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第271話 世界平和

「うおおおおおおおおおお!!すげえ!!漫才師ブラックアンドホワイトの復帰ライブじゃん!!プレミアものだよ!!このチケットスリー様が手に入れてくれたんだろう?神すぎる!!」

僕が喜劇を観たいとスリー様にお願いをしたら、僕とチーノの2人分のチケットを用意してくれた

この喜劇の漫才師はチーノの大ファンのようで大興奮をして喜んでいた

僕とチーノは夜に毎日電話をしている

スリー様がチーノに僕の電話番号を教えてからチーノが毎晩電話してくるので

暇だから僕はチーノの話を毎晩聞いていた

「そんなに面白いの?」

「ブラックアンドホワイトは伝説の漫才師さ!笑いというのは流行によって左右されやすいから、昔の時代の笑いは笑えなかったり、何でこれが面白かったんだ?と思うことが多いんだけど、ブラックアンドホワイトの漫才は別格さ!笑いが劣化しない。どの時代でも爆笑が出来る最高傑作の笑いを作り上げることをモットーにしているんだよ!」

「へぇ…凄いんだね。」

「漫才を語る上でブラックアンドホワイトの存在は外せない!伝説の漫才師さ!ボケ側のトシローが病気で2年間休養していたんだけど…遂に復帰ライブが行われるんだ!!ファン待望の復帰ライブはチケットは即完売で手に入れることが本当に難しいのに…!!スリー様すげえええええ!!」

