第321話 進路希望
遂にこの日が来てしまった
今日は進路希望票の提出日
キッカ国に留学をするなら今日までに申請をしないといけない
自分で決めて選ばないといけない
そして…私は言うべきなんだろう
クリスに自分の選んだ道を
「クリス。ちょっと話があるの。2人で話せる場所に行かない?」
もっとスマートに言いたかったけれど、緊張で声が上擦ってしまった
「マナも結構大胆だね。2人きりになろうだなんて。」
「大事な話をするだけよ。」
私はクリスを連れて空き教室へと入る
「あのね…私の進路のことなんだけど…」
私はさっそく本題の話をするが
こわくて口篭ってしまう
自分で決めたことだから
しっかりとかっこよく堂々と言おうと思ってたのに
こわい
キッカ国に行くと言えば幻滅されるだろうか
クリスのことが好きじゃないのかと責められるだろうか
…嫌われてしまうだろうか
こわい
涙目になって震えてきてしまった
こんなんじゃダメなのに
傷つくのはクリスの方なのに
私がクリスを傷つけるのに
泣く資格なんて私にはないのに
こんな自分が嫌いだ
「マナ…どうしてそんなに怯えているの?」
「大丈夫…」
「大丈夫じゃないだろう?俺の前だけは無理しないでよ。」
「今からクリスを傷つけることを言うから…」
「えっ?マナが?本当かなぁ?」
「本当だよ。」
クリスは私の手を取って安心させるように握ってくれた
今から傷つけると言っているのに優しくされると本当に泣いてしまいそうになる
なんとか涙を堪えて私は覚悟をして言う
「私…卒業した後はキッカ国に留学するの。」
声は震えて目も合わせられなかった
クリスがどんな顔をしているのか見るのがこわい
「あ…あのね。キッカ国に留学しても自由にハーバランド国へ移動できる魔法アイテムが手に入る予定だからいつでも会えるし…ずっと離れ離れだから別れようなんて思ってないから…」
私は嫌われたくなくて別れようと言われたくなくて言い訳を並べる
自分勝手すぎるのはわかっているがそれでもやめられなかった
「クリスのことは大好きだけど…自分で努力した力をもっと試したいって思って…ごめんなさい。」
涙が溢れて止まらなくなってしまった
恥ずかしい
こんな風に言うつもりじゃなかったのに
私に泣く資格なんてないのに
被害者面して本当に最高な人間だ
かっこ悪い
弱い
こんな姿じゃきっと嫌われてる
「泣かないで。どうして泣くの?」
クリスはぎゅっと私を抱きしめて言う
「こわ…くて…嫌いにならないで…」
クリスは私に優しくキスをしてくれた
「こんなに可愛いマナを俺が嫌いになるわけないだろう?」
「そ…そんなのわかんないもん…恋は冷めるのは一瞬だって言うし…」
クリスは何度も何度もキスをしてきた
私のことが大好きだよと気持ちを伝えるかのように
「わ…わかったから。もういいよ。」
私はクリスの顔をぐいっと押してキスを止める
「俺がマナのこと大好きだって信じてくれた?」
「信じた。わかったから!」
「フフッ。よかった。じゃあ本題だけど…俺は反対だよ。キッカ国に留学するなんて。卒業した後はマナと一緒にハーバランド城で暮らすんだ。王妃教育が嫌ならやらなくてもいい。俺の側で一緒に生きてくれたらそれでいいんだ。」
「…魔法アイテムで毎晩会いに行くから。それなら毎日一緒にいるのと変わらないでしょう?」
「ダメだ。キッカ国にいる間はニックや他の男と一緒にいる時間が増えるだろう?そんなの耐えられない。マナを誰にも渡したくない。」
「一緒に音楽の勉強をするだけだよ。私が好きなのはクリスだけ。」
「信じられないなぁ。」
「本当よ!私はクリス一筋なんだから!」
「もっと信じられるようにしてよ。」
「えぇ…と努力家な所とか自分の気持ちを素直に言える所とか私のこと甘やかしてくれる所とか…」
「そんな風に褒めてくれることもとても嬉しいんだけど、もっとわかるようにして欲しいな。」
「わかるように…」
それはさっきクリスが私にしたことを私にしろと言っているのだろう
