第31話 佐野 葉月
「ごめん。華ちゃん。やっぱりちゃんとケジメつけないと私ダメみたい。」
「…うん。わかった。」
「好きです。貴方と一生を共に生きたい。この世界の何もかもを捨てて私とここから逃避行してくれませんか。」
「ごめんなさい。私は葉月ちゃんのこと好きだけれど、恋人にはなれません。」
「どうしてですか?」
「葉月ちゃんと同じぐらい大事な人達がこの世界にはたくさんいるから。葉月ちゃんだけを選ぶことは出来ません。」
「華ちゃん以外を好きになるなんて無理です。」
「だから葉月ちゃんはヒロインなんて無理だからやめた方がいいって言ったのに…。」
「やっぱり私の気持ち気づいてたんですね。」
「魂入れ替えするぐらいだからね。さすがにわかるよ。」
「華ちゃんが幸せになれるなら構わないと思ってあの時は言いましたが、いざ他の人との恋愛を強要されると出来る気がしなくて。私、華ちゃん以外の人好きになれる気がしないよ。」
「私そんなに大した魅力もない人間だよ?他にたくさん魅力的な人が世の中にはたくさんいるし大丈夫だよ。」
「そもそも私レズビアンだし。」
「そうかなとも思ってたよ…。」
「あの時は華ちゃんに幸せになって欲しいからどんなことでも絶対に頑張ろうと思ってたの。でも現実に男をこちらから落とす為に行動するのって苦痛ね。私は好きでもなんでもないのにさ。だから今日ちゃんと華ちゃんに振られてケジメをつけたかったの。」
「ごめんね。葉月ちゃんの気持ちに応えられなくて…。魂の入れ替えまでして私のことを救ってくれたのに。」
「いいの。わかってたから。…わかってた。この気持ちを誤魔化すことをしたくなかったの。このまま攻略対象と恋愛してハッピーエンドを迎えたとしても後悔しかないと思ったから。だから私の気持ちを伝えたかっただけ。」
「うん。ありがとう。嬉しかったよ。」
「…うん。」
私の瞳からポロポロと涙が流れる。
わかってる。わかってた。
私がどんなに華ちゃんが好きでも
叶わないって
それでも私を救ってくれた神様みたいな大好きな女の子の為に
私は嘘の恋愛をする
きっとこの気持ちは一生なくらない
きっと私も未来の恋人も幸せになることはないだろう
それでも華ちゃんが幸せになるのなら
私は後悔しない
華ちゃんが笑顔になるのなら
私はどんなことでもする
あの時そう覚悟したのだから
華ちゃんの特別になりたい
こんな邪な気持ちしかない私は
やっぱり聖女なんて向いてないだろう