「そっか…スリー様にチーノがとても喜んでいたと伝えておくよ。」

「お礼に菓子折り用意しないとなぁ〜。魔塔に行けば会えるかな?」

「スリー様は毎日魔塔で働いているから会えると思うよ。」

「じゃあこの喜劇ライブの日は魔塔で待ち合わせをしよう!スリー様に手土産を渡して直接お礼がしたい!」

「いいよ。じゃあ魔塔で会おう。」

僕達は喜劇を見る前にスリー様に会うた為、魔塔で待ち合わせをすることにした

喜劇当日

僕は待ち合わせ場所の魔塔へと向かった

そこで…衝撃的な光景を目にする

マナが…いかにもデートをする格好でクリスと一緒にいた

クリスとマナを纏う雰囲気は恋人同士そのもので

マナがクリスを見つめる目は恋する乙女そのものだった

…僕に遠慮してマナはクリスと距離を取っているとは思っていたけれど

まさかこんなにもマナがクリスにベタ惚れだなんて知らなかった

2人の幸せを邪魔する僕は邪魔者でしかないだろうな

マナだって本当は僕が邪魔だったんだ

優しいから言わなかっただけで

いや…好きな人がいるから付き合えないと断ってはいたけれど

それでも僕が1番だと信じていた

僕が1番愛されていると

必ずマナは僕を選んでくれると

でも…違ったんだね

僕はマナの邪魔者で

初めからマナの目にはクリスしか見えてなかったんだ

あーぁ

マナってばすっかりクリスに騙されて盲目になっちゃって

あれはもう手遅れだな

やり直さないと

マナを殺して

世界を崩壊させて

もう1度この世界を初めからやり直して

今度こそ僕とマナが結ばれる世界に作り直さないと


僕は魔王化してドラゴンの姿に変身する

クリスとマナが繋いでいる手を光線で焼き尽くす

すぐにマナの白魔法で治療されてしまったけれど

マナは聖杯を掲げて祈ると魔法少女のように変身をした

この世界の神様アルテミスの加護を最大限に使えるようになっているようだ

まさかのそんなことが出来るようになっているなんて…少し厄介だな

それでも負ける気はしないけれど

マナはレイの魔力をパワーアップさせながら、僕を白魔法で拘束する

レイの炎のドラゴンの高火力の炎を浴び続けることになった

あっつ…

苦しい…

死ぬことはないだろうけどこの苦しみをずっと受けるのは辛いな

僕が苦しみ悶えていると目の前に白魔法で作った剣を持ったマナが現れた

おそらくドラゴンの弱点が左目であることも判明していて

マナが僕を殺そうとしているのだろう

マナの目には涙が溢れていて

剣を持つ手は震えていた

…馬鹿だな

優しすぎるマナが僕を殺せるわけないのに

マナにしか白魔法で剣を作れないにしても

最後に僕を殺す役はマナにするべきじゃなかったよ

さよならマナ

また次の世界で会おう

僕は口を大きく空けてマナを食い殺そうとすると

「おい!!何やってんだ!!マオ!!」

僕の親友のチーノ声に僕は思わず動きを止める

「俺がマオと喜劇を一緒に観に行くことを楽しみにしていたこと知ってんだろう!?世界崩壊なんてくそだせぇことしてねぇで早く行くぞ!!」

…まずい。本気で怒ってる。

毎晩1時間電話してずっとブラックアンドホワイトの素晴らしさを語って楽しみにしていたのに

今、世界が崩壊すればチーノが楽しみしていた喜劇が見れない

「おい!約束破るつもりかてめぇ!!早く!そんなくだらねぇことしてんじゃねぇよ!行くぞ!!」

…マナを殺すことはいつでも出来る

チーノがあんなに楽しみにしていたんだ

チーノと喜劇を見てからマナを殺そう

僕はドラゴンの姿から人間の姿に変身をしてチーノの元へと行く


僕達は歩いて喜劇が始まる劇場へと向かう

「マオ…お前なんでドラゴンの姿で戦っていたんだ?」

「…マナがクリスとデートしようとしていたから。」

「ハァ!?うわぁ…お前マジで失恋したぐらいで世界崩壊させようとしてたのかよ…ドン引きだわ。」

「僕の世界はマナしかいらない。マナに愛されないこの世界なんていらない。」

「うへぇ…今時メンヘラ男なんて流行らねぇぞ?失恋してメンヘラ化してるのはわかるけどさ…世界崩壊するなよな。」

「世界崩壊しても再生する問題ない。」

「そうなのか?」

「全員の記憶を消してマナが赤子の時からもう1度やり直す。」

「全然ダメじゃねぇかよ…つまりはこの世界は完全に崩壊するんだよな?」

「そうだな。」

「次の世界で俺達は友達になれないかもしれないよ?」

「僕から会いに行って友人になるよ。問題ない。」

「そんな俺はもう俺じゃねーよ。馬鹿野郎。今目の前にいる俺しかお前の親友になれないよ。」

「…。」

よくわからない

どの世界のチーノも変わらないと思うけれど


僕達が喜劇の劇場に到着すると

「あれ?マオ君?」

声を掛けてきたのはクラスメイトのジンジャー・グルーだった

隣にいるのはクラスメイトのラグラン・リバーだ

「どうも…」

「マオ君もブラックアンドホワイトのファンだったの!?意外だなぁ!!」

「いや…僕は付き添いで…一緒に来ているチーノが大ファンなんです。」

「あぁ…なるほどね。マオ君漫才とか興味なさそうだからびっくりして嬉しくて声かけちゃったよ。ごめんね!」

「どうも初めまして!チーノ申します!」

「はじめまして。俺はグルー。」

「はじめまして。リバーです。よろしく。」

「今日はさぁ!マオが失恋してメンヘラ化してるから元気つけてやる為に喜劇に連れてきたんだよ。」

「なっ…」

チーノは堂々と僕のプライベートのデリケートな部分を暴露する

ひどいやつだ…

「うわぁ〜そっかぁ〜!!ドンマイ!ドンマイ!!ナイスファイトすぎるよ!!マナ様は誰にでも優しくてみんな好きになっちゃうけど、本当に高嶺の花だからなぁ〜。男は全員付き合いと思ってるけど、あんな美人で可愛くて優しくて強くて完璧な女性を堕とすなんて難しいよなぁ〜。結構塩対応されながらもマオ君頑張ってたから陰ながら応援してたのに…残念だったけど、逆に今日でよかったじゃねぇか!なんてったって今日はブラックアンドホワイトの復帰ライブ!!何もかも忘れて大笑い出来るぜ!!」

