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第50話 魔塔

私の治療が終わり、健康体になったので王城から去ることにした

王様に私とマオが王城から出ていくことを報告するとめちゃくちゃ喜んでいた

厳格で風格があり、国の為なら冷徹な判断をすると噂の王様だけれど、私の前では厄介者がいなくなって喜ぶおじさんにしか見えなかった

むかつくからこのまま居座ってやろうかと一瞬思った程だ

王様に特に名残惜しくもなく、喜んで見送られて私達は王城を去った

私達が向かった先は魔塔

スカーレット学園の敷地内にあり、この国で一番の魔法使いミケが魔法の研究の為に一人で住んでいる塔だ

ミケは人嫌いの偏屈で魔法の研究しか興味がない60代のお爺さんらしい

私は医者のスノーに紹介されて魔塔に向かっている

“君達なら喜んで歓迎してくれるはずだよ”

と言っていたけれど…人嫌いらしいし、不安だ


「マナには魔王から人間にして貰った恩義があるとはいえ、信じてついていくような人間ではないとこの二週間で痛いほどわかったよ。」

私の信頼はいつのまにか地に落ちている

「スノーと仲良くなってから私に対する当たりが強くなってる気がするんだけど!」

「運命共同体とは言ったけれど依存状態ってよくないと思うんだよね。やはり相談できる信頼できる大人は必要だよ。」

「相談じゃなくて私の愚痴大会してただけのくせに。」

「裏切られた仲間だからね。僕とスノーは。マナの幸せと健康を誰よりも願っていたのに。考えもなしで白魔法を使って死にかけるんだから。僕と一緒に生きるって言ったくせに。この世界でマナがいなくなって僕はどうやって生きていけばいいんだよ。一人にしないでよ。バカ。」

「これからは白魔法の安売りはしません!約束します!!マオと一緒に生きていく!!」

「また裏切ったら世界崩壊させるからね。」

「わぁお!魔王ジョーク!」

「冗談で済ませたらよかったんだけどね。」

「この世界は美しいから崩壊させたくないんじゃないの!?」

「マナがいない世界なんて美しくないから。マナが死んだらいつでも世界崩壊させてあげるよ。」

「いつからそんな過激派になっちゃったの!?私はそんなヤンデレに育てた覚えはありません!」

「マナが何度も死にかけるからだろう!?こっちは毎回気が狂ってしまってまともな精神ではいられなかったよ!!」

「弟育てんの難しいなぁ。」

「マナが無茶苦茶してるからだよ。“普通”とは程遠いよね。本当。」

「その煽りは効くからやめて…。」

「心底反省しろ!バカ!!」

「すみませんでした…。」


たわいもない雑談をしながら魔塔へと向かい、到着した

玄関に呼び鈴があったのでチリンチリンと鐘を鳴らした

「誰じゃ?こんなとこに何の用が?」

出迎えてくれたのはこの魔塔に住んでいる魔法使いミケだ

「えーっと…貴方の孫になりにきました。」

「帰れ。」

ギイッとすぐに扉を締めようとされたので無理矢理手をねじ込む

「ちょっと!待ってください!よく顔を見てください!こんな可愛い二人組が孫になるんですよ!?自分で言うのも何ですが顔面の美しさは自負しております!」

「いかにも教養のなさそうなアホ面だ。おかえりください。」

「待って待って待って!!なんと!私!!今話題の聖女エラート・マナでございます!!」

「ああ。白魔法で大人数を健康体にして死にかけて倒れた頭のネジが外れてると噂の聖女様ですか。」

「大人数を救った英雄という噂であって欲しかった…!!」

「…そいつは何者だ?」

「あ!お目が高い!こちらのとても可愛らしい男の子!なんと元魔王のマオくんでーーす!!」

「…!?」

ミケは少し考え込み

「…入れ。」

そう言って私達を招いてくれた

「何故ここに?」

「スノーという医者がここなら私達を歓迎してくれると言ってたので…。」

「あいつは医者じゃなくてペテン師だな。」

「あはは。私達やっぱりダメですかね…?」

「何処にも住める場所がないからここで住もうと?」

「そうです…。」

「条件がある。」

「何なりと!お金ならありますよ!!」

「お前達の白魔法と黒魔法の研究をさせろ。」

「実験体ですか!どうぞ!どうぞ!喜んで!!」

「うるさくしたら出て行って貰う。」

「あ…はい。すみません。」

「…一番上の八階は物置小屋になっていて今は使用していない。片付ければ二人寝るには十分なスペースがある。好きにしろ。」

「えぇーーー!!十分すぎますよ!!ありがとうございます!!」

「うるさくするな!!」

「いやはや。人嫌いのお爺さんなんて聞いていたものだから不安でいっぱいでしたけれど…めちゃくちゃいい人じゃないですか!よかったーー!!」

「お前はワシのどこを見てそう言ってるんだ?俺は珍しい研究材料だから招き入れただけだ!それ以上もそれ以下もない!!」

「ミケお爺ちゃん。私は人より自信があることがあることがあるんですよ。」

「なんだ?顔か?」

「ミケお爺ちゃーん。そんなものミジンコみたいな価値しかないですよ!不正解です!私はね。人を見る目だけは自信あるんです。」

「気持ち悪い呼び方をするな!!」

「私にはわかります。ミケお爺ちゃんは本当は優しくて思いやりに溢れた人間だって。」

「聖女の戯言に付き合う気はないね。」

「えへへー。貴方の孫になれて光栄です。ミケお爺ちゃん!」

「住まわせるだけで家族面するな!!こんな頭の悪そうな孫なんか願い下げだ!!」

「マオも本当のお爺さんだと思って暮らしていいからね!」

「お前は噂以上に頭のネジが外れてる!!」

「マオです…。住まわせて頂けるだけで感謝しかありません。マナはなるべく大人しくさせますので、どうかよろしくお願い致します。」

「お前も元魔王を見習ったらどうなんだ?礼儀正しくて愛らしい。」

「ふん。まだまだ修行が足りないわね。ミケお爺ちゃんのような壁がある人間にはもっと困らせるぐらいぐいぐい攻めないと!!」

「普通に!!接してくれ!!頼むから!!」




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