第274話 添い寝
私とクリスは乗馬デートを終えて、馬車に乗り魔塔へと帰った
「おかえり。」
心配してくれていたのかミケお爺ちゃんは魔塔の外に出てきており、私達を出迎えてくれた
「ごめん…なさい…マオを…殺そうとして…ごめんなさい…」
私は泣きながらミケお爺ちゃんに謝罪をする
「自分が殺されそうになったくせに何言ってんだバカ。」
ミケお爺ちゃんは私を抱きしめて言う
「…無事でよかった。マナ。」
「うわあああああああああああああああん!!」
私は大声で鼻水を垂らしながら大泣きする
「今日はもう疲れただろう?ゆっくり休みなさい。」
「うん…」
「クリス君。今日はありがとう。」
「いえ。俺は何も出来なかったので…」
「マナを元気にしてくれただろう?この子はこんなに恵まれた才能を持っているくせに、誰よりも悲観的でネガティブで面倒くさい性格をしているんです。今日、クリス君がいなければ1日中泣き続けていたと思います。だから…ありがとう。」
「ありがとうございます。少しでもマナの役に立てたのならよかったです。」
「またいつでも遊びに来てください。」
「はい。」
クリスが帰ろうとするので
「帰っちゃうの?」
と呼び止める
「え…」
「やだ…帰らないで…側にいて…」
「マナ。クリス君が困っているだろう?またいつでも会えるから。」
「そんなのわからないよ!今日マオに殺されるかもしれないもん!!」
「…。」
「やだよ…こわいよ…寂しいよ…側にいてよ…」
「ミケ様、俺はここに泊まっても大丈夫ですよ。」
「…すまない。今日だけお願いしてもいいかな。」
私が我儘を言ったのでクリスも魔塔に泊まってくれることになった
夕飯をクリスと一緒に作り、私達が3人で食事をしていると
「マナ。乗馬デートは楽しかったかい?」
とスリー様が魔塔にやってきた
「スリー様!心配して様子を見に来てくれたの?私は平気だよ!乗馬デートも楽しかった。」
「そう。それはよかった。」
私はスリー様の手に禍々しい物があることに気がつく
「スリー様…それ何ですか?」
「あぁこれ?これはマオ君の心臓だよ。」
「え。」
「今朝、マナを殺そうとしただろう?マオ君も後悔していて魔王の力なんていらないと言ったんだ。だから私が心臓を取り出して弱体化させてあげたんだよ。これでもうマナが殺される心配はなくなった。」
「マオは!マオは無事なの!?」
「魔王が心臓を取り出したぐらいで死なないよ。今はちょっと強いぐらいの人間程の力しかない。」
「私は…マオを傷つけてばかりだな。本当に。」
「マオ君はチーノと喜劇を観に行ったんですよ。とても楽しかったようで…マオ君は言ってましたよ。マナのいない世界は面白いってね。」
「…フフ。そうなんだ。よかった…本当に…よかった…」
私はポロポロと涙を流す
マオが私よりもチーノと過ごす方が面白いと言ったことが
喜びと安堵の気持ちと
寂しさと嫉妬の気持ちがあった
それでも幸せそうにしてくれるならそれでいい
マオが楽しく過ごせる世界がある
私がいない世界で
「この心臓は未知の生物なので、管理はミケ様にお願い致します。」
「事後報告すぎるだろ…スリーがやったことなんだからスリーが管理しろよ。」
「いや…私が管理するとイレギュラーなことが起こるとすぐにマオ君の心臓を握り潰して壊してしまいそうになりますからね。マオ君を大事にしているミケ様が適任かと。」
「…わかったよ。儂が管理する。」
「了承して頂きよかったです。では報告も終わったので私は帰りますね。」
そう言ってスリー様は禍々しいマオの心臓をミケお爺ちゃんに渡してすぐに帰ってしまった
私は夕食を終えてお風呂に入り自室のベッドで寝ようとする
「クリスも一緒に寝よう。」
私はクリスをベッドに誘う
「今日はえっちなことしないって言ったのに!?」
「えっちなことはしないよ。」
「しないの!?」
「添い寝するだけ。」
「添い寝するだけ!?」
「ほら。一緒に寝よう?」
「いや…俺は健全な男の子だから好きな子と一緒に寝たら手が出ちゃうよ!」
「…えっち。」
「俺だけじゃない!全世界の男がそうだ!!」
「えぇ…殺されそうになった恐怖を抱えて1人で寝れないよ。ぎゅーって抱きしめて一緒に寝てくれないと眠れない。」
「抱きしめて寝るの!?」
「うん。お願い。」
「よ…喜んで!!安心して眠るといい!!俺は紳士だから絶対にえっちなことはしない!!」
「えへへ…ありがとう。大好きだよ。クリス。」
私はクリスの胸板に顔を埋めて眠りにつく
大好きな恋人と一緒に寝るのは
とてもドキドキして恥ずかしいけど
嬉しくて幸せで多幸感溢れて心地良かった
疲れていたのもあり、私はすぐに眠りについた
ハァ…ハァ…いい匂いがする
この部屋にマナのいい匂いが充満している
それだけで興奮しているのに
俺の腕の中でマナがすぅすぅと心地よく眠っている
可愛すぎる
こんな無防備で狼の横で眠っちゃって…
キスしたい
だ…ダメだ!!しっかりしろ!俺!
こんなに弱っているマナを元気にさせる為に添い寝しているだけ!!
欲情なんて抱いたらダメだ!!
俺は襲ったりしない!絶対に!
俺は一緒に寝ようと目を瞑る
やっぱりマナの寝顔をもっと見たくて目を開ける
か…可愛い…
可愛いの暴力
このままトキメキで殺されそうだ
ちょっとだけ…ちょっとだけだけ…
俺はマナの額にキスをする
可愛いすぎたので頬にもキスをした
可愛い!可愛い!!可愛すぎる!!
ちょっとだけ…ちょっとだけ…起こさないように…
俺はマナの服の下に手を潜り込ませて
バレないように胸を触ろうとすると
上から護衛騎士のレイが降ってきて
俺の喉元に剣の切先を向ける
「殺す。」
「申し訳ございませんでした!俺の意思が薄弱で欲望だらけで…本当に申し訳ございません!!」
「遺言はそれでいいか?」
「待って!殺さないで!!見逃してください!!健全な男の子が好きな女の子と一緒のベッドに入ったら誰でも我慢できないですよ!!」
「下衆が…マナを汚すな…弱っているマナに欲情を抱いて寝込みを襲うなんて卑劣極まりない。死ね。」
「だっていい匂いするし、柔らかいし、可愛いし!!手を出さない方が失礼というか…!!」
「死ね。」
剣をふりかざし俺を斬ろうとした
「ひぇ!やめてください!ごめんなさいいいいい!」
「うるさいなぁ…静かにしてよね。」
マナがそう寝ぼけて呟くとレイが動きを止めた
「…命拾いしたな。次、マナ様を汚すようなことをすれば左腕を切り落とす。」
「もうしません!申し訳ございませんでした!!」
マナのおかげで命拾いをした
マナと同じベッドに入るのは殺されるから無理なので
俺はソファに座って眠った