「こんな地に落ちた気持ちなのに笑えるわけないよ。」

「いやいやいや!天下のブラックアンドホワイトを侮ってはいけない!たとえ人生のドン底でも笑わせてくれるさ!!」

「絶対無理だよ…」

「賭けてもいいぜ!絶対ブラックアンドホワイトはマオ君を笑わせるよ!」

「賭けるって何を?世界平和?」

「なんだそれ。そうだなぁ…今日の晩飯!!マオ君が笑ったら俺達全員奢りな!マオ君が笑わなかったら俺がマオ君を奢ってあげるよ!」

「ふーん…まぁいいよ。」

「そのポーカーフェイス帰る頃には崩れ落ちているよ!間違いない!!」

謎の賭けをさせられてなんとなくのってみた

タダでご飯が食べれるようになるのだから別にいいか

大好きなマナと殺し合いをして

世界を崩壊しようとした僕が

この世界に絶望しているのに

笑えるわけないのに


舞台の袖が上がり、ブラックアンドホワイトの漫才が始まった

そこから先は…ブラックアンドホワイトの漫才に夢中になって釘付けだった

初めて腹を抱えて笑った

こんなに面白いものがあるなんて知らなかった

マナのことなんて頭になかった

漫才が面白すぎて

お腹を抱えて涙が出るほど笑った


喜劇が終わってからも余韻に浸っていた

人生で1番笑った

こんなにも面白い世界があったなんて

また見たい

もっとブラックアンドホワイトの漫才を見たい


「いやぁ!!マジで最高!!めっちゃ面白かった!!期待以上だったよ!なぁマオ!!」

チーノが興奮気味になり話をふる

「本当に…最高に面白かった。俺、こんなに笑ったの初めて…」

「俺も初めてブラックアンドホワイトの漫才を見た時、人生で1番笑った!!わかるわー!」

僕達が雑談していると後ろからグルーとリバーが声を掛けてきた

「マオ君!めちゃくちゃ面白かっただろう!?」

「賭けは俺達の勝ちだな!!」

「あぁ…面白かった。僕の完敗さ。晩御飯は奢らせてもらうよ。」

「よっしゃー!!」

「いええええい!タダ肉!タダ肉だぁ!!」

僕達は4人でお肉屋に入る

4人で今日のブラックアンドホワイトの漫才について語り合う

僕も興奮気味でたくさん話した

「おい!マオ〜!今日の失恋した気持ちはどこいったんだよ!めっちゃ楽しそうじゃーーん!!」

「あ…」

僕はそう言われて思い出す

そうだ僕、今日失恋したんだった

すっかり忘れていた

「マナ様も見る目ねぇよなぁ〜!まさかクリス様を選んでいたなんて!」

「絶対本命はニック様だと思ってたよ。俺〜。」

「え?俺はレックス様だと思ってたよ。」

「女って結局俺様系のイケメンが1番いいんだなぁ〜。マオ君みたいに優しい男の方が絶対いいのになぁ!」

「そうだ!そうだ!」

「マナ様もみんなのマナ様じゃなくてクリスの女になっちまうのかぁ〜。ショック〜。」

「ショックって…リバー図々しすぎるだろう!告白も何もしてねぇくせに!」

「うるせぇ!可愛くて目の保養として眺めていた女が人の女になったら嫌だろうが!ショックだよ!俺は!!」

「マオ君みたいに告白出来る男はかっけぇよなぁ…リバーとは違って。」

「うるせぇ!ヘタレで恋なんて出来なくても俺は幸せだ!!マオ君!この世に女なんて必要ない!こうやって友達と馬鹿言って話してる時が1番面白いんだよ!!」

「アハハハ!!女が出来たら掌返しそ〜!」

「当たり前だ!可愛い女と付き合えるならお前らなんて二の次に決まってるだろうが!!」

「クズ男!だからモテないんだよ!」

「そうだ!そうだ!」

「うるせぇ!!」


「プッ…アハハハハハハハハハ!!」

ブラックアンドホワイトの漫才の後で気分が高揚していたせいかもしれない

それでも…こうして友達と腹を抱えて笑えるなんて思っていなかった

ましては今日失恋して世界を滅亡しようとしていたのに

マナの言葉を思い出す

“普通の日常が1番尊いんだ”と

確かにそうだ

大きな幸せも

劇的な出逢いも必要ない

こうして友人と笑い合う日常が

1番面白くて楽しいんだ

僕の世界の中心はマナで

マナがいない世界に意味なんてないと思っていたけど

こんなにも簡単に僕はマナを忘れて笑うことが出来てしまった

マナがいない世界は

案外心地よくて面白かった


僕はちゃっかりと晩御飯を奢らされチーノと別れを告げてリバーとグルーと一緒に談笑をして男子寮へと帰った


「おかえり。喜劇は楽しめたかい?」

僕の扉の前にはスリー様が立っていた

「とても面白かったよ…今朝のことは聞いているんだろう?僕は殺されるのかな?」

スリー様は優しく微笑んで答える

「いいえ。マナがそんなこと望んでいないからね。まぁ少し説教はさせてもらうけど。」

スリー様の説教は…少し怖そうだな

苦笑いをしながら僕はスリー様と自室へと入った





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