第295話 恋愛のエキスパート
どうしてこんなことになってしまったのだろう
連日、放課後になれば新聞部にレナ様が突撃してくる
客として来ているので無下にすることも出来ない
出禁にすることも考えたが私のポリシーに反してしまう
全て人間を平等に
情報屋の基本だ
レナ様は毎回情報を買いに来る
私の幼少期の話とか
私の学生時代の話とか
私の家族関係とか
私の情報を毎回買っては満足して帰っていく
今はまだ実害がないが、これから先何が起こるかわからない
国を裏切るだのハーバランド国を崩落させるだの物騒なことも言っている
全てを鵜呑みにしているわけではないが、火のないところには煙は立たない
早めに対処するべきだ
「アレクサンダー。恋愛のエキスパートは呼べたか?」
「はい。お忙しい方ですが、早朝ならとお時間頂けて今からお会い出来ます。」
「こんなことを頼んで悪かったな。」
「いえ。これも新聞部の仕事ですから。」
どうぞとアレクサンダーが恋愛のエキスパートを部室に招き入れる
「おはようございます。エド様。」
そこに現れたのは私の天敵
世界最強の聖女マナ様だった
「…アレクサンダー。私は恋愛のエキスパートを呼んだはずだが…どう考えてもこの女は恋愛に関してはポンコツだと思うのが。」
「エド様が知りたいのは穏便に相手を振る方法でしたよね?確かにマナ様は恋愛することに関してはポンコツです。しかし、振ることに関してはエキスパートなんですよ。振った男も女も星の数ほどいます。ましてや厄介なストーカーやヤンデレ相手も何度も経験しているんですよ。マナ様ほどの適任はいません。」
「誰に対しても優柔不断じゃないか。困った時は周りが助けてくれているだけだろう?」
「失礼ね。私は告白してきた人には誠心誠意お断りしています。」
「本当に使える情報を教えてくれるんだろうな。」
「アドバイスですけど…」
「私の人生がかかってるんだ。適当なことを言えばマナ様の秘密を全世界に暴くぞ。」
「頼まれてきたのに何で脅されないといけないんですか…」
「エド様。今日のマナ様はお客様です。丁重に扱ってください。」
「うるせぇ!!私の命運がこの女のアドバイスで本当にどうにかなるのか!?失敗は許されない一大事だぞ!!わかっているのか!?」
「わかりましたから…落ち着いてくださいよ。エド様。」
「ハァハァ…すまない…最近心に余裕がなくて感情的になりやすくて…」
「趣味とか見つけた方がいいんじゃないですか?ストレス発散になりますよ。」
「うるせぇ!!そんなことはどうでもいいんだよ!レナ様が俺のことを諦める方法はないのか!?」
「ううーん…かなり盲目的に暴走してますからね…普通に断っても絶対に諦めてくれませんね。」
「どうすんだよ!!」
「第三者に相談してみては如何ですか?ガードン王とかレナ様のご両親とか権力を持った人が止めれば諦めざるを得ないと思いますよ。」
「そんなことはもう考えた!!でも…レナ様は反対されたら国を裏切るだのハーバランド国を崩落させるだの物騒なことを言っているから…下手に頼ることは恐ろしくて出来ない…!!」
「そ…そんなことを言ってるんですか?かなり重症ですね…」
「私がレナ様の親に諦めるように説得しろなんて言って本当に両親を殺したりされたら…こわい…こわすぎる…」
「本当にやるとは思えませんが1%でも確率があるならやめた方がいいですね。」
「他の!他の方法はないのか!!」
「まぁ振る時の常套句はありますよ。」
「何だ!?どうすればいい!?」
「他に好きな人がいるから諦めてください。」
「な…なるほど!!」
「誰かと聞かれたら相手に迷惑だから秘密だと言えばいいんです。」
「マナ様は天才だ!さすが星の数だけ男を振っただけはある!!」
「そんなに振ってません…」
「いや…それってエド様の好きな人の情報を買うと言われたらどうするんですか?」
とアレクサンダーが言う
「た…確かに…そんな女いないのに言えない…」
「私のことを好きだと言ってもいいですよ。」
「私は世界一マナ様が嫌いだ。」
