第307話 幸せ
最悪だ
レナ様のように国際問題を解決出来る力がなくて
私に出来ることなんて偽善でしかなくて
あまりにも自分が無力で
そんな自分が許せなくて
嫌いで
スリー様に当たってしまった
スリー様は何も悪くないのに
こんなに弱くて惨めな自分が情けなくて涙が止まらなくなる
泣いたら余計に惨めになるだけなのに
涙を流してクリスに構ってもらって
慰めて貰って喜んでしまっている自分が心底嫌だ
レナ様に正攻法で勝てないからって
泣き喚いてクリスを独り占めにして
モモフル国の問題は他の人に丸投げ
だって私は何も出来ないから
こんな人間がハーバランド国の王妃なんて務まるわけがない
考えて行動することが出来なくて
感情的に行動してみんなを困らせるような人間なんて
ハーバランド国を危機的状況に陥れるかもしれない
私はクリスには似合わない
私はお姫様にはなれない
スリー様が部屋から出ていった後も私は涙が止まらずクリスに抱きついたまま泣き喚いていた
「ひっく…ひっく…私は何も出来ない…」
「そんなことない!マナが浄化したおかげでモモフル国に自然が戻っただろう?」
「あんなの一時的にしか回復しないもん!レナ様みたいに私は国の問題を解決できたしないもん!」
「レナ…?」
「わ…私が王妃になっても無能だもん!レナ様みたいに出来ないもん!」
「そんなことを気にしていたのか?」
「だって…私…何も…出来ない…」
「俺のお嫁さんになった後を気にするなんてテンなんていじらしいんだ!」
「私じゃ務まらないって言ってるのよ!こんなんじゃ…クリスの隣に立てない。」
「そんなこと気にするな。マナは俺の隣にいてくれるだけでいいんだ。」
「そんなの嫌だ!何も出来ないバカな王妃だって後ろ指刺されて暮らすことになるもん!!」
「そんな馬鹿げたこと言う奴らなんて全員解雇するから大丈夫だよ。」
「じゃあ貴族社会は?隣国の評判は?そんなことまで無視出来ないじゃない!!」
「気にしなくていい。俺はマナと一緒なら幸せだ。国のことは俺が何とかするから。」
「そんなの私が嫌なの!!何も出来ない自分が嫌で努力してたのに…可愛いだけの無能だと笑われるのはもう嫌だ。」
「幼い頃から国に尽くす為に教育を受けているからレナと差があるのは仕方ないことだよ。レナと比べて無能だと言うならそれは違う。これから学んでいけば十分だ。」
「こわいの…クリスの横に堂々と立つことが出来ない自分が嫌なの…だからクリスとは結婚したくない…好きだけど…しんどいの…弱くてごめんなさい。私は弱くて臆病で愛さえあれば何でも乗り越えられるなんてこと言えなくて…」
「何言ってるんだ!!俺はルナが俺のことが好きで隣にいてくれるだけでそれ以上は何も望まない!他人の言うことなんて気にするな!俺達が幸せならそれでいいだろう?」
「ごめんなさい…私はどうしても気にしてしまうの…無能な王妃としてハーバランド国の恥になることがこわいの。私には背負えない。」
「じゃあ俺は家を捨てる!!王にならずにマナとひっそりと田舎で暮らすよ。」
「やめて!!私のせいでハーバランド国の王子が失踪なんてしたら大問題だよ!!」
「俺の代わりなんてどうにでもなる!!」
「ならないよ!クリスはハーバランド国唯一の直系の後継者なのに!!」
「マナが王妃になるのが嫌なら俺は王家を抜けても構わない。マナが1番なんだ。マナが一緒にいてくれるなら他は何も望まない!」
「…別れよう。」
「…何を言っているんだ?」
「私のせいでクリスが王家を抜けるなんて重過ぎてしんどいし、王妃になる覚悟もない。私はクリスとずっと一緒にいられない。」
「本気で言ってるのか?」
「…私はスカーレット学園を卒業した後はキッカ国でピアニストとして勉強する予定なの。音楽の本場で本格的にプロのピアニストとして活躍出来るように。クリスと別れて1人で生きていくつもりだったの。」
「…は?」
「ごめんなさい。私は愛に生きることは出来ない。自分の努力で手に入れたものしか信じられない。だから…クリスは婚約者のレナ様と結婚してハーバランド国を守ってね。」
「ふざけるな!!!!」
と大声でクリスが叫んだので、私は体をびくっと震わせる
「それで?マナはピアニストとして1人で生きていって幸せに暮らしていくのか?俺はどうなる?好きでもない女と結婚して?たいして思い入れもない国の為に生きろと?」
「自分の王家の国じゃない。」
「マナと出会ってからはマナしか大事じゃない。この国なんてどうでもいい。」
「私は…どうでもよくない。クリス以外にも大事なものもたくさんある。私は結局クリスの幸せより自分の幸せを優先した最低な人間なの。だからもう私のことなんて忘れて…」
「そんなこと出来るわけないだろう!?俺もキッカ国に行く!!マナと離れるなんて絶対に嫌だ!!」
「来ないでよ!!キッカ国についてきたら私はピアノに集中出来なくなるじゃない!!」
「ピアノなんかより俺に夢中になればいい!!」
「クリスに夢中になって甘やかされて何も出来なくなるもん!そんなの嫌!!」
「いいんだよ!!マナが俺に甘やかされて俺に依存して何も出来なくなってたら嬉しいよ!!」
「嫌だよ!」
「何で嫌なの?俺とずっと一緒にいてよ。王妃になっても、ピアニストになってもマナを不幸になんてさせない。世界で1番幸せにしてあげる。」
「何その自信…」
「マナは俺のこと好きだろう?」
「好きだよ。」
「ずっとずっっっと俺を愛してくれるなら幸せになれるよ。どんな困難があってもきっと愛さえあれば乗り越えられるんだ。」
「綺麗事すぎるよ。」
「そんなことない。真実さ。俺達が愛し合っていれば世界一幸せになれる。俺達が付き合って不幸だった時があったか?」
「…ないけど。」
「ほら。どんな時もマナの恋人として、夫として生涯俺が支えて幸せにすると誓うよ。俺の隣がマナの安心して暮らせる場所にしてみせる。」
「…私自己中だよ?クリスの幸せなんて考えてないよ。」
「構わない。俺はマナさえいれば幸せだから。一緒にいてくれるだけでいい。それだけで俺は幸せだ。」
「何も出来ないのに?」
「そんなことない。一緒にいてくれるだけで俺は最強になれるから。」
「…本当?」
「本当だよ。だから俺と一緒に生きよう。心配しなくていい。幸せにしてあげるから。」
私はクリスの手を取った
甘やかされてずるずるとダメ人間になっていくのがわかる
ちゃんと自分の力で歩かないといけないのに
わかっているのに
私はダメ人間だから
強くないから
流されてずるずると楽な選択をしてしまう
もう何も悩まなくてもいい
この手を取ってしまえば
幸せになれるんだから




