第33話 作戦会議
その後、自分の部屋に帰り、荷解きをして部屋の整理をした。
食事は食堂、お風呂は各部屋に一つずつあった。
ベッドはふかふかで寝心地が最高だ。
無事に一日目を終えることが出来た安心感からすぐに眠りに着くことが出来た。
次の日。新入生は学園生活の説明がほとんどだった。
魔法を使うことは授業以外は許可されていないこと。
貴族の階級は関係なく接すること。
許可なく外出することは出来ないこと。
他にも細かいルールはあるが、これがこの学園のルールである。
魔王は二年前に既に復活しており、魔王討伐する為に私達はしっかりと学び、この国を守らなくてはいけない。
今の所は復活して間もないので、魔王城周辺しか被害がなく、近付かなければ問題がない状態だ。
しかし、三年後には私達の住む学園まで被害が拡大すると予想されている。
このゲームは卒業と一緒に魔法討伐もしなくてはクリアにならない設定だ。
ゲームでは失敗すればやり直しが出来るけれど、ここは現実世界だから失敗すれば死ぬ。
モブ令嬢の役割は何かアルテミスに聞いたらないと言われた。魔王討伐は王子とヒロインは確定パーティだが、他の三人は選べる仕様だったようだ。
その三人にモブ令嬢の枠があるわけもなく。
悪役令嬢の友達という立ち絵もない存在らしい。
葉月ちゃんは白魔法に不安を感じてたようなので、何か手伝えることがあれば協力したいな。
そんなことを思いながら私はお兄様の下校時刻まで学園で待つ。
一応アーネルドらしく図書室で待つことにした。お兄様の下駄箱に図書室で待つことをメモに残した。
スカーレット学園の図書室はこの国最大の規模であり、とにかく広く種類もたくさんある。
魔法の勉強をと思ったが、オススメの棚にあったミステリー小説が気になり手に取って読んでしまった。
めちゃくちゃ面白い。大当たりだった。
夢中になって読んでいると
「おい。帰るぞ。」
そうお兄様に声を掛けられた。
「帰るってどこに?」
「俺の部屋。」
「私は入れません。」
「学園で話し合うのは危険だ。」
「お兄様の部屋で話し合うことも危険です。」
「わかった。立ち入り禁止の屋上で話すぞ。」
「わかりました。」
私は読んでいたミステリー小説を借りて図書室を出た後、お兄様と一緒に風魔法で屋上まで飛ぶ。
屋上に誰もいないことを確認して話し合いを開始した。
「お前本当にあの後ヒロインの部屋に行ったのか?」
「うん。」
「何を話した?」
「告白されてふった。」
「おい!!急展開すぎるだろ!何故そうなった!?」
「葉月…じゃなくてマナちゃんは前世から好かれてると思ってたから急じゃないよ。そうじゃないと魂の入れ替えなんてしないよ。」
「お前の悪女ぶりは本当に恐ろしいな…。」
「前世は可愛かったから…。」
「他には?何もないのか?」
「特にないよ。」
「そうか。ヒロインとはもう接触するなよ。」
「うーん…白魔法がゲーム設定より上手く使えないことを悩んでいたから力になりたいなと思っているんだけど。」
「俺が手助けする。お前は接触するな。」
「白魔法のことはお兄様だってわからないでしょう?」
「お前だって風魔法しか使えないじゃないか。」
「元々は白魔法を使う予定だったんだから何かアドバイス出来るかもしれないじゃない。魔王討伐は失敗したら死んじゃうんだよ?」
「モブ令嬢が手伝えるようなことじゃない。無能な味方が一番の癌だぞ。」
「ひどいこと言うなぁ。」
「俺が調べておくからお前はじっとしとけ。」
「話するぐらいならいいでしょう?」
「やめておけ。お前のことが好きだけどそいつは今から他の男と恋愛しないといけないんだ。お前がずっと側にいることで攻略ルートの邪魔になるぞ。」
「でも一人で背負わせるのは入れ替わった身としては心苦しいよ。」
「あいつがそれを選んだんだ。あいつはヒロインとして生きていかなければいけない。大変なことも多いが、いいこともたくさんあるだろう。ヒロインだから。」
「そうだといいけど。」
「ヒロインが上手くいくように俺が協力するからお前は大人しく学園生活を過ごすことに集中しろ。」
「わかったよ。葉月…じゃなくてマナちゃんは任せたよ。」
「おう。それと今日はお前が大人しく学園生活を送る為に委員と部活を決めてきた。それに入れ。」
「強制的にどれかに入らないといけないんだっけ?」
「そうだ。お前は美化委員と茶道部に入れ。」
「なんで?」
「美化委員は週に二、三回学園に朝早く来て水やりをする活動だ。朝早く学園に水やりの為に朝起きたい生徒なんてほとんどいないから美化委員はなりやすくていいだろう。」
「一人で水やりをするの?」
「本来ならそうだが、当番の日は俺も一緒にやってやる。誰もいない時間帯に報連相も出来て一石二鳥だ。」
「毎朝お兄様と会えるなんて素敵な朝になるね♡」
「毎朝じゃない。週にに、三回だ。」
「本当は毎日会いたいくせにぃ。」
「勘弁してくれ。頭が痛くなる。」
「冷たいお兄様も好き♡」
「今は冗談に付き合ってる余裕はないんだ。茶道部は女しかいない部活で部員が五人しかいない弱小の空気のような部活だ。お前が入るのにピッタリだろう。」
「ひどい言い方するなぁ。でもわかったよ。美化委員と茶道部に入ればいいんだよね。」
「そうだ。絶対に目立つなよ!大人しく過ごせ!」
「わかってるよ…。」
私達は作戦会議を終えて、それぞれの部屋に戻った。