第283話 半年後に
花祭りを終えて私達は帰国する
別れ際にカイザー様とエレナードが見送りに来てくれた
「帰国なんてしなくていいのに…」
とカイザー様は言う
「それ毎回言いますよね。カイザー様。」
「今年はもう音楽で生きていける実力も身につけているんだから早めに留学したっていいじゃないか。」
「スカーレット学園は卒業したいので。」
「卒業なんて肩書き音楽には必要ないよ。」
「肩書きの為にスカーレット学園に通うのではないのです。残り少ない学園生活を楽しみたいんです。」
「…そうか。まぁあと半年もすればここに住むことになるからな。せいぜいあと半年青春謳歌すればいいさ。」
「ありがとうございます。」
「恋に浮かれて練習を怠るなよ。」
「半年ぐらい浮かれさせてくださいよ。」
「ダメだ。まだまだ技術的には下手なんだから。練習を怠るとすぐにマナのピアノの音色は劣化するぞ。」
「恐ろしいことを言いますね…」
「事実だ。練習を怠るな。デビュー公演が成功したのは俺のオーケストラがマナに合わせてやったからだ。天狗になるなよ。マナなんてまだ生まれたての子鹿だ。足をがくがくさせてやっと立てるようになったぐらいなんだからな。」
「そんなにまだまだ赤ん坊ですか?もう少し評価高いと思っていましたが…」
「赤子のペーペーだよ!経験不足が音に滲み出てるね。」
「経験不足はあまり補えないと思いますが…」
「毎日15時間弾き続ければいいよ。白魔法があるんだから簡単だろう?」
「…もう帰らないと!出航の時間だわ!」
「15時間!弾けよ!毎日だぞ!!」
「どうしよう。キッカ国に留学したくなくなってきちゃった。」
「半年後毎日しごいてやるからな!覚悟しとけよ!」
「カイザー様お忙しいから他の方に師事しますね。」
「俺が見つけた原石を他にやるわけないだろう!?」
「まだまだ現役で活躍されてますし…ピアノは専門外ですし…」
「俺はピアノもコンクール優勝経験がある!専門外ではない!」
「天才型って師事するの向いてなかったりするんですよ。」
「俺の師事を断るなんて無礼者にも程があるぞ!」
「私、無礼者なんです。」
「楽してプロになれると思うなよ!そんな半端な覚悟じゃどこでも失敗するからな!」
「気を引き締めて頑張りまーす。」
「ニック!!ちゃんとマナを監視しておけよ!サボらせるなよ!!」
「マナは口先では不真面目ですが真面目に練習する優等生ですから。ご心配なく。」
「口先も真面目に育てておけ!!」
「ネガティブな言葉はやめさせたいですけどね。すぐに疲れたとかこの作曲家とわかりあえないとか苦手な曲はあからさまにやる気ない演奏をするし…」
「信じられない…そんな不真面目な生徒は育てたことない…」
「うるさーーい!!今回は大成功で終えたんですから!褒めて!褒めて!私は褒められて伸びるタイプです!」
「マナは褒められたら調子に乗るタイプです。」
「いい意味で!いい意味でですよ!!」
「そんな不真面目でよくあそこまで成長出来たな…」
「体は真面目ですから。鬼スパルタ練習にも耐えて頑張っていましたよ。泣き言が多いだけで。」
「褒められて伸ばしたい!褒められたいです!」
「じゃあ遠慮なくスパルタ指導させて貰うよ。」
「はい。マナならやり遂げれます。口うるさいだけですから。」
「音楽で生きていくのって難しいのね…」
「マナ。俺もプロのヴァイオリニストになる決意をしたよ。マナのデビュー公演は本当に素晴らしかった。感動した。」
とエレナードが言う
「ありがとうエレナード。」
「半年後、マナと一緒に音楽を学べる日々が楽しみだよ。」
「何回も心折れて泣いちゃいそうだから慰めてね。」
「俺も…」
「2人で支え合っていこうね。」
「励まし合えばきっと乗り越えられるよ…」
まだ一緒に練習もしていないのに絆が芽生える
カイザー様のスパルタ指導に2人とも戦々恐々している
半年後はおそらく2人で泣きながら練習を終える日々が始まるのだろう…
「俺も一応カイザー師匠に師事する予定だけど…」
とニックが言う
「ニックは優秀だもん。」
「優等生のニックは褒められてばかりだからな。」
「叱られないように練習すればいいのでは…?」
「そんなこと出来るならやってるわよ!ねぇエレナード!!」
「そうだ!そうだ!!」
「俺だけ除け者にするなよ。寂しいだろう?」
「そんなことしてないわよ。3人仲良く成長するわよ!」
「お前ら俺に置いていかれないようにせいぜい頑張れよ!!」
「スカーレット学園を卒業しても忙しない毎日になりそうだな。」
私達は2人に別れを告げて出航した
別れを惜しんでエレナードは最後まで手を振ってくれた
私も見えなくなるまで手を振り続けた
半年後、今以上に厳しい毎日が待っている
甘さを許して貰えず
日々成長させられる毎日が
恐ろしく
とても楽しみだ




