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第277話 対等な関係

俺は毎年恒例のディナーショーを開催した

マナにはVIP席を用意して他のお客と完全に遮断をして、護衛騎士が守っている

マナはVIP対応や、特別扱いを嫌がる人だった

変装をして庶民でいることを楽しんでいた

普通の人間でいることを望んでいた

最近のマナは…特別扱いにされていることに諦めのような感情があるのだろうか

全ての魔法が使えると知られてからは

マナへの神格化は加速して

マナは普通の生活が出来なくなっていた

人と違う能力を持っているだけで

孤立してしまった

人と対等に仲良くしたいと不器用ながらクラスメイトと分け隔てなく仲良くしていたマナが

特別扱いなんて望んでいなかったマナが

孤立してそうせざるを得なくなったのが

悲しかった

でも…本当はマナが庶民と同じ待遇なんて出来るわけがないんだ

前が異質で

今が正常なんだ

世界唯一の奇跡の聖女

VIP対応は当たり前だ

マナは世界の宝なんだから

マナもそう思ったのだろうか

普通の生活はもう厳しいと

全然と対等であることをマナが望んでいても

世界がマナを特別扱いするのだから

普通の生活を送ることを諦めたのだろう

目の前でVIP対応をされているマナを目の当たりにして

マナは…なんでもないように振る舞っているけれど

対等な関係を望んでいたんだ

俺達の関係もこれから先、普通の関係ではいられなくなってくるのかもしれない

でも今はまだ

俺達は普通のクラスメイトで

音楽の師弟関係で

俺達は友人だ

俺の中ではマナは努力家で優しい女の子

マナの対等でいたい

マナが俺の音色が好きだと言うから

俺は自分の音楽に自信をつけることが出来た

マナに恋をしてから

俺の音楽の幅が広がった

楽譜を習うだけの音楽ではなく

感情を込めて弾くことが出来るようになった

どうかマナに届いて欲しい

俺のヴァイオリンで伝えたい

俺達は普通に笑いあえる

普通の学生生活を送っていて

俺達は普通の友人関係だ

失恋した甘い初恋をまだ隠しているけどね

俺は想いを込めて演奏をする

目の前で聴いてくれているマナは満面の笑みで喜んでくれている

こんな毎日を過ごせるなら

俺は最高に幸せだ



ディナーショーが終わり、自室に帰る

「ニック〜!年々腕を上げてるねぇ!楽譜通りでありながら、音に艶が出るようになってきたというか…とにかくすっごいいいディナーショーだったよ!」

マナが興奮気味に俺のディナーショーを褒めてくれる

「ありがとう。毎年恒例になってきたから今回は緊張もほぐれて伸び伸びと演奏が出来たよ。目の前にマナがいたことも影響があったかな。いつも通り、音楽室

で弾く感じで弾くことが出来たよ。」

「3年目のディナーショーは余裕もあって風格もあって…本当に大先輩って感じだったよ!」

「同級生じゃないか。」

「音楽デビューの先輩ってことよ!」

「マナだって人前で弾いたこと何回もあるじゃないか。」

「私はコンクールとか、ストリートピアノと学園祭でしかピアノを演奏したことないもの。私のライブって初めて開催するから緊張するよぉ!」

「無料ライブなんだし、自由にやればいいよ。」

「無料ライブだからこそ色んな人が来るじゃないですか。批評だらけになるかもしれないと今日から不安で…」

「ぶちかますって言ってたくせに。」

「ぶちかますけどさ!受け入れてくれないかも!!」

「初めから全て上手くいく方が変だよ。失敗から始まるものなんだから。やりたいことをやればいいよ。」

「そうだよね…始まる前から失敗を恐れていたらダメだよね!批評なんてされるもんなんだから!気にせず頑張るよ!!」

「俺はマナの1番のファンだからね。明日の無料ライブ楽しみにしてるよ。」



翌日になり、今日はマナの無料ライブだ

豪華客船の客が全員集合出来るようにホールを改造されていた

中央にピアノが置かれていて

360度どこからでもマナの姿を見ることが出来るようになっていた

好奇な目に晒されてこの中央で弾くなんて

プロの演奏家でも嫌だろう

でも…マナらしいデビューライブだ

マナの容姿ではなく

マナの聖女としての能力ではなく

ピアノの演奏で虜にさせよう

マナが姿を見せると割れるような拍手でみんなは出迎える

黒のドレスでマナは現れた

大人しめの容姿にしたのはピアノの音色を聴いて欲しいという願いが込められているのだろう

「マナ…頑張れ…」

俺は柄にもなく独り言を呟いてマナに声援を送る

マナは落ち着いた様子で椅子に座り

そして演奏を始める

幻想即興曲 ショパン

マナらしい音の多彩さをよく表現出来る曲だ

1音奏でるだけで

ここにいる全ての人を虜に出来る

今日のマナはすごかった

思いっきりゾーンに入っていて

マナの魅力が最大限に生かされている

圧巻の幻想即興曲だった

ミーハー気分で来ていた客も全員黙らせて聴かせることが出来る

…凄い

俺には絶対出来ないことだ

でも…やるんだ

凡人なヴァイオリニストではマナの隣にいられない

マナは特別で才能に溢れていて

すぐに雲の上の存在になってしまうけれど

しがみついてもがいてついていく

マナを孤独にさせたりしない

対等なライバルでありたい

凡人ではない特別な何かになれるように

俺もマナのステージに上がれるように

偽物の天才であり続けよう

批評なんて誰も出来ない

文句なしの無料ライブをマナはやり遂げて

大歓声で海が荒れるんじゃないかと思うほど

伝説のライブになった




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