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第268話 頼れる男に

課外授業が終わり、僕は男子寮へと帰った

「おかえり。マオ君。科学館は楽しかった?」

僕の部屋の前でスリー様が待ち伏せをしていた

「楽しかったけど…大失敗だったよ。」

「それは大変だったね。部屋に入ってもいいかな?ゆっくり話を聞かせて欲しい。」

「はい。どうぞお入りください。」

「ありがとう。失礼するよ。」

スリー様は僕がドラゴンになる前から親身に話を聞いてくれたし

ドラゴンになってからも僕のことを怖がることなく、毎週様子を見にきてくれていた

ただの仕事の一環に過ぎないかもしれないが

それでもずっと側にいてくれる存在というのは心強かった

人間の姿に戻った今でも、僕のことを気にかけてくれている

「大失敗って何があったの?」

「マナを笑わせようと魔物のモノマネをしたら、盛大に滑ってしまったんだ。」

「どうしてそんな一発芸で笑わせようとしたんだ…?」

「クリス様が…犬のモノマネをしてマナを笑わせてたから…」

「あぁ…なるほど。」

「僕は魔物とずっと側で暮らしていたから、魔物野モノマネなら出来ると思ってやってみたら…マナは魔物を知らなかったんだ。当たり前だよね。マナが魔物に会ったのは一度だけ。すぐに浄化されて普通の動物にマナは変えてしまったんだから。」

「どうして笑わせようとしたの?」

「マナが言ったんだよ。私を笑わせてみろって。」

「へぇ。めずらしいね。マナが要望を言うなんて。」

「そうなんだよ。それでクリスはマナを笑わせてることが出来て…僕には出来なかった。完全に完敗さ。」

「諦めたの?」

「まさか。1回失敗したぐらいで諦めないよ。」

「そうだよね。安心した。」

「スリー様は僕の味方なの?」

「私はマナの味方だよ。」

「じゃあクリスとマナがこのまま恋人になることを望んでいるんだ。」

「そんなことはないよ。マナは誰を恋人にするか迷っている。私はマナの決定を応援するだけさ。」

「好きな人はクリスなのに何で迷っているの?僕が世界を破滅させると思っているから?」

「うーん…半分正解かな。」

「もう半分は?」

「マナは王妃になるつもりが全くない。クリスと恋人になるなら…当然王妃候補になる。それが嫌みたいだよ。マナはキッカ国でピアニストとして生きていきたいみたいだからね。」

「マナはクリスもキッカ国に連れて行くみたいなことを言ってたよ。」

「本音ではそうだとしても現実的じゃない。クリスはこの国唯一の王家の正当継承者だ。そんな簡単にこの国の王政を投げ出していけないよ。それはマナだってよくわかってる。」

「つまり僕にもチャンスがあるってことだ。」

「私はニックを選ぶつもりだと思ってるよ。」

「え!?な…なんで!?」

「マナの好きな人はクリスだ。でも…感情的に行動することをマナは嫌っている。マナに惚れて感情的に衝動的に行動した人間が人生が終わったところをたくさん見てきたからだろう。」

「でもどうしてニックなんだ?」

「ニックとならキッカ国で一緒に暮らしていけるだろう?」

「そんな理由で?」

「マナは合理的な人だから。」

「マナはスリー様が1番いいんじゃないの?」

「私はマナと釣り合わないよ。」

「そんなもの愛があればなんとかなるんじゃないの?」

「愛があればね。マナが私に抱いてあるのは恋心じゃない。マナが恋をしているのはクリスただ1人だよ。」

「マナのこと大好きなくせに…どうしてマナの恋人にはならないの?いくらでもスリー様はチャンスがあったのに。今もスリー様が付き合おうと言えばマナは喜んで恋人になると思うけど。」

「マナのことは大好きさ。でも…恋人になる気はないよ。だってマナの恋人なんて貧乏くじだよ。この世界の明暗を背負わないといけないし、マオ君と戦わないといけないからね。そんな大役私には無理だよ。」

「そんなのは些細なことだよ。マナの恋人という最上位のご褒美を貰えるなら。スリー様が羨ましい。」

「マナの恋人は最上位なわけない。マナにとって恋人という存在価値はとても低い。マナが最上位に大事に

しているのは家族さ。私はマオ君こそもったいないことしたなぁと思っているよ。あのままマナの弟でいられたら世界で1番大事に可愛がって貰えていただろうに。もったいない。」

「大事にされなくても、苦しくてもマナの恋人になりたいよ。」

「マナは恋人を1番雑に扱うよ?」

「いいんだ。雑に扱われたいんだ。マナの我儘を聞ける男でありたいから。」

「フッ。かっこいいね。マオ君。」

「まだ口だけさ。僕はマナを笑わせることもまだ出来ないポンコツだから。スリー様、人を笑わせる方法ってある?」

「人を笑わせることは1番技術的に難しいと言われているからね。生憎、私はユーモアセンスが壊滅的にないから力にはなれないよ。ごめんね。」

「ユーモアセンスってどうやって身につけるの?」

「うーん…喜劇でも観に行って勉強してみる?」

「いいね。人間を笑わせる方法を学ぼう。」

「チーノがマオ君に会いたがっていたから…チーノと2人で喜劇を観に行けばいいよ。チケットは私が用意してあげよう。」

「スリー様は行かないの?」

「私は忙しいからね。」

「何で忙しいの?」

「それはもちろんこの世界の平穏を願っているからだよ。僕は魔法石で白魔法を使えるようになったんだよ。まだ擦り傷を治すぐらいしか出来ないけれどね。」

「…へぇ。知らなかった。すごいね。」

「マオ君は人間の姿になればこの世界の情勢を見ることが出来なくなるからね。知らなかっただろう?もしもマオ君が暴走さても止められるように努力しているんだ。」

「そんな付け焼き刃で僕の暴走が止まるわけないじゃん。」

「今の状態ならね。これからもっと修行をすれば出来るようになるよ。私達もマオ君を殺したくはないからね。」

「…僕を殺す?そんなことマナがするわけない。僕が暴走したその時は、この世界は崩壊してリセットされる。またマナが生まれるところから世界は再生されるのさ。」

「私はマナからマオ君が世界を崩壊しようとすれば、殺していいと命令されているよ。」

「…冗談だろう?」

「本当さ。」

「マナは僕よりクリスがいいのか?僕のことなんてどうでもいいのか?」

「いや…クリスは関係ないよ。」

「は?じゃあなんで…」

「妹が生まれたらしいよ。もうすぐ1歳になるかな?」

「…。」

「尊い命は絶対に守るんだってさ。マナらしいと思わないか?マナにとって家族は最上位の存在だからね。」

「そう…じゃあマナの頼れる男になって恋人になるしかこの世界は救われないから。がんばるね。」

「応援しているよ。」

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