第5話 知的なおバカ
「ハァ…テストは満点を取れるのに…どうしてこの子は落ち着きがないんでしょう…誰に似たのやら…」
お母様は頭を抱えている。落ち着きないお転婆娘ですみません。
「お母様。大丈夫ですよ。勉強は僕よりも出来るし立派なアーネルド家のレディじゃないですか。少し元気なところもこの家を明るくしてくれるしマリアは凄いよ。」
お母様に話しかけているのは私のお兄様。アーネルド・マリオ。私より一歳上のお兄様で、今は七歳だ。まだまだ子供なのに大人びた落ち着きのある雰囲気、溢れ出る気品まさにアーネルド家の人間であり後継者だ。
「お兄様!!私またテスト満点取れたよ!」
「マリアは凄いなぁ将来が楽しみだ。」
お兄様はずっと優しくてカッコよくて大好き。前世は一人っ子だったから優しくてかっこいいお兄様が出来てめちゃくちゃ嬉しい。
「ハァ…私はマリアの将来が不安で仕方がないわ…木に蔦を吊るしてぶら下がって遊んでいたのよ!?
そんな令嬢だと知られたら社交界でなんて言われるか…」
「そんなことしてたの笑マリアは勇気あるね」
「えへへ!そうかなぁ!」
「マリオ!!マリアを甘やかさないでちょうだい!
こんなことが知られたら他の令嬢からイジメをうけるし、殿方は誰にも相手にしてくれないわ!」
「子供だからまだまだやんちゃな年頃なだけだよ。六歳の子供らしくていいじゃないか。」
「マリオは昔から落ち着いてたわよ…」
「普通の子供はこんな感じだよ。それに勉強に関しては僕より優秀なんだ!凄いことだよ!マリアは立派なアーネルド家のレディになれるよ」
「…本当に大丈夫かしら…」
十二歳のお兄様がお母様を慰めている…恐るべき包容力のマリオお兄様。流石だ。素敵すぎる。
「でも大怪我をすると危ないからもうやめようねマリア。」
「はい!お兄様!」
「ハァ…マリオの言うことはすぐに聞くのに…」
お母様が頭を抱えている。私の将来が不安で仕方ないのだろう。
じゃあ僕は部屋に戻るねとお兄様が部屋に戻ったので私もお母様に挨拶をして自分の部屋に戻った。
「マリアお嬢様〜テスト満点って聞きましたよ〜流石ですね!」
レイが話す。十六歳の頭脳があるのでテストは出来る。でも歴史書の暗記一冊は普通にきつい。覚えられるけれど大変だ。この世界のことを知ることができるからそこまで苦ではないけど。
「マリオ様のように落ち着く日が来るのでしょうか…」
アリサが不安そうに呟く。私はそんなに問題児なのだろうか。私は小声で
「だって本当は私がマリアじゃないからね」
え…とアリアが言う。聞こえちゃったか。楽しく遊んでいるといつも怒られる。落ち着きがなくアーネルド家らしくないと。そしていつも思う。ここは葉月ちゃんの居場所なのだと。お母様もお兄様も…お父様も…凄く葉月ちゃんの家族だなって思う。場違いで問題児のアーネルドらしくないマリア。
怒られる度に思い出す。葉月ちゃんのこと。ここはまさに葉月ちゃんの居場所であると感じる。葉月ちゃんはどうなのだろうか。葉月ちゃんの新しい家族と上手くやっていけて元気にしてるかな。高校でゲームがスタートするからまだまだ会えない。早く会いたいな。
「マリアお嬢様は立派なアーネルド家の一員ですよ。」
アリサが言う。
「すみません。私が言い過ぎましたかね。」
「アリサは悪くないよ。ごめんね。変なこと言っちゃった。」
「そうですよ!マリアお嬢様はアーネルド家の中でも文武両道!頭もよくて身体能力も高いのは素晴らしいことです!子供だから元気が有り余ってて当たり前ですよ!立派なアーネルド家のレディになれますよ!!」
レイが言う。アリサとレイの優しさにいつも救われる。毎日楽しく過ごせるのは二人のお陰だ
「もう。またマリアお嬢様を甘やかすんだから。たしかに身体能力が高いアーネルドは珍しいですからね。苦手なものが少ないのは将来の夢の幅が広がるのでいいことですよ。楽しみですね。」
「二人ともありがとう。いつも心労かけてごめんね!今日は一日中勉強したから流石に疲れちゃった。もう寝るね。」
そう言って二人を部屋から退出させる。疲れていたのかすぐに眠りについた。
やぁ
白い空間。忘れもしない。銀髪のイケメン自称神。この世界に転生させた張本人。
「きゃーーーーーーーーーー」
「ひどいじゃないか。人を化け物みたいに!」
化け物みたいなもんじゃないかと思った。
「なんですか!?急に現れて!!」
「うーーん。ちょっと忠告しにね」
「?」
「君が最もあの世界で精霊に愛されてる。圧倒的にね。このままでは魂を元に戻すことになるからね。」
「!?」
嘘でしょ!?そんな…お母様もお兄様もアリサもレイもずっと一緒にいてくれた家族なのにお別れするなんて絶対に嫌!それに葉月ちゃんだって今の家族と離れたくないはず。迷惑掛けるわけにはいかない!
「どうしたらいいの!?」
「だから可愛くて純粋でバカで単純だからダメなんだよ〜。初めに説明してあげたのに〜。」
「勉強は出来る知的キャラだよ!?」
「勉強が出来るバカで単純な魂だよね?」
「バ…バカじゃないもん…」
「ごめんごめん!本当に可愛いなぁ♡とにかく大人しくアーネルド家のようにしてみたら?じゃあね!」
「えっ!?待って!!」
目が覚めて元の世界に戻ってきた。
手には聖杯のような物があった。
「その聖杯でいつでもお話しできるようにしたからわからないことがあったら話しかけてね!」