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第294話 シグナル・レナ

恋をするなんて夢物語だった

ラブラドール国の姫として生まれた私には人生において選択肢なんてほとんどなかった

この国の未来を背負うこと

この国を守ること

家業を継いで親の決めた結婚相手と結婚して

この国を守る為に生きる

それが王族に生まれた宿命だから

「俺の息子が聖女に入れ込んでこの国を守る義務を放棄しようとしている。クリスの目を覚させてやって欲しい。スカーレット学園に婚約者として入学して王としての責務を思い出させてやってくれ。」

「畏まりました。ガードン王。」

やった…!!!

これはチャンスだ!!!

ハーバランド国は特殊な国で政略結婚が一般的ではない

貴族はスカーレット学園へと入学して恋愛結婚をすることがスタンダードだ

羨ましい

私も学校生活を楽しいで恋愛結婚なんてしてみたい

そう思っていた

だからこれは千載一遇のチャンスだ

クリスが私と結婚するなんて絶対にありえない

私はガードン王に言われた職務を全うする気なんてさらさらなかった

どんな理由であれ、憧れのスカーレット学園に入学出来ることが嬉しかった

王族の私でも普通の学生生活が出来るかもしれない

友達とお昼ご飯を食べて

放課後は恋人と逢引なんてしちゃったりして

そんや甘酸っぱい青春のような学生生活が出来るかもしれない

期待に胸を膨らませて私はスカーレット学園へと入学した

マナ様は噂通りの超絶美少女だった

しかも女神のように優しかった

こんなに可愛くて優しくて男の理想を体現したようなマナ様を手にしたクリスが今更私との政略結婚に首を縦に振るなんて考えられない

実際に目の当たりにしたクリスはマナ様にぞっこんで昔の面影はなくマナ様に執着するキモい男に成り下がっていた

でも…以前より幸せそうで羨ましかった

私にも出来るだろうか

恋をして青春するような学生生活が


そして私はあっさりと運命の出逢いをした

かっこいい…

カーコック・エド様

スラッとした高身長に爽やかな短髪

清潔感のある見た目とは裏腹に

冷ややかな目と蔑む態度

悪の組織に所属しているような危なげな雰囲気に私は一瞬で虜になった

もう一度会いたくて放課後、エド様に会いに行った

もっとエド様と親しくなりたくて、エド様と同じ新聞部に入部しようとしたけれど強く拒絶されてしまった

もっと近づきたいのに

もっとエド様を知りたいのに

マナ様に相談したら新聞部は情報を買ったり売ったりしているようだ

部員が無理なら客になればいい

エド様の知りたい情報を持ってくることが出来れば

私を認めてくれるはず


私は今日の放課後もエド様に会いに新聞部に行く予定だ

「ねぇ。クリスはどうやってマナ様と恋人になれたの?あんなに可愛い女の子ライバルもたくさんいて大変だったんじゃない?」

私は高嶺の花の美少女であるマナ様を恋人に出来た百戦錬磨のクリスに恋愛の教授をして貰おうと問いかけた

「毎日好きだと伝えることだよ。」

「へぇ〜意外とロマンチックな方法ね。」

「毎日好きだと言って、押して押して押しまくってようやく好きになってくれた。」

「やっぱり積極的に攻めないと恋仲にはなれないのね…」

「マナはダメだぞ。」

「私はエド様に一目惚れしたの♡」

「ふーん。よかったな。」

「何が?」

「レナは小さい頃から言ってたじゃないか。恋をしてみたいって。」

「…そうだったかしら。」

「よかったな。夢が叶って。」

忘れていた

そういえば幼い頃は絵本の中にあるプリンセスは運命の王子様に出会って恋をして結婚をしていた

私も運命の王子様がいて、恋をして結婚するんだと思っていたのに

現実は親が決めた相手と結婚するしかないと知って絶望したんだ

王族なんてそんなもの

これが宿命だからと

夢見ていた気持ちさえ忘れていた

まさか自分も運命的な出会いをして

王子様に会えるなんて思いもしなかった

早く会いたい

エド様に好きだと伝えたい


放課後になり、私は速攻で新聞部へと走って行く

「こんにちは!エド様!!」

新聞部の部室のドアを勢いよく開けて私は挨拶をする

「こんにちは。レナ様。今日はどのようなご用件でしょうか。」

穏やかに笑っているが、目は鋭く冷たく私を見つめている

「今日はお客様として伺いましたの。」

「ほう。レナ様の知りたい情報とは何ですか?」

「エド様が今1番知りたい情報を教えてください。」

「ふむふむ。なるほど。なるほど。本来なら情報には対価が必要なのですが、今回は初回なので特例でタダで教えてあげましょう。私の今1番知りないことはレナ様がどうすれば私の目の前から消えてくれるか知りたいですね。」

「それは無理ですね。どうしても目障りなら殺してくださいな。」

「もっと穏便に解決する方法が知りたかったな。さぁ情報は渡しました。早く帰ってください。」

「私はエド様の望む情報は何でも手に入れてみせますよ。情報だけじゃない。エド様が望むなら私の国を売り飛ばしてもいいし、このハーバランド国を崩落させてもいいし、気に入らないやつを殺すことだって…エド様が望むなら何でもやりますわ。この身も心も全てエド様に捧げます。」

「いや…そんな恐ろしいことを企てるわけないだろう…?そんな物騒なことを望んでないよ。」

私はエド様に近づいてそのまま押し倒し、馬乗りになる

「なんでもします。なんでもですよ?エド様の右腕と言われているシガーレッド・アレクサンダーよりも有能に働いてみせますわ。なんでもいいんです。私を使ってください。」

「隣国の王女様にスパイ活動なんてさせられるわけないだろう?お引き取りください。」

「好きです。」

「え?」

「エド様が好きなんです。エド様の役に立ちたいんです、エド様に愛されたいんです。」

「隣国の王女様相手に身分差がありすぎますよ。」

「カーコック家は十分家柄はいいわ。もしも私の親が反対したら、私の親を殺します。だから何も問題ないですよ。」

「長年連れ添った大事な親を出会って3日しか経っていない私の方が好きだと言うんですか?そんな話信じられません。本当に私のことを好きなんですか?私を騙してラブラドール国に情報を渡すことが狙いですか?」

「…プッ。アハハハハ!!」

「何がおかしい?」

「アハハハハ!!…どうでしょうね?私がエド様を騙して情報を得ようとしてるかもしれませんね。本気で好きでこんなに一途に可愛くなったのかもしれません。」

「どっちなんだ?」

「知りたいですか?私のことが。じゃあ私をたくさん確かめてください。私の反応を見て感じて…私の本当の狙いを知ってください。知りたいのでしょう?エド様は情報屋ですからね。」

「知りたいよ。教えてよ。レナ様。俺の望みならなんでも叶えてくれるんだろう?」

「好きです。大好きです。私の全てをあげるからエド様の全てが欲しいです。」

「はぁ…ガードン王にレナ様を呼ぶようになんて言わなければよかった…」

「エド様が私を呼んでくれたのですか!?なんてことなの!!本当に運命だわ!!私に会う為にエド様は私を呼んでくれたんだわ!エド様は私を救ってくれた王子様!!!」

「そんなわけないだろう…」

夢に見た青春は甘酸っぱくてふわふわしていて手を繋いだらドキドキしちゃうような恋だったけれど

私がした恋は暴力的で高圧的で鉛のように重い感情だった

理想なんかよりも現実方が100倍良くて

恋をしてよかったと

幸せだと心の底からそう思った




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