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第57話 幼馴染との思い出話

これはスカーレット学園に入学する前のお話

マグタリア・レックスとエラート・マナの幼馴染のお話

俺とマナの家が近かった

俺は子供の頃、近くの湖でよく遊んでいた

そこでよく会う女の子がマナだった

俺は湖で舟遊びをよくしていたが、マナは湖を眺めて絵を描いていた

マナ絵は五歳の子供が描いたとは思えないほど、完成度が高く買ってくれる人達がいるらしい

こんな子供でもお金を稼ぐ為に絵を描くなんて庶民は大変そうだなという印象だった

俺達はお互いの存在を知っていたが、話しかけることはなかった

身分が違ったし、よく会うだけの顔見知りだった

あまりにも何回も会うので、どんな絵を描いているのか気になったのである日気まぐれに覗いて見てみた

「すげぇ…。」

予想の十倍上手かった

「買ってくれます?」

「え。」

「この絵買ってくれますか?」

「えっと…いくらなんですか?」

「値段は君が決めていいよ。」

「えっと…じゃあ十万円で…。」

「額が大きすぎるよ。子供騙してお金巻き上げてるみたいじゃん。」

「君も子供じゃないか。」

「一万円で買ってくれる?」

「うん。いいよ。」

「お買い上げありがとうございます。」

「絵を描くのが好きなの?」

「いや。別に。好きじゃない。」

「ほぼ毎日描いてるのに?」

「少しでも多く稼がないと明日のご飯も食べれないかもしれないからね。」

「そんなに生活が苦しいのか?」

「父親が出て行ってね。レストランを経営してこれから稼ぐってお母さんが言い出して、レストラン開業資金がもうきつくてきつくて。食費なんて一番に節約できるものだからもう最近ろくなもの食べれてないよ。だからこうやって少しでも稼ぐの。」

「じゃあ十万貰えばよかったのに…。」

「ちょっとぼったくろうと思ったけど思ったより額が多くて怖くなってしまった。騙してお金稼いだら、君の親の貴族に目をつけられてレストラン開業なんて出来なくなるかもしれないし。」

「…?なんか難しいからよくわからない…。」

「あぁ五歳児には難しいか。」

「君も五歳なんだろ?」

「一応。」

この子はマナという名前らしい。五歳の時からどこか達観していて、子供らしくなかった

子供ながらにお金をたくさん稼ぐ為に働いていたからかもしれない

その後、マナが六歳の歳になるとレストランは無事に開業することが出来て、マナもレストランで働いていた

俺はマナに会いによくレストランに通っていた

家では、勉学、魔法、剣術等教育カリキュラムが詰め込まれておりこのレストランで食事をすることが癒しの時間になっていた

マナとたわいもない雑談をするのは楽しかった

家の愚痴を話せることも

マナの神様への怒りを聞くことも

楽しかった

何年もレストランなら通い詰めて俺達は十四歳になった

そして俺達は十四の歳で初めて恋バナをする

「レックスには婚約者はいないの?」

「いないね。俺が望めば婚約者を探してくれるだろうけど。学園で恋愛して青春してみたいな。」

「貴族なのに自由恋愛ができるんだね。」

「あまりにも身分の差があると反対されることはあるけれど…学園に通うのはほとんど上級貴族だし、最近は学園で恋愛してそのまま結婚する貴族は多いんだ。」

「へぇ…。」

「マナは平民だから貴族と恋愛なんかしたら身分違いの恋で燃えるような恋愛ができるんじゃないのか?」

「私好きな人いるよ。」

「え!?誰!?俺も知ってる人!?」

「知らない人。」

「ふーん。じゃあ平民仲間か。」

「違うよ。特定はして欲しくないからこれ以上は内緒。」

「ちぇ。つまんねぇの。なんで好きになったんだ?」

「私、レズビアンなんだ。」

「え…。」

「そのことに負い目を感じて生きていた。普通に男の人じゃなくてどうしても女の人に劣情を抱えてしまう自分がひどく醜い存在のように思って。気持ち悪いって思ってた。この気持ちが人にバレたらと恐ろしかった。」

「…。」

「私の好きな人はね。それはもう誰が見ても可愛くて美人でさ、誰にでも優しくて雲の上のような存在だったんだ。でも凄く好きで盗撮した写真持っててさ。」

「え…盗撮してたの…?」

「うん。」

「ドン引きなんだけど…。」

「そうだよね。私も自分でやばいことしてるって思ってたけど好きで好きでやめられなくて。」

「…。」

「ついにバレちゃったんだ。本人に。」

「うわ…。」

「もうね。この世の終わりだと思ったよ。こんな醜い自分を好きな人に見られてさ。一番好きな人に軽蔑されるって。それでなんて言われたと思う?」

「気持ち悪いとか?」

「“隠し撮りなんかしなくても頼んでくれたらポーズして撮ってあげるのに”って言われてさ。」

「マジかよ…大丈夫か?そいつ…。」

「“ツーショット撮る?”って笑顔で言われたよ。」

「危機感なさすぎだろ…。」

「ほんとにね。こんなに醜い私でも彼女は優しく笑いかけてくれた。ますます大好きになっちゃうよね。そんなことされてさ。ツーショット撮って貰えてさ。醜い私も助けてくれちゃう神様みたいな人だよ。」

「いや…ちゃんと罪を償わないとダメだろ…。」

「彼女はね。善人でも悪人でも関係なく、全ての人間を救ってくれるの。彼女の中には正義も悪もなくて、彼女はなんとなく悲しませたくないからという理由だけで全てを救う。」

「偽善じゃん。」

「そうかもしれない。でも彼女の偽善に私は救われた。彼女に恋をしてよかったと。私は彼女の為ならなんでもしようとそう思えるほどね。」

「告白するのか?」

「しないよ。彼女はノーマルだろうし。」

「恋人になれないやつを思い続けるなんて時間の無駄じゃないのか?」

「もう既にこの命も人生も彼女に捧げちゃったから。恋人にはなれないけれど、愛情は貰う。誰よりも愛して貰う。恋人なんかよりも深く。」

「歪んでるなぁ…。」

「私の愛は醜いけれど、それでも彼女は許してくれる。だから愛が止まらない。貴方も堕ちたらわかるわよ。」








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