第325話 共存計画
魂の入れ替えをしてくれた大恩人であるマリアちゃんに恐怖を抱くなんて私はなんて最低な人間なのだろう
私の為に人生を捧げてくれた人に対してあまりにも非情だ
それでも…やっぱりこわいと思ってしまう自分が嫌だ
安心して信頼出来る友人でありたいのに
私を見つめるマリアちゃんの目が
私に執着して自滅していったストーカー達の目と同じように見えて
恐ろしいのだ
私が執着されることがこわいんじゃない
私に執着して身を滅ぼすマリアちゃんが恐ろしい
そんなこと起こらなければいいけど
「おい!!今日のマナは酷すぎるぞ!!全然集中していない!!楽譜を飛ばすとかありえないだろう!!プロになるくせにいつまで気分屋でピアノを弾くつもりなんだ!!」
とニックにブチ切れられた
今はオーケストラ部の活動中で私はピアノの練習をしている
本来なら12月に引退するのだが、私とニックはキッカ国に留学する為、暗澹せずに卒業まで活動することにした
私があまりにも適当に弾いたのでニックが激怒している
かなりまずい…
「ちょっと嫌なことがあって…」
「嫌なことがあれば楽譜を飛ばして演奏してもいいのか?」
「集中力に欠けていたといいますか…」
「そんな言い訳をキッカ国の留学先でしたら完璧に弾けるようになるまでピアノ椅子にくくりつけられるぞ。」
「ちょっと集中できない日ぐらいあるでしょう?」
「俺にはない。楽譜を飛ばすなんてあり得ない。曲への冒涜だよ。」
「う…」
「俺が優しく教えているから生意気な態度なのかな?」
「ニックはスパルタだと思いますが。」
「じゃあどうして舐めた演奏するのかな?いい演奏をする時と悪い演奏をする時があるのはもうプロの世界では通用しないよ。」
「わかってるわよ…」
「わかってない。何回も繰り返している。いい加減にしろ。」
ありえないミスをしたのでニックから大説教を受けてしまった
その後もボロボロのピアノを弾いて今日は散々だった
やる気ないならもう帰れと帰される始末だ
ハァ…ちゃんと気持ち切り替えて明日は頑張らないとな…
いつもより少し早めに部活動を終えて、私は帰宅しようと下駄箱に行くと
「マナ…」
と声を掛けられたので振り向く
「マオ?ど…どうしたの?」
なんとマオが私に声をかけてきた
「2人で話をしたくて…今時間いいかな?」
「2人で?いいよ。」
私達は風魔法で屋上へと向かった
2人きりとは言っても護衛騎士であるマリオお兄様は近くに待機している
何かあっても大丈夫だろう
それに…今のマオは私に危害を加えるとは思えない
「話って何?」
「僕ね。冬休みに魔塔へ行ったんだ。」
「うん。ミケお爺ちゃんから聞いたよ。私がいる時に帰ってきて欲しかったな。」
「わざと会わないように行ったから…」
「まぁそうだと思ったけど…直接言わないでよね。傷つくから。」
「まだ…気持ちの整理がつかないから…ごめん。」
「いいの。マオが幸せそうにしてて私は嬉しいよ。大切な友達に出会えてよかったね。」
「うん…毎日楽しいよ。」
「フフッ。人間になりたいならいつでも言ってね。私が浄化してまた人間に戻してあげるから。」
「あのさ…俺の心臓どうするつもり?」
「国家機密なので言えない。」
「ミケお爺ちゃんから聞いたよ。」
「あのお喋りじじいめ…」
「ねぇ…俺の心臓を取り込んで魔王になろうとしているんだろう?そんなことしたらダメだよ。魔王なんていない方がいいんだ。せっかく世界が平和になったのに…」
「今は平和だけど…この世界のサイクルは魔王が死んだらまた再び復活するのよ?次の魔王がまた世界を滅ぼそうとしたらこの世界は常に世界崩壊の危機になるでしょう?」
