第276話 音楽の旅
今日はニックと共にキッカ国へと出航する
毎年恒例の豪華客船に私達は乗り込んだ
「夏休みに入って3日間の間に怒涛の展開すぎて驚いたよ。」
私はマオが私とクリスがデートにいく現場を見て
私を殺しかけて世界崩壊の危機になったこと
チーノがマオを止めてくれたおかげで世界が救われたこと
その後、私はクリスとデートをして恋人になったこと
マオはチーノと共に生きることを選択して
私と距離を置き
もう2度と世界を崩壊させないと誓って
心臓をスリー様が取って魔王の力を弱体化したこと
全てをニックに話した
「ほんとにね。」
「総括するとスリー様が有能すぎて凄いかな。」
「私の周りの人間が有能すぎて助かりました。」
「じゃあ心置きなく音楽に没頭出来るね。」
「そうだね。マオとクリスのことでずっと悩んでいたことが一段落したから…問題が解決したわけじゃないけどね。」
「今回の旅は素顔で行くんだね。」
「うん。護衛も10人ぐらい増やしてね。私の今の価値は美人の聖女ってだけで…私の音楽なんてみんな興味ないんだから。」
「それなら素顔を隠した方がいいんじゃないか?」
「ミーハー気分で集まった大勢の人を私の音楽で殴ってやろうって思ってさ。初動の反応が1番大事でしょう?今、1番調子いいって思えるほどいいピアノを弾けるからさ。チャンスかなって。」
「じゃあどうして豪華客船のディナーショーの依頼を断ったの?」
「初めては無料ライブがしたくて。」
「…正気か?豪華客船の客全員が集まってパニックになるぞ。」
「豪華客船だからパニックにならずに済むのよ。豪華客船なら客船のお客さんしか来れないし、全員が来てもパニックにならないように護衛騎士も増やして対策はしてる。」
「無料ライブの意図は?」
「もちろんできるだけたくさんの人に私の音楽のファンになって欲しいから。聖女としてじゃなくてピアニストとしての私をたくさんの人に評価して欲しいから。キッカ国に行く客なんて音楽好きしかいないんだから丁度いいでしょう?」
「マナが客船に乗ると知られている。純粋な音楽好きではない人もたくさんいる。マナの過激なファンもいるかもしれない。危険だよ。」
「大丈夫だよ。一般人が300人ぐらい暴れても制圧出来る自信あるよ。」
「暴動にならないように初めから制御した方が…」
「大丈夫。ピアノを弾いてたら黙らせる自信ある。」
「…凄いね。そんなこと言ってみたいよ。」
「ニックの音楽は癒し系だからね。私みたいに暴力的じゃないからなぁ。」
「目の前で眠られてたりするからね。」
「心地いいんだよ。ニックの演奏は美しいからね。」
「でも目の前で爆睡されるとやっぱり落ち込むよ。」
「めちゃくちゃいいことなのに。私もやってみたいよ眠りに誘う美しい音楽をさ。」
「もうすこしお淑やかになれば弾けるようになるんじゃないか?」
「ニックこそもっと悪いことをすれば音楽の幅が広がるんじゃないの?」
「非行を勧めるなんて酷い聖女だな。」
「悪いことが全て悪じゃないからね。必要悪があるからこそ世界は平和になっている。善と悪は正義と悪魔じゃない。私はそう思ってる。」
「醜い感情は性格上持ちにくいからな…マナとクリスが恋人になっても少し悔しいけれど…それだけだし。」
「もっと悪い事しようよ。」
「例えば?」
「私に痴漢してみるとか。おっぱいとか揉んでみる?」
「は!?」
「高揚感と罪悪感でぐちゃぐちゃの感情になれるよ。」
「いや…隣にいる護衛騎士が今にも俺を殺しそうな顔で睨んでいるから…絶対無理。そんなことで死にたくない。」
「レイはちょっと心配症なんだよね。」
「こんな自己犠牲精神が強い人を護衛していたらそりゃそうなるよ。俺の為に簡単に身を売らないでくれ。」
「私の身なんてニックの音楽の幅が広がるならいくらでも売るのに。」
「本当にやめろ!もっと自分を大切にしろ!」
「わかってるよ。」
「信用ならない…」
「まぁまぁ。今日はニックのディナーショー楽しみにしてるよ。」
「ありがとう…。明日、ルナのピアノ無料ライブの予定なのか?」
「そうだよ。」
「楽しみにしているよ。」