第43話 ありがとう
声が聞こえる
泣いている声
死なないで!って必死に叫んでる
目を開けるとびっくりするほど可愛い男の子に抱き抱えられてた
目を見るとドラゴンの時と同じ澄んだグリーンの瞳
随分と可愛い子供の男の子になったな
両腕は焼け落ちそうな程大火傷していて
体は動かすことも出来ない程疲弊していたけど
最高に気分がよかった
「なに…泣いてんの……一緒に…笑って…生きて…いこう…って…約束……した…じゃん…。せっかく……命懸けで…人間に…してやった…のに……喜べよ……バカ…。」
呼吸をすることも苦しい
声は掠れているが、辛うじて話すことが出来た
こっちが一生懸命喋ったのに
元魔王は嗚咽混じりに大泣きしている
「泣くな…ってば…約束…通り…生きてる…でしょう?…私を…だれ…だと…思ってんだ……最強…ヒロイン様…が…こんな…とこで……死ぬわけ…ないでしょう…。」
にっこりと私は微笑む
泣いている元魔王を抱きしめてあげたいけれど腕が上がらない
元魔王は私の目を見て笑ってくれた
「ありがとう。」
そう言われた。あぁ。本当に最高に気分がいい。貴方の言うことを信じてよかった
この世界は美しい
心の底からそう思えた
「おい!!大丈夫か!?」
空から声がする。スザク様だ。
「死ぬかも……たす…けて…。」
「バカ!!喋るな!!今、回復ポーション飲ませるから!」
スザク様は回復ポーションを取り出し、私に飲ませようと私を抱き抱える
「おい!飲めるか!?」
「口…入れて…。」
スザク様が口に直接注ぐが、上手く飲むことが出来ずに口から回復ポーションがだらだらと溢れる
スザク様は自分の口に回復ポーションを入れて、私の口に口移しでポーションを飲ませた
回復ポーションを飲み込むことに成功した
「回復ポーションだけでは治療が間に合わない。すぐに王城に戻るぞ。」
「この子…」
私は元魔王の子供の男の子を指さす
「この子…も…一緒に…。」
「何故?こいつは魔王だろう?今ここで殺した方が…。」
そう言ってスザク様は元魔王に剣を向ける
「その子を…傷つけたら…殺す…。」
私はスザク様を睨みつけて威嚇する。
スザク様は驚いた表情で私を見つめる
「聞きたいことは山程あるが、今はマナ様の治療が最優先だ。マナ様の言う通りこいつは一緒に連れていくし、傷つけない。約束する。だからゆっくり休め。」
「信じ…られるか…大人は…いつも…そうやって…子供を騙ッ…。」
言い終わる前に首に手刀をされて意識が落ちる
「はぁ…本当に一人で魔王倒しちまうとはな…。いや、倒してないのか。魔王も浄化して救ったのか。魔王なんて救う価値ないのになぁ!?俺の親友を殺しておいてよ。なぁ。元魔王さん。」
「…僕は許されない罪を犯しました。でも…今ここで殺されるわけにはいかないのです。マナと約束しましたから。マナは約束を守って私を助けてくれた。だから僕が約束を破るわけにはいかないんです。…すみません。」
「ふん。ガキが生意気言ってんじゃねーよ。安心しろ。殺しなんかしねぇ。…今は。この世界を救った聖女様がお前を殺したらダメだと主張してるんだ。話を聞いてから判断しないとな。」
「ありがとうございます…。」
「早くこの世界の英雄様を治療しないとな。」
スザク様は私と元魔王を風魔法で王城へと運んでくれた。