第300話 最後の修学旅行
3年生の最大のイベントである修学旅行が今日から始まる
男女2人ずつの班で行動するのだが、班を決める時にマナ様が俺を誘ってくれたのでクリス様とマナ様とレナ様と俺の男女4人班で行動することになった
マナ様のお人好しのぶりは1年生の頃から変わっていない
新聞部としてマナ様をストーカーし続けた俺に何故か好意的に接してくれている
体操服を盗んだイシュタル先生でさえ許して助けてあげているのだから
筋金入りのお人好しだ
今回も、水族館の時もマナ様は俺を選んでくれたわけで
クリス様は俺のことをかなり嫌っている
ただの新聞部のストーカーがマナ様に優遇されるなんて意味不明すぎるからね
そしてもう1人の班のメンバーであるレナ様からもかなり嫌われている
エド様が俺のことを新聞部の右腕として大事にしてくれていることが気に食わないようで
“ただのストーカーのくせに”
“私の方がエド様の為に命を捧げて働ける”
等と俺を見かけると姑のように小言を言ってマウントを取ってくる
毎回ダル絡みをされるのでレナ様は嫌いだ
しかし俺は新聞部の1員
感情的に行動するのではなく
誰よりも平等に公平にしなければいけない
レナ様が嫌いで
マナ様が好きでも
どちらも平等に接する
それが俺のモットーだ
「ねぇ。シガーレッド・アレクサンダー。修学旅行なんてカップル誕生の絶好の機会だと思わない?カップル成立間近の2人はいないの?」
俺達は豪華客船に乗り、モモフル国へと出航した
海を眺めながらマナ様は言う
「3年間同じクラスにいた仲間ですよ。いい感じになっているならもう既にカップルになっています。相手のことを知り尽くしていますからね。」
「私はクラスメイトのことをあまり詳しくないけど。」
「避けられてますからね。」
「最後までクラスに馴染めなかったな。」
「自業自得としか…」
「畏怖されている相手にどうやって接したらいいのかわからないもの。」
「わからなくてそのままにしているから孤立したままなんですよ。マナ様が孤立しているのは自業自得です。」
「耳が痛いこと言うなぁ…。あーぁ。修学旅行ならもう1組ぐらいカップル成立させてアルテミスとの契約のカップル3組成立に近づくと思ったのにぃ。」
「人の恋愛を応援している余裕なんてないのでは?」
「レナ様にクリスを取られそうだから?だって考えてたら嫌な感情で体が支配されちゃうし、他のことで誤魔化したいというか…」
「嫌なことから逃げる癖はやめた方がいいと思いますよ。」
「今日説教ばっかりじゃん。修学旅行初日にやめてよね。」
「クリス様にキッカ国に留学することもまだ秘密にしているし。」
「だって…言ったら絶対に嫌な顔するし、反対されるもん。」
「今回はいい機会ですし、ちゃんと話した方がいいですよ。」
「嫌よ。せっかくの修学旅行なのに嫌な雰囲気にしたくない。楽しい旅行にしたいじゃない?」
「ほら。また逃げる。心にしこりがある状態ではあまり楽しめないのでは?」
「だって…悲しい思いさせたくないし…」
「じゃあキッカ国への留学をやめればいいんじゃないですか?」
「いや…でも…私は努力してせっかく掴んだチャンスを手放したくない。昔の自分が嫌いだった。自分に自信を持てない自分が。ピアノは私の成長の象徴。努力して成果を出せた。自分のことを好きになれた。だから…」
「でも恋をしてもマナ様は変わりましたよね?昔の自分と決別してクリス様に愛されて普通の女の子のように笑うマナ様だって幸せそうですよ。ピアノだけがマナ様の成長じゃない。恋したことだってマナ様を成長させた立派な要因です。」
「そう…なのかな…」
「マナ様。恋に生きることを選んでもマナ様は立派に成長しています。今までの努力が全てなくなるわけではありません。どちらを選んでもマナ様は幸せになれます。だからマナ様が好きに自由に選んでいいんですよ。ピアニストになっても、王妃になってもマナ様は自分で選んだ幸せを手にすることになるんですから。」
「ありがとう。シガーレッド・アレクサンダー。私は優しいストーカーに恵まれたわね。」
「ストーカーは悪人ですよ。マナ様は警戒してください。」
「ふへへ。シガーレッド・アレクサンダーに一生ストーカーされたいかも。」
「マナ様…悪い男に騙されますよ。」
「クリスに騙されてるから手遅れよ。」
「そうでしたね。」
「ねぇ。シガーレッド・アレクサンダーは好きな人いないの?せっかくの修学旅行を機に告白して付き合えばいいのよ!」
「私はマナ様に夢中なのでそういった相手はいませんね。」
「仕事に夢中なだけなくせに。」
「1番カップル成立しそうなのはレナ様とエド様じゃないですか?」
「えぇ!?嘘でしょう!?エド様は絶対に付き合わないと思ってたのに…」
「人から好意を寄せられるのは初めてのようで満更でもなさそうですよ。」
「いいんじゃん。いいじゃん。レナ様はぞっこんだし、エド様が折れたらカップル成立だもんね!この旅行でキューピット役頑張りましょうよ!」
「でもエド様はなかなか首を縦に振らないでしょうし…難しいとは思いますけどね。」
「今回の旅行でカップル成立しなくても、距離を縮めることは出来るはずよ!!エド様が折れるまでレナ様が押して押して押しまくるように協力しましょうね!!」
「人の恋愛ばかり気にしてないで、たまには自分の恋愛もしたらどうですか?せっかくの旅行ですし。」
「だって恥ずかしいもん。」
「恋愛下手くそですね。」
「まぁね。得意になる未来が見えないわ。」
「胸張って言うことじゃないですけど…」
「いた!!マナ!!何故アレクサンダーと2人きりでいるんだ!!恋人は俺なのにふざけるな!!」
クリス様がトイレに行った隙にマナ様に連れ出されて2人で話していたのだが見つかってしまった
「友人とまったりと話をする時間も欲しいのよ。」
「こいつが友人?マナのストーカーだろう!?仲良くするな!!こいつは危険人物だ!!」
「シガーレッド・アレクサンダーは私を唯一平等に接してくれる大事な友人よ。たとえ私が白魔法を使えなくなっても、顔が醜く変わっても、シガーレッド・アレクサンダーは私に対して平等に対等に変わらず接してくれる。私にとっては唯一無二の大事な友人なの。」
やばい…泣きそうだ…
俺はマナ様をずっとずっと監視することが仕事だったけれど
マナ様を監視してストーカーをする蛮行をずっと許してくれたこの仏よりも神様よりも優しいお人好しのマナ様に
そんな風に評価してくれていることが嬉しかった
マナ様を3年間ストーカーした学園生活が報われた
誰かの特別になりたかった
普通の生活が嫌だった
誰よりも特別なマナ様に
唯一無二の友人だと言われた
マナ様の特別な存在に
俺はなれたのだろうか
「俺のマナ様の監視の仕事はマナ様を守る為でもあるのです。マナ様の唯一無二の友人である俺とも仲良くしてください。クリス様。」
「あ?調子に乗るなよ。このクズ。マナが優しいだけだからな。お前はただのストーカー野郎だよ。マナから離れろ殺すぞ。」
少し煽った自覚はあったけれど
殺気を出して敵意丸出しにされてしまった
今回の旅行でレナ様とエド様の恋愛をマナ様と応援するなら
俺とマナ様で抜け出す必要があるのだが
そんなことをしたら俺の命はクリス様に散らされてしまうかもしれない
この非日常感のスリルがたまらない
修学旅行が楽しみだ




