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第58話 オーケストラ部

葉月ちゃんとレックス様は幼馴染だったんだもんね

すぐに入れ替わりがバレて少し嬉しい

葉月ちゃんとレックス様仲良さそうだったな

幼馴染っていいなぁ

しかし、私何も考えずに久しぶりに学園に来ちゃったけれど

葉月ちゃんとは情報を共有しないと話の辻褄が合わないとかあるだろうな

レストランのお気に入りメニューとかわかんなかったし

部活が終わったら一度女子寮に行って葉月ちゃんに会いに行こう

マナはどうやらオーケストラ部らしい

レックス様に教えて貰った

学級委員の仕事を終えて

私はオーケストラ部の練習場所である音楽室へと向かう

「久しぶり。死にかけたって聞いてたけれど大丈夫だった?マナ。」

私に気さくに話しかけてくれたのはポーランド・ニック。芸術タイプの攻略対象者であり、私のピアノを何故か褒めてくれた人だ

「両腕が焼き落ちそうな程火傷をしたので…以前のようには弾けないです。」

「そんな…君のピアノはとても素晴らしいのに…。」

「申し訳ございません。」

前のマナ、葉月ちゃんのピアノのレベルは芸術大学に合格出来るレベルでとても上手い

私のピアノは趣味で弾く程度のお遊戯会レベルだ

同じようなレベルでは絶対に弾けない

「今はこの曲を練習してるんだけれど…。一度弾いてみてくれるかな。」

私は楽譜をみる

これぐらいの曲なら練習をすれば弾けなくはない…

でも初見でスラスラと弾くことは絶対に出来ない

葉月ちゃんは出来るだろうけど

それに私は楽譜を読むのが得意じゃない…

一度楽曲を聴いて耳で覚える方が得意だ

だから楽譜だけ渡されてすぐには弾けないんだけど…

とにかくやるしかないので私は一生懸命楽譜を読み込む

「弾ける?」

「ちょっと待って…あと10分は欲しい…。」

私は10分間楽譜を読み込む

この時点で前のマナとは全く違うから

オーケストラ部の部員達は不思議がっていた

楽譜を読むことは火傷とは関係なく以前から出来ていたことなのにこんなに時間がかかるのはおかしい

なんで楽譜も読めなくなってるんだ?と全員思っているだろう

私は10分楽譜を読み込んで

渡された楽曲を弾く

はっきり言ってど下手くそだった

演奏が終わった後、地獄のような空気になる

私なりに一生懸命したけれど、まぁ葉月ちゃんのようには弾けないし仕方ない

退部した方が良さそう

「アーネルド・マリア?」

ニック様にそう言われた

私は驚いて顔をあげる

「…なんで?」

「やっぱりそうなの?」

「そうだけど…そうじゃないというか…。」

「クリスと一緒にピアノを弾いていたのは君だろう?」

「そう…です…。」

「俺は耳がいいからね。弾き方の特徴でわかるよ。」

「…。」

そんなのわかるのこの世でニック様だけじゃないのかな

「そうだけど、そうじゃないか。魔王を倒したのは今の君であることから君の本来の姿がこっちなのかな。」

「…。」

凄い理解力だなこの人。物事の先が見えるタイプなのかな。

天才って感じする。

「ピアノの腕は前のマナの方が上手かったけれど、今のマナも僕は評価してるんだ。」

「え…めちゃくちゃ下手でしたけど…。」

「前のマナが上手すぎただけだよ。初見でそれだけ弾けるなら練習すれば本番にはなんとかなるよ。」

「でも…前のマナのようには弾けないです。オーケストラ部は一人でやるんじゃない。みんなの足を引っ張ってしまいます。」

「今のマナはが技術はなくても人を惹きつける魅力のある演奏をする。それは舞台に立つものには誰もが欲しい才能だよ。どれだけ上手くても面白くない演奏では人は集まらない。君の演奏は人の足を止めて聴きたいと思わせる魅力がある。」

「買い被りすぎでは…?」

「君は自分に自信がないだけだよ。どうしてそんなに自信

がないの?あんなに楽しそうにクリス様の時は弾いていたじゃないか。音楽を愛しているのだろう?曲を愛してたくさん練習したのだろう?君のピアノには愛があるよ。俺にはわかる。」

「好きな曲を好きなように弾いていただけです。それに…私下手くそだったでしょう?」

「下手なんかじゃないよ。練習すれば弾ける。」

「楽譜を読むことは苦手だし、やっぱり皆さんの足手纏いになるかと…。」

「耳で覚える方が得意なの?」

「え。はい…。」

「じゃあ俺がこの曲弾いてあげるよ。一回聴いてからもう一回弾いてみなよ。」

「ピアノも出来るんですか?」

「前のマナ程上手くはないけれど、ある程度は弾けるよ。」

そう言って演奏を始める

すごい…めちゃくちゃ上手だ…

落ち着いたメロディラインが素敵ないい曲だな

楽譜じゃわかんなかったけれど

葉月ちゃんが好きそうな曲だ

きっとニック様もそれをわかっていてこの曲を選んだんだろうな

ニック様が演奏を終えて私は拍手をする

「凄いお上手ですね。」

「ありがとう。」

「ニック様のように美しくは無理ですけれど…。弾いてみます。」

私は大きく深呼吸をして心を落ち着かせる

さっきのニック様の演奏の余韻に浸り

この曲に思いを寄せて

私は演奏をした

指が回らなくて失敗することもあったけれど

一度目の演奏よりは上手く弾くことが出来た

私が演奏を終える

「ブラボー。素晴らしい演奏だったよ。マナ。」

そう言ってニック様が拍手をする

他の部員達も拍手してくれた

こんな風に自分のことを認めてくれたことはいつぶりだろうか

もしかしたら初めてかもしれない

私のピアノはたくさん練習をしても中途半端で

上手くもなく

下手でもなく

まるで自分の存在を表現したような

中途半端な演奏しか出来ない

だから好きな曲を好きなようにしか弾かなくなった

それで満足してた

私を可愛さでもなく

魔王を退治した聖女でもなく

私のピアノを評価してくれたことが

とても嬉しかった

絶対に上手くはない演奏だったのに

優しい拍手に泣きそうになる

「ありがとうございます。前のマナよりは役立たずですが、皆さんと一緒に頑張りたいです。生まれ変わったエラート・マナもよろしくお願い致します。」

私はここで頑張ってみたい

見た目も

白魔法も関係ない

実力主義のこの世界で

下手くそを許してくれない厳しい世界に

私を罰して欲しいから




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