「親切で言ってるのに…ひどいなぁ。」
「おい!!八方塞がりだぞ!!どうするんだよ!!恋愛のエキスパートだろが!!」
「じゃあ嫌われるように努力するとか?」
「何をすればいい?」
「冷たくするとか…?」
「私はレナ様に優しくしたことなんてない。」
「じゃあ逆に優しくしてみます?レナ様はどうやら冷徹な男が好きで男の趣味が悪いようですし…」
「私のことをディスっていないか?」
「まさか。清廉潔白の聖女様がそんなことをするわけないじゃないですか。」
「何が清廉潔白だ。私利私欲で世界を救ったり崩壊させかけたりしていただけじゃないか。」
「終わりよければ全てよし。」
「スリー様が有能だからなんとかなっただけだ。マナ様は我儘放題好き放題していただけじゃないか。」
「終わったことをネチネチと…モテませんよ?」
「今まさに変な女に纏わりつかれて困っているよ。モテてもいいことないとマナ様が言っていたことをこんな形で実感するとは思わなかったな。」
「まぁぶっちゃけ…付き合ってあげた方が平和でいいと思いますけど…」
「ハァ!?適当なことを言うな!!数秒一緒にいるだけで頭が痛くなるのに付き合えるわけないだろう!?」
「俺も付き合った方が丸く収まると思いますけど…何でも従順に言うこと聞くと言っているんですから、便利な情報源が手に入るぐらいの感覚で付き合えばいいじゃないですか。」
とアレクサンダーもマナ様に賛同して言う
「い…いやだ!!」
「どうしてですか?便利に使ってやればいいじゃないですか。本人もそれを望んでいるんだし…」
「初めて付き合う相手ぐらい好きになった人がいい…」
私はぽつりと小声で言う
私が好きな人と付き合いたいと言ったことに対して
マナ様もアレクサンダーも肩を震わせて笑いを堪えている
こいつら最低だ
「プッ…エド様にも人の心があったんですね。安心しました。」
とマナ様が言う
「そうですよね。初めて付き合う人ぐらい好きな人がいいですよね。俺が失念してました。フフッ。申し訳ございません。」
とアレクサンダーが言う
「お前ら…私をバカにしているだろう。」
「そんなわけないですよ!!可愛いところもあってよかったなって!!ね!シガーレット・アレクサンダー!!」
「はい。とても可愛らしいです。」
「よし。わかった。お前らは最低の人間だ。」
「だってねぇ…人を愛したことなんてありませんみたいな態度してるくせに…そんな可愛らしいこと言うなんて思わなかったから…」
「情報が手に入るなら喜んで付き合うと俺も思っていましたよ。」
「うるさい!わかったなら穏便に諦めさせる方法を教えろ!!」
「えぇ?好きな人を作るしかないんじゃないですかぁ?恋のキューピットしてあげますよ?どんな女の子がタイプですか?」
「私は人を好きになったことなんてない。タイプなんて知らん。」
「うーん…じゃあレナ様をお勧めしますよ。付き合っていくうちに好きになるかもしれませんよ。情熱的に愛してくれるならいつか絆されますよ。」
「私をマナ様と同じにするな!!私は絶対にあんな女と結婚するなんて嫌だ!!」
「エド様のこと好きになってくれる女の子なんてレナ様だけですよ。案外上手くいくと思いますよ。」
「もういい!!出ていけ!!私は諦めさせる方法を知りたいのに教えないのは契約違反だ!!」
私はマナ様を押し出して部室から追い出した
「とんだ疫病神を呼んでくれたな…」
「結構しっかりとしたアドバイザーでしたよ?」
「どこがだ!!結局諦めさせる方法なんて教えてくれなかったじゃないか!!」
「言ってましたよ。他の女を好きになって諦めさせろって。」
「それは…そうだが…!!」
「俺も今から知らない女を好きになるよりエド様を愛してくれているレナ様と付き合った方がいいと思いますよ。」
「他人事だと思って…!アレクサンダーならレナ様と付き合うのか!?」
「いや…あんなこわい女関わりたくないですね。」
「私も嫌だよ!!関わりたくないよ!!誰か助けてくれよ!!」
私は机を台パンして心の底から切実に叫んだ
誰でもいい…
誰かレナ様を止めてくれ…




