第288話 ライバル
「3年の2学期には体育祭、宿泊学習、文化祭、ハロウィンパーティ、クリスマスパーティとたくさんのイベントがあるんだよ。」
とクリスが言う
「勉学より遊んでる時間の方が長く感じるわね。」
「俺はマナの恋人になったんだからもちろんずっとマナと一緒に恋人として参加するよね?」
「うーん…」
「何を迷っているの?」
「ダンスとかは他の人と踊ってもいい?」
「ダメだ、マナはもう俺の恋人なんだから。他の人と踊る必要なんてないだろう?」
「別に踊るぐらいいいじゃない。社交界ではパートナー以外の人と踊ることはたくさんあるでしょう?」
「よそはよそ。うちはうちだよ。」
「そんなに独占欲丸出しにしなくたって私はクリスの恋人なんだからいいじゃない。」
「ダメだ!!絶対!!ダメ!!ダンスって何をするのかわかっているのか?手を取り合って体を密着させて目と目を合わせながら踊るんだぞ?そんなこと他の男とさせるわけないだろう!!社会界のマナーの方がおかしいよ!好きな女と他の男と踊らせることがマナーだなんて狂ってる!!」
「人との繋がりは大事だからその方が円満になるんじゃないの?」
「俺はマナとダンスをした男共と円満に仲良くするなんて絶対にありえないけどね。」
「嫉妬深いなぁ。」
「当たり前だと思うけど。」
「3年生最後なんだし、お世話になった人とかいっぱいいるから一緒に踊ったりして思い出作りたかったなぁ。」
「絶対ダメ。やっと恋人になれてマナを独り占め出来るのに他の男と交流なんてさせないから。」
「むう。残念。」
「マナは俺のこと好き?」
「好きだよ。」
「俺が他の女と踊ったりしたら嫌じゃないか?」
「別に嫌じゃないよ。クリスは立場的に他の女の人と踊らなくちゃいけないでしょう?」
「そうだけど…嫉妬したりしないのか?」
「しない。」
「俺が他の女と仲良くしたら嫌な気持ちにならないのか?」
「私はクリスが1番に私のこと好きだって信じてるよ。」
「…俺の婚約者がこのクラスに転入してくる。またお父様が勝手に用意した婚約者だ。今回ほ隣国の王女様で無下にすることは出来ない。」
「…それって私は用済みでクリスにフラれるってことかな?」
「違う!!そうじゃない!!マナは俺の恋人だ!!」
「…そう。わかった。」
朝礼の始まるチャイムが鳴り、私達は席へと着く
担任のイシュタル先生がクラスに入り、転入生を紹介する
「みんなに転入生を紹介する。ラブラドール国の王女様である、シグナル・レナ様だ。」
紹介されて教室に入ってきたのは貴賓溢れたオーラを纏い
金髪のウェーブ髪がとても美しい女性だった
「はじめまして。シグナル・レナです。ハーバランド・クリス様の婚約者として入学しました。どうぞよろしくお願い致します。」
私のことはガードン王から聞いているのであろう
強い牽制を込めた眼差しで挨拶をされた
ピリピリとした空気が張り詰めているけれど、拍手をして歓迎する
それからレナ様はクリス様にべったりくっついて常に行動を共にしている
私は2人の間に入ることなんて出来るはずもなく
大人しくしていることしか出来なかった
「根性なし。」
そう言って私に話しかけてきたのはローズ様だった
「だって私にはどうすることも出来ないし。」
「なんでも譲ってくれる聖女様は好きな男も譲ってしまう心の優しい方なんですね。」
「別にそんなんじゃない…」
「そうじゃない。いいの?あっけなく取られて。」
「…私は恋人で、レナ様は婚約者だから。文句なんて言えないよ。」
「意味がわからない。どういうこと?」
「私は恋人だけど…結婚する気がないことは見透かされてる。クリスにもガードン王にも。だから…文句を言う資格なんてないのよ。」
「ふーん。だからあっさり引き下がるんだ。根性なし。クリス様と腕組んでニヤニヤされてもほっとくんだ。」
「…。」
