第27話 まもなくゲームスタート
時が過ぎるのは早いもので、いよいよスカーレット学園
に入学する一ヶ月前になった。
この国では、貴族の魔力持ちは全員スカーレット学園
に入学する決まりである。
他の学園に入学したかったが、私がアーネルド家の貴族で魔法が使えるという状態では他の学園は入学が出来ないのだ。
スカーレット学園は生徒の自主性を重んじる為、3年間寮生活をする。
使用人を付けずに自分のことは自分でやらなければいけない。
マリオお兄様は一つ上の学年で、先に入学している。
入学後すぐに、風魔法も使えるようになったようだ。雷と風の魔法を使えるのはとても貴重で学園でも有名人である。
妹として自慢なお兄様で鼻高々だ。
学園には攻略対象が五人いる。
この国の王子。ハーバランド・クリス。
バイオリン家。ポーランド・ニック。
公爵家の息子。マグタリア・レックス。
生徒会長。ミラー・フランク。
担任の先生。ラクライン・メイト。
この五人とは接触を絶対にしないように注意しなければいけない。
この五人の誰かが私のことを好きになれば、私はアーネルド・マリアではなく、聖女の体になってしまう。
魂の入れ替えがされてしまうのだ。
私の勝負の三年間がいよいよ始まる。
「やっぱりこっそり侵入して見守った方が…。」
「そんなことしたら獄中生活することになるわよ。国の宝である優秀な人材が揃った学園に不法侵入するなんて…」
レイが物騒なことを言うので、私が止める。
「合法的に侵入すれば問題ないのでは?給食を作る使用人の募集とか。」
マリアが言う。
「そんなに心配しなくても大丈夫だって!絶対攻略対象の五人とは話さないようにするから!それに私は攻略対象達とクラスが違うらしいし。」
攻略対象とクラスが違うことはアルテミスから聞いた。アルテミスはアリサに聖杯を割られた一ヶ月後に復活した。
二代目の聖杯の方が宝石装飾が増えており高級感が増していた。もう壊されたくないからだろうか。
壊されたことには一切触れずに一ヶ月後しれっと部屋に戻っていた。
戻ってきた後、アリサに壊されないか怯えていた。
躊躇いもなく聖杯を割られたことが余程ショックだったのだろう。意外と繊細な神様だ。
聖杯はスカーレット学園に持っていくことにした。学園生活で分からないことがあればアルテミスに聞けば教えて貰えるからだ。
「もし…もしもマリアお嬢様が入れ替わっても俺は絶対マリアお嬢様の護衛騎士ですからね。」
「私もです。私はマリアお嬢様の専属メイドですから。」
「それはやめてね。」
「「」どうしてですか!?」」
二人の声が揃う。
「入れ替わった後は入れ替わったマリアを今以上に大事にしてあげて。私の我儘でこんなことになったの。もしも入れ替わりがあったその時は、アーネルド家で楽しく過ごせるようにしてあげて欲しい。前のマリアがよかったなんて絶対に言わないで。」
「俺はマリアお嬢様だから命を懸けてお守りしてるんです!もしも入れ替わりがあったら絶対についていきますから!」
「私もです!これだけは譲れません!お嬢様!」
「私もだよ。これだけは譲れない。私から最初で最後の命令だよ。貴方達はアーネルド家の優秀な人材なんだから。アーネルド家のマリアに忠誠を誓ってね。何があっても。」
「…。」
二人ともはいとは言わなかったけれど、私の思いは伝わっただろう。
「やだなぁ!もしもの時の話だから!クラスも違うし、三年間何の接触もなく終わるよ!大丈夫だよ。絶対にアーネルド家に帰ってくるから。」
スカーレット学園で過ごしている間は基本寮生活の為、家に帰ることが出来るのは長期休みのみだ。
「夏休みに元気な姿で帰ってくるからさ。そんな悲しい顔しないでよ二人とも。」
「絶対ですよ?絶対帰ってきて下さいね!」
「当たり前じゃん。心配しないで。ちゃんと大人しく過ごすから。私のお家はここだから。」