第323話 新生魔王
クリスマスパーティが終わり、冬休みに入った
マナから離れた世界は平和で楽しくて毎日充実した世界だった
文化祭で久しぶりにマナに会ったけれど
雲の上の遠い世界の住人のように感じた
僕のお笑いライブに来てくれて大声で笑ってくれたマナの姿を見たら
やっぱり可愛いなとか好きだなと思う気持ちが湧き上がってしまうけれど
隣にいるクリスがずっと僕を警戒して見つめてくるから
もう2人の間を引き裂こうなんて気はおきなかった
僕を選んで欲しかったけれど
マナが選んだのはクリスだから
本当はずっと前から気づいていた
マナはずっとクリスにだけは取り繕うことなく本音で話せる相手だということ
魔塔に帰ってきて話すことはクリスの話ばかりだったこと
マナは無自覚だった時から僕はマナはクリスが好きだと気づいていたから
マナが大好きな気持ちはまだ消えていないけれど
クリスがマナを幸せにしてくれることは願っているんだ
これは僕の本音だ
マナは冬休みになるとエラート家の実家に数日帰る
魔塔にマナがいない期間を狙って僕は魔塔へと向かう
僕はコンコンと魔塔の扉を叩く
ガチャと扉をミケお爺ちゃんが空けてくれた
「お久しぶりです。ミケお爺ちゃん。」
と僕は挨拶をした
「…自分の家に帰るのにノックなんてしなくていい。入りなさい。」
とミケお爺ちゃんは僕を迎えくれた
「ただいま…と言っていいんですかね。」
「当たり前だ。ここはマオに家だろうが。」
「ありがとうございます。」
「儂はマオが魔塔に帰ってきて欲しいと毎日思っているよ。マナと顔を合わせるのが辛いなら追い出してやろうか?」
「フフッ。そんなことしたらマナが泣きますよ。」
「いいんだよ。儂は騒がしいマナよりも静かに過ごせるマオの方が気に入っていたんだから。」
「マナが卒業すればキッカ国に留学するので、魔塔に帰ってきてもいいですか。」
「別に今すぐに帰ってきてもいいんだから。好きにしろ。」
「ありがとうございます。ミケお爺ちゃんは本当にお優しいですね。」
「儂を優しいというのはマナとマオだけだよ。」
「…ごめんなさい。僕はマナを殺そうとしました。僕のことを魔王ではなく、人として育ててくれたのに…恩を仇で返してしまいました。…本当にごめんなさい。」
「まぁ…人生色々ある。間違えのない人生なんてない。許すとは言えないが…どちらも無事で本当によかったよ。」
「魔王の力はもう二度と取り戻したくないですね。嫌なことがあれば暴走してしまいそうで…僕はまだまだ未熟だから。」
「フフッ。もう今はすっかり人間のような口ぶりだな。」
「…はい。平凡な人間ですよ。ミケお爺ちゃんのおかげです。」
「儂は何もしとらん。マオは元々心が綺麗だった。マナよりもずっと。」
「買い被りすぎですよ。」
「そんなことない。マナは聖女のくせに自己中だし、傲慢だからな。」
「少し我儘なくらいが可愛いんですよ。」
「大和撫子のような女の方がいいよ。マオはお淑やかで静かな女の方がお似合いだよ。」
「そうですね…元魔王の僕が新しく恋が出来るかわからないですけど。」
「いいに決まってる。ダメだと言うやつは儂はぶっ飛ばすから安心しろ。」
「フフッ。ありがとうございます。」
「…帰ってきてくれて嬉しいよ。マオがお笑いライブをしているところは儂も実はこっそり見に行ったんだ。マオが元気そうにしている姿を見て安心したよ。今いる仲間は一生大事にしろよ。」
「はい。僕は恋は実りませんでしたが…大事な友人には恵まれました。彼等と過ごす時間は腹が立つこともあるけれど、笑い合う時間が楽しくで仕方がないんです。」
「そうか…マオは誰からも愛されるいい子だからな。これからも交友関係が広がって楽しい毎日を過ごすだろうな。人と関わって過ごすことはとても凄いことなんだ。儂には出来ないからな。だから自分に誇りを持って生きるんだぞ。」
「はい…。そういえば僕の心臓ってどこにありますか?」
「儂の自室にあるよ。見るか?」
「はい。見たいです。」
僕はミケお爺ちゃんの自室に入り、魔法瓶に保存されている僕のしんぞ心臓を見せてもらった
「心臓だけで動いていますね…自分の心臓なのに不気味です。」
「心臓に自我があるようだ。中々グロテクスだろう?」
「この心臓は潰さないのですか?」
「うん。」
「何故?僕は魔王になんてもうなりたくないから潰して貰いたいのに。」
「心臓を移植すると魔王と同等の力を得られる。」
「…え?」
「新生魔王が爆誕するんだよ。」
「冗談ですよね?新しい魔王を作ろうとしているってことですか?」
「大当たりだよ。」
「何故?魔王が復活したら…勇者に殺されるだけなのに。」
「新しい魔王は人間と同盟を組んで人間を殺さないように条約を結ぼうと思っている。」
「そんなこと可能なのか?」
「元人間がやるんだ。人間を滅ぼそうとする魔王にならないと思うよ。」
「そもそもなんで新生魔王を復活させるんですか?メリットなんてないですよね?」
「マナが望んだから。魔族と人間の共存する世界を。」
「めちゃくちゃ言うな。」
「まぁ大丈夫じゃないか?だって…マナが自ら新生魔王になると立候補しているからな。」
「…なんだって?」
「マナが新生魔王になれば人類との共存だって夢じゃない。」
「な…!!なんで!!マナが魔王に…!!」
「魔族が悪いものじゃないって伝えたいらしいよ。」
「そんなこと必要ないだろう!?人間じゃなくなるんだぞ!寿命も人と違う!!そんなものにマナがなるなんて…!」
「不老になるし、300年生きることになると説明されていた。それでもやるとマナは言っている。」
「なんで!?」
「マオを…魔王を悪だとするこの世界を変えたいからじゃないか?」
「何の為に?」
「マオの為に。」
「そんなこと!!僕は望んでいない!!マナには人間として幸せに暮らして欲しいのに…!!」
「魔王は復活する。この世界の理だよ。魔王と争って苦しむ未来を途絶えさせたいんだよ。」
「じゃあ僕が…!!」
「ダメだ。マナが適任だ。マオは人間として幸せになれ。マナが魔王としてこの世界を救うんだ。」
「マナがそう望んだんですか…?」
「そうだ。」
「とんだ自己犠牲ですね。」
「聖女だからな。」
「僕は…マナに幸せにしてもらってばかりだ。」
「それは…この世界のほとんどの人間何そうだから。」
「マナは誰に幸せにしてもらえるのかな。」
「クリスだろ。」
「…大丈夫ですか?」
「知らん。」
世界唯一の聖女様はとんでもない計画を企んでいるようだ
魔王になって世界を救うなんて




