第41話 聖女の八つ当たり
王城の門番は豆鉄砲を食らったような表情で話す。
「聖女様ですか…?」
「はい。」
「一人で魔王退治に今から行くんですか?」
「はい。伝えておいてください。あ、やべ。魔王の場所知らないや。魔王ってどこにいるんですか?」
「ちょっ…ちょっと待ってください!今すぐ上の先輩に報告しますので!」
「場所だけ教えてくれたらそれでいいのに。」
門番は走って報告しに王城へ入っていく
門番なのに持ち場を離れて大丈夫なのだろうか
上の先輩と一緒に門にすぐに帰ってきた
上の先輩は王様と会わせてくれるようだ
そんなことしなくていいのに
私は王様の謁見を許されて通してもらえた
案内された部屋へ行くと赤絨毯の上に王座があり、王座は階段を上がった上にある為、王様からこちらを見下ろすように作られた部屋だ
王座にカリスマ性のオーラを放って座っている
バーバランド・ガードン。この国の王様だ
私は丁寧にお辞儀をして王様へ挨拶をする
「お初にお目にかかります。私の名前は…」
あれ?なんだっけ?葉月ちゃんってずっと呼んでたからこの世界のヒロインの名前忘れちゃった。たしかマナ?
「…マナです。」
「魔王を倒しに行くと言う話は本当か?」
「はい。」
「この国の精鋭騎士団24人がもう既に犠牲になっていて、亡くなっている。全員手練れの精鋭だったのにも関わらず誰も魔王に近づくことさえ出来ずに殺された。」
「私は魔王の天敵です。白魔法の前では魔王は力を使えないですから。白魔法の力が覚醒した今こそ魔王を倒しに行くべきです。これ以上犠牲を出すわけにはいかないですよね。」
「これ以上被害を出すわけにはいかないのは確かだ。しかし、魔王は魔王の森に引き篭もり、特に何をする訳でもなく息を潜めている。こちらから向かわなければ誰も死なないのだ。魔王の森周辺の動物達は魔王復活の影響により化け物へと変化している。魔王が復活して二年。動物達が化け物になる範囲が増えているが、こちらから魔王の森に入らならければ被害者はいない。まだ焦るような時期ではない。」
「焦りとかではないです。魔王を退治できるから退治すると言っているんです。」
「いくら白魔法が覚醒したとはいえ、覚醒してすぐに魔王が倒せるほど、簡単に倒せる相手ではない。この学園生活三年間の間に魔王が退治できるようにしてくれればそれでいい。」
「大丈夫です。必ず勝ちますから。魔王の森はどこですか?」
「一人で行くのも無謀すぎる。普通は魔王討伐パーティを組んでいくものだ。」
「仲間はいらないです。一人がいいです。」
「せっかく白魔法が覚醒した貴重な人材をすぐに死なせるわけにはいかない。確実に魔王を倒せるようになるまで待ちなさい。」
「必ず勝てる自信があります。魔王はどこですか?」
「…。」
王様は話を聞かない私に対して呆れている様子だ
「…わかった。道案内に一人騎士団長を連れて行け。」
「ありがとうございます。」
「条件は必ず生きて帰ってくることだ。」
私は騎士団長のスザク様と一緒に魔王の森へと向かう。
スザク様は風魔法と水魔法の使い手だ
風魔法で私達を魔王の森まで運んでくれた
「私の友人はとても強かった。私よりもずっと。その友人が魔王の様子をみて帰るという任務さえ出来ずに跡形もなく殺された。魔王がどのような姿かさえ、私達は知り得ない。」
「ご冥福をお祈り致します。必ず仇を取ります。」
「ありがとう。でも…無理はしないで欲しい。君はまだ十五歳の少女だ。この国の運命を一人で背負わすにはあまりにも荷が重すぎる。私の任務は道案内でもあるけれど、君の保護も兼ねている。私が無理だと判断したら一緒に帰って貰うよ。」
「王様もスザク様も私が魔王に勝てるわけないって思ってるだもん。失礼しちゃう。負けないよ。私は白魔法に守られてるからね。スザク様も死にそうになったら必ず逃げてくださいね。」
「君が無茶をしなければ私の生存力が上がるんだけどな。難しそうだから今死を覚悟してるよ。」
「私は一人で戦いたいのに…。」
魔王の森に到着した。魔王の森の周辺野動物達は化け物変化している。
私が化け物に手を触れると神々しい光を放ち、白魔法で元の姿に変わっていく
「すごい…これが聖女の力か…」
「私もまだ実感ないや。」
「そんなんで魔王倒そうとしてるのか…?」
「今日覚醒したので慣れなくて。」
「慣れてないの何故魔王退治に…?」
「八つ当たりですね。」
「そんな志で魔王を倒せるのか!?」
「倒せますよ。だって私は最強ヒロインですから。」