第45話 世界平和の報酬
部屋に使用人のメイドさんが入ってきた
私は世話をしてくれていたメイドさんにお礼と王様の謁見をお願いした
メイドさんは話を通してくれてすぐに謁見の許可が降りた
私はマオの手を引き、一緒に王様へ会いに行く
「いい?基本的には喋らなくていいから。王様はマオのこと悪くいうかもしれないけれど、気にしなくていいからね。私が絶対守ってあげる。」
「僕は罪を償った方がいいんじゃないのかな…。」
「マオの力が暴走しただけ。罪になんかにさせない。大丈夫。話せばわかってくれる…もしも万が一でも有罪なら一緒に死んであげる。」
「どうして会ったばかりの僕にそんなに命をかけれるの?」
「マナとして生きていく覚悟をさせてくれたから。私はマリアじゃなくてマナだって胸張って言えるようにしてくれたから。それは私にとってとても大事なことなの。前の人生がよかったって一生思いながら生きていくんじゃないかって思ってた。でも今は違う。マオに出会えてよかった。マオのいない人生は考えられない。私はマナになって良かったって。自信持って言えるよ。だから…頑張るね。私。」
「…僕達は運命共同体だから。泥舟でもついていくよ。」
「信じてないじゃん!」
「いいんだ。僕の為にマナが王様と戦ってくれる。その姿だけで僕は人間になれてよかったって思えるよ。」
「こんなとこで私達の人生終わらせないから!信じてついてこい!」
「信じてないけどついていくよ。」
私達は王様の待つ部屋の前に到着する
大きく深呼吸をして入る
目の前には王座に座る王様の姿
周りに護衛騎士が十人程従えている
「お忙しい中お時間頂き感謝致します。王様。」
私は丁寧にお辞儀をして挨拶をする
「本当に一人で魔王を倒すとはな…。君のお陰で世界は平和になった、感謝してもしきれない。壮絶な戦いだっただろう。両腕は酷い火傷状態で、魔力枯渇をおこしていて死にかけた状態で帰ってきたと聞いていたがもう起き上がっても大丈夫なのか?」
「お陰様で。二日間も療養させて頂きましたから。治療して頂きありがとうございました。」
「この世界の英雄だ。一番腕の良い医者に治療して貰った。早く回復出来てよかったよ。」
「ありがとうございます。」
「ところで…君と一緒に帰ってきた“それ”はなんだ?」
「私の生き別れの弟です。」
「は?」
「魔王に取り憑かれていたけど、浄化して元の人間に戻しました。」
「…そいつは魔王だろう?」
「違います。」
「そいつはくしゃみをしただけで王城の扉を吹き飛ばしたぞ?そんな人間いるのか?」
なんだその情報は。初めて聞いたぞ。さっき起きたばかりだから仕方ないかもしれないけれど
人間の姿だけど、破壊する能力はまだ残ってるのか…
私はチラッとマオの方を見ると
「…くしゃみは力の制御が難しくて…。」
と小声で説明してくれた
「ちょっと…魔王の時の後遺症が残っているみたいで…。」
「後遺症とやらは治るのか?」
「魔王を浄化したことは初めてなのでわからないですけど…。私は白魔法が使えますから!魔王の時の力を抑えることは出来ます!」
「…そいつは本当に弟なのか?」
「はい。」
「魔王だろう?」
「違います。」
「何故庇う?そいつは俺の部下を何人も殺した魔王だ。処刑しなければまた力をつけてこの世界を滅ぼすかもしれないんだぞ。」
「マオには何の罪もありません。マオは殺すことなんて望んでいなかった。マオは魔王の破壊力を抑え込んでいました。だから、魔王の森で息を潜めていたんです。マオが力を抑えていなければ今頃この世界は滅んでいました。マオは感謝されるべき人間です。マオのお陰で被害者が最小限になったのですから。」
「詭弁だ。そいつが生きている限り、世界崩壊の危機があるんだ。どんな理由があってもそれは事実だろう?」
「そんなことさせないです。私と誓いました。マオは二度と人殺しをしないと。」
「くしゃみ一つで扉を破壊するやつだぞ?信用出来ないな。」
「くしゃみ一つで扉が壊れた程度で騒がないで下さいよ。目の前には一人で魔王に勝利して、世界平和にした完全無敵の聖女がいるんですよ?たいしたことないです。私と一緒なら人に害なす存在にしません。絶対に。それにマオもそんなこと望んでいません。マオが望んでいるのは平和な世界です。平和を望んでいる一般市民を処刑なんてしませんよね?」
「一般市民ならね。でもそいつは魔王だ。」
「平和を望む魔王なら問題ないでしょう?」
「…ハァ。エラート・マナにはこの世界を救った恩義がある。君が望むならそいつを見逃そう。」
「やったー!!ありがとうございます!」
「但し、監視はつける。」
「え。嫌ですけど…。」
「最低条件だ!いつまた復活するかわからないだろう!?」
「もしもまた復活しても私が元に戻すので問題ないはずです。」
「それでも…いつ暴走するかわからないやつは野放しには出来ない!」
「私がそんなことさせませんから!任せてください!私が王様に報告しますから!」
「ハァ…頭が痛い…。」
「ついでになんですけど…世界救った英雄に褒美的なものとかありますかね?」
「…なにが望みだ?」
「マオと二人で一生遊んで暮らせるお金と誰にも文句言わせない爵位が欲しいですね。」
「…聖女のくせにがめつい要求してくるな。」
「聖女差別やめてくださいね。」
「お金はともかく…お前のような人間に爵位をあげてしまうと社交界が崩壊しそうだ。」
「そんなに影響力あるよなことしませんよ。ただ庶民をバカにする貴族達を黙らせる肩書きが欲しいだけなんで。」
「不安だ…。」
「大丈夫なのに…。」
「まぁ…要望については検討しておくよ。魔王討伐したから君は英雄として褒め称えるパレードを予定している。」
「えー…やだ…。」
「こちらの要求を全部否定するな!少しは快く引き受けてくれ!!」
「だって人前で目立ちたくないし…。」
「英雄として称えられるんだ!名誉なことだろう!?」
「国中に聖女だってバレたら悪いことも出来にくくなるじゃん。」
「悪いことをしようとするな!」
「まぁ。嫌ですけど。わかりましたよ。パレードやりましょう。」
「喜んでくれると思ってたのに…。頭が痛い…。もう下がってくれ…。」
「失礼致します。」
私はお辞儀をして部屋を出る。
「この国の王様案外チョロかったね。ラッキー。」
「…そのうち不敬罪で捕まるよ。」
「なによー!ちゃんとマオのこと守ったのにー!」
「めちゃくちゃ言ってたけどね…。絶対殺されると思ってたよ。僕もマナも。」
「私もー。」
「…泥舟だ。」