「その時にはまた勇者が出てくるから勇者が魔王を倒すよ。」
「それでも…やっぱり平和に解決する方がいいじゃない?魔族と共存出来る未来を作ることが出来たらこの世界の治安を維持することが出来るんだし…荒振神様は世界崩壊を目的として魔王を作ったんじゃなくて魔族の繁栄を目的としているのでしょう?魔族に平和に暮らして貰えるなら1番いい解決策だと思わない?」
「それでも!!なんでマナがそんなことをしなくちゃいけないんだよ!!」
「そりゃあ私が荒振神様と繋がってるし…」
「マナが魔王になる必要なんてないだろう!?」
「…ん?」
「なんで!!マナが魔王に…」
「ちょっと!ちょっと待って!!私が魔王になるなんて誰に聞いたの?」
「ミケお爺ちゃん以外いないだろう!!」
「私が魔王になるなんて一言も言ってないわよ!!」
「…え?」
「たしかに私が魔王になる構想もあったけど…せっかくハーバランド国の王妃になる予定なんだし、魔族と人間の架け橋になれるように王家で働くほうがいいのかなって思ってたんだけど…」
「え?じゃあマナじゃない誰かが魔王になる予定だってこと?そんなのますます反対だ!!力を手にした人間が魔王として暴走する未来しか見えないよ!!」
「そこはまぁ平和主義な人に頼む予定だけど…」
「急に力を手にしたら暴走するに決まってる!!僕は反対だ!!」
「さすが元魔王ね。言葉の重みが違うわ。」
「揶揄うなよ!そんな計画今すぐ破棄しろ!魔王は毎回倒されるべきなんだ。魔族と人間が仲良く出来るわけ…」
「仲良く出来るよ!きっと!!」
「無理だ!だって僕達は…上手くいかなかった…」
「えぇ?でも今のマオは人間の友達と仲良くしているじゃない。」
「今の僕は心臓を取り出されてほとんど人間だからだよ。力を無くしたから…」
「そうかな?力は関係ないと思う。今、マオが心臓を再び手に入れても友達は大切にするんじゃないかな?」
「…。」
「私はまた殺されるかもだけど!!アハハ!」
「笑えないよ…」
「とにかく!魔王と人間の共存は可能だと思うの!」
「危険すぎるよ…」
「いざとなれば私が浄化すればいいんだしやってみる価値はある。」
「圧倒的な力は孤独にする…」
「フフフ!そう思って実は魔王になった人が寂しくないようにもう1人魔族化させようと思っています!2人の愛の力で魔族を繁栄させていく…完璧な計画でしょう?」
「人間を魔族に?そんなこと可能なのか?」
「荒振神様が1人だけなら魔族に変える薬を作ってくれるってさ。荒振神様は魔族繁栄が目的だからね。大変らしいけど頑張ってくれてるよ。」
「人間を魔王にするなんて…魔王になりたい人間なんているの?」
「魔王は不老だからね。それに寿命も長くなる。なりたい人間なんてたくさんいるよ。」
「忌み嫌われる存在に誰がなりたがるんだよ。」
「魔王が忌み嫌われる時代はもう終わったの。これからの時代はスローライフ!魔王もゆったり平和に暮らす時代なのよ!!」
「くしゃみするだけで人を殺す力だぞ?力を制御できるのか?」
「しばらくはコントロールの勉強とかしないといけないけどね。即死じゃなければ私が回復させられるから大丈夫だよ。」
「キッカ国で留学するマナがそんなことできないだろう?」
「キッカ国から帰ってきてからだよ。まだまだ先の話。私が王妃になってからこの計画は始動する予定だなら。今はまだわからないわよ。」
「…マナが王妃になるかもわからないからな。」
「そうだね!」
「…何年後になるかもわからない計画だろうけど、僕は反対だよ。」
「ご忠告どうもありがとう。」
「じゃあ僕はもう帰るね。」
「マオ!今度一緒に遊ぼうよ!」
「いやだ。」
「ケチ。」