「マナのそういう所は優しさなんかじゃない。ただの弱虫だよ。このままだと学園生活ずっとレナ様にクリス様を取られることになるわよ。いいの?」
「…やだ。」
「じゃあ戦うしかないのよ。やりたい放題されて黙って見てるだけの女じゃないこと見せてやりなさい!」
「でも…なんて言えば…」
「思ったことをそのまま素直に言えばいいのよ!!」
「我儘になっちゃうよ…」
「マナは図太いぐらいでちょうどいいのよ!」
「勝てる気がしないよ…」
「大丈夫!!可愛さだけなら絶対に勝ってるから!!世界一の美女から男を取れると思うなよって強気にいけばいい!!」
「失敗したら慰めてね。」
「抱きしめて撫でてあげる。」
「…フフッ。百人力だ。」
「…頑張れ。マナ。」
私はローズ様に背中を押されてエールを送って貰えた
こんなにも頼もしい友人がいて本当に私は恵まれている
ローズ様がいなかったら何もせずに諦めて眺めているだけだった
でも…本当は諦めたくない
卒業後はどうなるかわからないけれど
学園生活の間だけはせめて
私の恋人のクリスであって欲しい
凄く自分勝手な我儘を言っていることは自覚している
でも…諦められないよ
私だってクリスが好きなんだから
今だけはせめて
私が1番でいさせて欲しい
私はクリスとレナ様が腕を組んで談笑をしているところに声を掛ける
「あの!!!」
びっくりするぐらい大声で声を掛けてしまった
2人とも私を見つめて私の様子を伺っている
「あの…クリスは…私の…こ…恋人なんです…だから…えっと…その…」
私は涙目になりながら聞こえないぐらいのか細い声で震えながら言う
なんてカッコ悪いんだ
こんなんじゃクリスを取り返せないよ…
恥ずかしかくて今にも逃げ出しそうになる
「それで?私にどうして欲しいの?マナ様。」
余裕のある笑みでレナ様は私に問う
「えっ…えっと…私もクリスと仲良くしたいと言いますか…」
しどろもどろになりながら私は必死に答える
涙目で震えは止まらずビクビクしてしまう
「プッ…アハハハハハハハ!!可愛い〜♡小動物みたーい♡」
レナ様は大笑いをして私のほっぺたをつんつんと触りだす
「えっ…あっ…あの!!」
「怯えた表情が堪らなーい♡もっと意地悪したくなっちゃう〜♡」
「ひぇっ…」
私が怯えているとクリスは私の肩を抱いてレナ様から引き離す
「俺の恋人を怖がらせるな。」
「なによ〜嫉妬させてみたいから協力してくれって言うからしてやったのに。感謝の言葉ぐらい言ってよね。」
「えっ…あの…」
状況があまり理解出来ずに呆然とする
私はクリスに抱きしめられた
「ごめんね。マナ。少し嫉妬されてみたくて…マナを傷つけるつもりはなかったんだけど…俺の我儘のせいで悲しい気持ちにさせてしまってごめん。でもレナに俺のことを恋人だって言ってくれて嬉しかった。」
「我儘な恋人を持つと苦労して大変ね。マナ様。」
「黙れ。お前はもう用済みだ。マナを泣かせるな。」
「泣かせたのは私じゃなくてクリスだけどね。」
「慰めるのも俺だからいいんだよ。早く離れろ。」
「隣国の王女様に対してあまりにも無礼じゃない?」
「知るか。お前に無礼を働いたところで隣国との関係なんて対して変わらねえよ。」
「ひっどいなぁ…」
「あの…レナ様は婚約者じゃないんですか?」
「あぁ。一応肩書きは婚約者だけど形だけよ。ガードン王がうるさいからねぇ。私はクリスよりもマナ様にお会いしたかったから入学したんだし♡噂以上の美少女で会えて光栄ですわ。」
「お父様が俺とマナの仲を引き裂こうと今でもしてくるんだよ。レナのことは肩書きだけだ。婚約者なんて気にするな。」
「2人は顔見知りなんですか…?」
「立場上幼少期から付き合いがあるだけですよ。」
「社交界で会ったことがあるだけだ。」
「そう…ですか。」
幼馴染ということなのだろう
親しげに女の人と話すクリスは初めて見た
王子様と王女様なんて
2人をお似合いだなと思ってしまった
きっとこの2人は結婚するのだろう




