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第290話 傷心

オーケストラ部の部活では初めて体験した嫉妬、恨みの感情をピアノに思いっきりぶつけて弾いてやった

負の感情の方がピアノの音色に深みが出やすくなっているのも今は腹が立つ

やっと帰宅して魔塔へと帰ってきた

疲労困憊だ

私はソファへそのままダイブする

「もう何もやりたくない…」

本来ならいつも帰ってきてすぐに夕食を作るのだがやる気がおきない

恋愛っていいことばかりじゃないんだな

こんなことで感情が地に堕ちてしまって…

みんなはどうやって普通に振る舞っているんだろう

自分の無力さが嫌になる

「ねぇーーー!!!今日はどっちーー??レイーー??マリオお兄様ーーー??」

私が呼ぶと影から姿を現したのはマリオお兄様だった

「…何?」

「マリオお兄様かぁ…」

「レイじゃなくて悪かったな。」

「まぁいいや。私はもう疲れたから夕御飯作りやってくれない?」

「疲れたなら白魔法で回復すればいいだけだろうが。」

「体力の話じゃないの。精神的に疲れた話をしているの。」

「俺は料理なんてしたことない。」

「でしょうね。」

「出来るわけないだろう?」

「毎日私が作ってるの見てるじゃん。なんとなくわかるでしょう?」

「いや。全然ちっともわからない。」

「使えない…」

「俺の仕事は護衛騎士だ!!料理が出来ないことで文句を言われる筋合いはない!!」

「ちょっとは傷心の私に優しくしようとしてくれないの!?」

「勝手に傷心になってるだけだろうが!!クリスはマナが1番好きだし、レナ様は肩書きだけの婚約者だと説明していたじゃないか!マナが被害妄想を膨らませて勝手に傷心になってるだけだろうが!!」

「今は1番でも将来的に1番になるのはレナ様だもん!!」

「そんなこと誰が言った?クリスに聞いたか?マナが勝手にそう思ってるだけだろうが!!」

「で…でも!!」

「でもじゃねぇ!!将来どうなるかなんて誰もわかんねぇよ!!」

「それは…そうだけど…!!」

「そうだろう!?だから傷心になる必要なんてない!!元気なら早く食事を作れ!」

「嫌。」

「なんでだよ!!」

「今日は誰かの手料理を食べたい気分。」

「…俺はさ。毎日毎日思うことがある。どうしてマナが聖女に選ばれたんだろうってな。俺の目には昔からマナは悪魔にしか見えないのに…」

「この世界の神様趣味悪いから。」

「俺は絶対作らないぞ!!」

「何でよ!目玉焼きぐらいは簡単に出来るでしょう!?」

「そんなに簡単に出来るなら自分でやれ!」

「酷い!!私の傷ついた心を癒そうと少しは努力したらどうなの!?」

「知るか!!そんな我儘ばっかり言ってると本当に愛想尽かされてクリスに逃げられるぞ!!」

私は目に涙を浮かべてぷるぷる震える

「な…何泣いてんだよ!!ほら!泣くな!!」

「うううううう!!意地悪!!マリオお兄様の意地悪ーー!!!」

私はポロポロと涙が溢れて泣いてしまった

「わかった!俺が意地悪だったから!!泣くな!!」

「うわあああああああああああん!!」

「おい!騒ぐな!俺が泣かしたと思われるだろうが!!」


「マナを泣かしたのはお前か?マリオ。」

ミケお爺ちゃんが騒ぎを聞きつけてリビングへとやってきた

「あ…あのですね。今日、隣国の王女様がクリスの婚約者として転入してきまして…マナが傷心になっているようで…」

「私は…ただ…今日の晩御飯は他の人の手料理がよかっただけなのにぃぃぃぃぃ!!」

「えっと…俺が料理をしないと言ったので…」

「わかった。今日は儂が作るから。マナは泣くのをやめて落ち着いておけ。」

「うわあああああああああん!!ありがとうミケお爺ちゃんんんんん!!」

キッチンにはミケお爺ちゃんが入り、私とマリオお兄様はソファに座って待っていた

「護衛騎士が主人を虐めて泣かすなんて職務怠慢じゃないですか?マリオ様。」

スリー様も騒ぎを聞きつけてリビングへとやってきた

「げっ…まだいたのかよ…」

「昔のように兄弟喧嘩するのも微笑ましいですが傷心のマナには優しくしてあげてくださいよ。」

「わかりましたよ。ほら。愛しの初恋の人の登場だよ。俺はもう影から見守ってるから思う存分癒して貰えよ。」

「マナは兄ちゃんに優しくしてほしかったんだよ。」

「えぇ…」

「少しは慰めてやってあげてくださいよ。」

「…。」

マリオお兄様は私の頭をポンポンと撫でてくれた

「マナが世界で1番可愛いんだから何も心配することねぇって…」

「…どうせ外見だけしか取り柄ないもん。」

「めんどくせえ!!俺には無理だ!!」

「うーん…絶望的に噛み合いませんね。善意が。」

スリー様は私の隣に座り肩に私の頭を乗せる

「マナ。今日学校に行くことを楽しみにしていたじゃないか。クリスに会えるからだろう?」

「うん…。」

「誰がいても関係ない。マナがクリスに会いたいと思う気持ちは大事にして学校に行くんだよ。」

「私…邪魔者じゃない?」

「誰かにそう言われてから考えなさい。マナはクリスに会いに楽しく学校に行けばいい。それだけ。他の難しいことは何も考えなくていいんだ。」

「でも…我儘で身勝手な女の子になっちゃうかもしれない。嫉妬に狂って醜い女になるかもしれない。…嫌われるかもしれない。」

「いいんだよ。嫉妬も醜い感情も全てが悪じゃない。人間なら誰でも持っているものなんだ。マナは今まで綺麗に生きすぎただけ。そんなものは普通なんだよ。」

「嫌いにならない?」

「少なくとも私はならないよ。これから先どうなるかなんて誰もわからない。不安なら好かれる努力をしてみればいいんじゃないかな?」

「なるほど…」


「夕食が出来たぞ。」

とミケお爺ちゃんがオムライスを出してくれた

「わぁ!!オムライス!!ミケお爺ちゃんありがとう!!」

「これぐらいなら儂も作れるからな…」

「大好き!!ミケお爺ちゃん!!」

「いいからはよ食え!!」

ミケお爺ちゃんは人数分作ってくれたので今日は4人で夕食を食べた


「マオは?今日は登校していたか?」

とミケお爺ちゃんが言う

「うん…目も合わないし、もう私のことは忘れて生きていきたいみたい。新しく出来た友達と仲良く話していたよ。幸せそうだった。」

「…そうか。」

安心と少しの寂しさを感じる笑顔でミケお爺ちゃんは答えた

「マオ君は人間になるのか魔族として生きていくのか悩んでいる様子でした。こちらとしてはどちらを選んでもマオ君の選択を尊重しようと思っています。ガードン王は人間に戻して欲しいようですが…」

「そうなんだ。マオが人間に戻りたいと願うなら私が完全に浄化しないといけないからまだまだ修行が必要だね。」

「今のところは人間社会で生きていくことになりそうなのでマナが浄化しても安全が確保できるぐらい準備しなければいけませんね。」

「平和になっても休みがないや。」

「少し騒がしいぐらいが1番平和な証拠です。」









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