私だってクリスが好きなんだ
これで信じて貰えるなら…
私は恥ずかしいけれどクリスにキスをした
「どう?わかった?」
「うーん…1回じゃわからないな。」
「えぇ…」
「もっとして信じさせてよ。俺のことが1番好きだって。」
私は何度もキスをしてクリスが好きだと言う気持ちを伝える
こうなったら私も意地だ
クリスがやめろと言うまでやめない
私は何度もキスをして何分経っただろうか
唇が腫れてきそうだし酸欠になってきた
「ハァ…酸欠になっちゃうぐらいしてくれるなんて…マナは最高に可愛いね。俺だけのマナ…絶対誰にも渡さないよ…」
「信じてくれた?私はクリスのことが大好きだって。」
「うん。信じたよ。」
「それなら…キッカ国に行っても…」
「それは話が別だよ。」
「な…なんで!?」
「こんなに可愛いマナを他の男に見せなくないよ。ハーバランド城に軟禁して俺だけがマナを愛でたい。」
「やだよ!そんなの!!」
「なんでだよ!マナは何もしなくてもいいんだ!俺の側にいるだけで何も不自由ない生活をさせてあげるから!!絶対に幸せにしてやるから!!」
「そんな幸せいらないもん!!私は自分の力を試したいの!!」
「ピアノならハーバランド国でも弾かせてやるから!!」
「そうじゃなくて!本場の国で勉強したいの!!」
「マナは人たらしだから他の男と勝手にイチャイチャするに決まっている!!スカーレット学園では俺が牽制してるからいいけど俺の知らない場所で野放しにするなんて危険すぎる!!危機感薄くて襲われるよ!!」
「私は全部の魔法を使える全能型の魔法使いだよ?そんなやつがいたら返り討ちにしてやるわよ!」
「モモフル国で敵に嵌められて倒れたじゃないか!!」
「それは…!!でも大丈夫だから!護衛騎士もいるんだし…」
「なんで俺は一緒にいられなくて護衛は一緒なんだよ!」
「だってクリスはハーバランド国の後継者として勉強しなくちゃいけないし…」
「そんなの他のやつにやらせて俺もキッカ国に行く!!」
「ダメだよ!!そんなの!!今まで努力してきたのに!!」
「マナと一緒にいられないなら意味ない!!」
「私…クリスと結婚する!!」
「…え?」
「キッカ国に留学した後…ハーバランド国に戻ったらクリスのお嫁さんになる。だから…それまで待ってて欲しい。」
「本当に?絶対?」
「必ずクリスの元に帰ってくる。だから信じて待ってて欲しい。」
「そう…じゃあ1年だけ…1年待ったら帰ってきて。俺信じて待つから…」
「あの…1年は短すぎるかな…」
「何年待てばいいんだ?」
「4年ぐらい?」
「長すぎるよ!!絶対嫌だ!!」
「毎晩会いに行くし!大丈夫だよ!!信じて待ってて!!」
「無理無理無理無理!!長すぎる!!1年だけだ!!1年経ったら迎えに行くからな!!」
「1年なんて短すぎるよ!!何も学べないよ!!」
「それ以上は待てないからな!!」
「うぅ…恋人が夢に向かって頑張ろうとしてるんだから!!少しは応援したらどうなの!!バカ!!」
「俺は応援すると言っている!!ただ4年は長すぎると言っているだけだ!!」
「4年待ってくれないと結婚しないから!!」
「な…なんだと…?」
「ほ…他の人と結婚しちゃうからね!!」
「浮気者!!そんなこと絶対許さないぞ!!」
「4年待ってくれたらクリスと結婚するから!!」
「信じられるか!!そんなすぐに他の男と結婚するなんて言うやつのことなんて!!」
「信じてくれるって言ったじゃない!!」
「堂々と浮気宣言するから信じられなくなるんだろうが!!」
「とにかく!私キッカ国に留学するから!!」
「1年だけな!!」
「何年留学するかはまた今度決める…」
「1年しか許さないからな!!」
「4年ぐらい信じて待てよバカー!!!」
「長すぎるに決まってるだろう!!バカ!!」
私は空き教室を飛び出して進路希望をキッカ国に留学にして提出した
反対されるかもとは思っていたけど…
これからまた説得が大変そうだ




