した

「怪我人はいませんかー?」

マナ様が言う

「マナ!!アレクサンダーが私を庇って肩を火傷したの!!」

ローズ様がマナ様に伝える

マナ様がこちらを向いて近づいてくる

ずっとストーカーをしていたが

目があったのは初めてだ

この世界の人ではないような黒の瞳に吸い込まれそうだった

正面から見るマナ様は

それはそれは美して可愛くて妖艶だった


「そいつはマナのストーカーだ!!治療する必要などない!!」

クリス様が叫ぶ

あぁ終わったなと思った

マナ様に知られては僕の人生は終わりだ

「え?そうなの?私のファンかな?サインいる?それともツーショット写真にする?」

僕の肩を治療しながらマナ様は僕に優しく微笑んでくれた

その姿はまさしく聖女そのもの

天使のようだった

「お前は何故そんな危機感がないんだ!!お前をストーカーするやつなんてろくなやつなわけないだろう!!」

「アレクサンダー様はローズ様を守って怪我したのでしょう?じゃあいい人だよ。私は人を見る目は自信あるんだ。」

「そんなことだけで判断するな!お前はすぐに騙される…」

「どう考えても極悪人はクリス様ですけどね。なんでこんなことしたんですか?」

「マナとレックスが恋人になるかもしれないなんてニックが言うから…!!」

「…はぁ。呆れた。」

「俺のマナを取ろうとするから…!!」

「だーかーらー私は貴方のものじゃないから。いちいちそんなことで暴走してたらスカーレット学園も燃えちゃうよ。」

「マナが浮気せずに俺と付き合えばいいだろう!!」

「めちゃくちゃな主張してるってわかってる?今回のことはさすがに停学ものだからね。普通は退学だろうけど。私と離れてちゃんと頭冷やして考えて。」

「なっ…」

「当たり前でしょう?何も罰則ないと思ってたの?」

「…。」

「まぁ…私もジャンケンに勝ったとはいえ除け者みたいにしちゃったのは悪かったからさ。」

「…。」

「ちゃんと考えて。納得出来る答えを出せたらデートしてあげる。」

「え?」

「今までの態度改めないと私を堕とすなんて無理だからね。じゃあね。」

「え…。え!?本当に!?デートしてくれるのか!?」

「女に二言はないわよー。」

そう言ってマナ様とマナ様のチームの班の人達は去って行った


俺達はその後、警察から事情を聞かれたりして大変だった

「本当に死ぬかと思った…。」

「だから関わるなって言ってるのよ。これに懲りたらもうマナのストーカーなんてやめることね。」

「関わるなって言ったのは佐々木華だろう?」

「マナが佐々木華。」

「え?」

「異世界から来た最強のヒロイン佐々木華。この世界のエラート・マナよ。」

「どうしてそんなこと…」

「私も異世界から来たから。」


僕は死にかけて

本当に痛い目をみて

最悪な思い出だったんだけれど

でもたしかに普通ではない

この非日常感に

わくわくしてしまっていて

高揚感を感じてしまっていた

帰ったらエド部長に褒美を貰おう

死にかけたんだ

とびきりいいものをねだってやろう







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