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第7話 ここにいたかった

立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花

まだ六歳の幼女とは思えない

誰もが目を引くその姿

アーネルド・マリア

 

 

 

 

一ヶ月努力したけど精霊達はアーネルド・マリアを覚醒させようとまだしているのだろうか

 聖杯を通してアルテミスに聞くことは出来るけど、怖くて聞けない

 できるだけアーネルド家らしくすることで精一杯だ。誰よりも知的で貴族らしく高貴に見えるように落ち着きのあるように。もっともっともっともっともっともっともっと…………葉月ちゃんのような人間に………


 

「マリア」

 中庭近くの廊下で声を掛けてきたのはマリオお兄様だった

 「マリオお兄様。ご機嫌よう。今日は何の授業をされるのかしら。」

 「久しぶりにマリアと遊びたくなったんだ。庭でサッカーでもしないか?」

 「お兄様ご冗談が上手くなりましたね。サッカーなんて今来てるドレスでは出来ませんよ。お時間があるのでしたらよろしければ一緒に経営学を学びませんか?企業する事に私興味がありまして、お兄様の意見も伺いたいですわ。」

 「お勉強はいつもしてるからね。今は遊びたい気分なんだ。ダメかな?それにマリアは庭でサッカーをして遊ぶことが好きだったじゃないか。久しぶりにやらないか?」

 「お気持ちはとても嬉しいのですが…今は遊ぶことより学ぶことが楽しんですの。遊ぶことはまたの機会にさせて頂きます。」

 「そう言わずにさ。じゃあ気分転換に町へ遊びに行かないか?美味しい物を食べたり買い物をしよう。それなら良いだろう?」

 「………」

 「少しだけ気分転換しよう。ね?マリア」

 甘えるな。甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな甘えるな

 

 ここで折れたら今までの努力が無駄になる。

 わかってる。お兄様は私を心配して遊びに誘ってくれてる。サッカーなんてお兄様は苦手で一回遊んだ時に転びまくってたのに。やりたいわけないじゃない。お買い物楽しそうだな…美味しい物食べながらお兄様と一緒に町に行きたいな。でもダメ。はしゃいではいけない。笑ってはいけない。凛とした態度で高貴な令嬢としてお断りしよう

 「お兄様…ごめんなさい。今はお勉強がしたいの。」

 

 目を逸らし失礼致しますと声を掛けて足早に逃げるように自室へ帰る。

 「マリアお嬢様!本当は買い物行きたんでしょ?少しの気分転換ぐらいいいじゃないですか!マリオお坊ちゃまがせっかく誘ってくれたんだから行きましょうよ!」

 レイがずっと私を説得しようとしてくる。毎日毎日毎日レイはお勉強は大人になってからでいいから遊びましょうと言ってくる。

 「いいの。今は行きたい気分じゃないの」

 「嘘だってそんなのわかりますよ!顔に残念だなって本当は行きたいのになって書いてありますよ!なんで行かないんですか?前のように毎日笑ってるマリアお嬢様が一番いいですよ!アーネルド家らしくってみんな言いますけど本当はみんな前の天真爛漫でいつも周りを明るくしてくれるマリアお嬢様のこと大好きだったんだから!だから行きましょう!」

 泣きそうになる。堪えろ。ここで折れるな。負けるもんか。負けるもんか。負けるもんか。負けるもんか。負けるもんか。負けるよんか!!

 場違いなんかじゃない。私はアーネルド・マリアになるんだ。ここから絶対離れたくない。

 「行かない。今日は疲れたから仮眠するわ。下がっていいわよ。」

 「なんでですか!?お嬢様!!行きたいって言って下さいよ!!」

 「行かない。」

 「………」

 レイとアリサが部屋から出る音がする。これでよかったんだ。お願いだからアーネルド家に居させて、入れ替わるのは怖い。みんなと一緒にいたい……

 

 ガチャ

 誰かが入ってきた音がした。アリサかレイだろうか。扉の前に居たのは…

 「お母様…」

 「少し話をしましょう。アリサお茶を用意してくれるかしら?」

 テーブルに座るとアリサがお茶とお茶菓子を用意してくれた。私が一番好きなはちみつ紅茶とチョコチップクッキーだ。アリサが私元気づけようと気遣ってくれているのがわかる。

 「最近勉学を頑張っているようね?」

 「はい。学ぶことはとても楽しいです。」

 「そう…」

 しばらく沈黙が続く。お母様は私がアーネルド家らしくなって喜んでくれているのだろうか。いつも頭を悩ませていたからな。

 お母様が大きく深呼吸して言う

 「マリアが勉強が好きではないことを知っています」

 「マリアが外で遊ぶことが好きなことを知っています」

 「マリアが今…無理をしてアーネルド家らしく振る舞いをしていることはこの屋敷のみんなが知っています」

 「私が間違っていたわ。こんなにマリアを追い詰めると思わなかったの。初めは嬉しかった。貴方か落ち着いて勉強をしてる姿をみてやっとアーネルド家としての自覚をわかってくれたんだって」

 「でも時が経つにつれて全く笑わなくなったマリアをみて後悔したわ」

 「まだ六歳の子供なのに酷く追い詰めてしまった。たくさん遊んでよく笑うマリアがこの屋敷のみんな大好きだったのに。マリアの明るさがあるからこの屋敷は明るかったのに」

 「今のこのアーネルド家は悲しみに溢れているわ」

 「全て私の責任よ。もう無理をしなくてもいいの。マリアらしく生きなさい。それがこの屋敷のみんなの願いだから」

 涙が止まらなかった。違うの。私もみんなが大好き。大好きだから一緒にいたかったから頑張ったの。謝らないで。傷つかないで。

 「忘れないで。アーネルド家らしくなくてもマリアは大事なこの家の一員だと言うこと。愛してるわ」

 嗚咽と涙が止まらない。愛してくれてありがとう。そしてごめんなさい。私はアーネルド・マリアになれなかった………

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃだけどお母様に抱きつく。お母様が抱きしめてくれる。

 「お母様。私も愛しています。」

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