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第266話 失敗

マナはよく僕に言っていた

“マオがいなかったら私はアーネルド・マリアとして死ぬことを選んでいた”

“エラート・マナとして生きていけるようになったのはマオのおかげ”

“マオがいるから私は生きてこれた”

“私達は運命共同体”


マナはそう言うけれど

僕がマナに与えたものなんてほとんどなくて

僕は出会ってから今までマナから幸せを貰ってばかりだ

人を殺すことしか出来なかった僕を

救ってくれたのはマナだ

人として生きて

愛を与えてくれたのはマナだ

溢れるばかりの愛と幸せを貰って

僕は何を返せただろうか



紙飛行機の体験は終了した

マナとクリスが目の前で紙飛行機の交換なんかして幸せそうにしている姿なんか見せつけられて

敗北感しかなかった

マナがクリスが好きなことなんて知ってるし

マナが俺に気を遣って目の前でクリスと仲良くしないことだって気づいていた

でも今日はマナも郊外学習で浮かれていたのか

僕のことなんて眼中になく

目の前で堂々とイチャイチャとしている

クリスには僕がマナを笑わせることも出来ない雑魚だと煽られて

悔しい

悔しいのは図星だからだ

クリスはマナの為にすぐに尽くして行動出来たのに

僕はどうしたらいいかわからなくて固まることしか出来なかった

悔しい

こんなことで負けていたらマナが振り向いてくれるわけない

マナに幸せを与えて貰ってばかりの僕では

マナに幸せを与えているクリスに勝てるわけがない

負けられない

負けたくない


「次どこに行く?」

とマナが言う

「ここはでかいシャボン玉に入ることが出来るらしいよ。」

とクリスが言う

「へぇ〜。この世界は魔法が使えるから科学力はあまり発展してないからねぇ。シャボン玉も珍しいね。」

「魔法で作ることは難しいからね。」

「行こうか。」

そうして俺達はシャボン玉に入るエリアへと移動した

シャボン玉に入るだけではなく、その後風魔法で飛ぶことも出来るようだ

マナが初めにシャボン玉に入り飛ぶ

「わあああああああ!凄い!!これぞファンタジーの世界!!」

マナは楽しそうにはしゃいでいる

最近ほあまり元気がなかったので

今日はとても楽しそうにしてくれてよかった

僕とクリスもシャボン玉に入り飛ぶ

シャボン玉に入って飛ぶ時間は3分ほどで終わるようだ

「シャボン玉が割れずに飛べるなんて不思議だね。」

「降りるときは割れるみたい。ちょっとドキドキするね。」

「マナこわいの?」

「ちょっとだけ。」

「僕が先にシャボン玉から降りるよ。マナは僕が抱えてあげるから安心して。」

「何言ってんだ!マナは俺が守るから!」

「んー…じゃあマオにお願いしようかな。」

僕でいいの?

クリスじゃなくて?

どうして僕を選んでくれたのかはわからない

僕は先にシャボン玉を割り、下に降りる

マナのシャボン玉がパチンと割れて

僕の元へとマナが降りてくる

手を伸ばし、抱き抱えたマナは

とても小さく軽かった

1年前まで、僕の方が体が小さかったから

こんな風にマナを抱えたのは初めてだった

ベッドで一緒に寝ていた頃は

優しく僕を包みこむように抱いて寝てくれていたから

とても大きく感じていたのに

今のマナは儚くすぐに壊れてしまいそうだ

「ありがとう。マオ。」

花のように儚げに可愛く微笑むマナに僕は何度も心を奪われる

「おい!いつまで抱えている!早く降ろせ!!」

クリスが僕からマナを引き離す

クリスは張り合うようにそのままマナを抱き抱える

「何すんの!降ろしてよ!」

「なんでマオはよくて俺はダメなんだ!」

「恥ずかしいからに決まってるでしょう!?」

「浮気だ!浮気!!」

「うるさい!早く降ろして!」

マナは顔を真っ赤にして照れている

僕に抱き抱えられた時はそんなことなかったのに

好きな人に抱かれるのは恥ずかしいから

僕が選ばれただけだったなんて

辛い

マナを幸せに出来るのは

僕じゃなくてクリスなのしれないと

そう思ってしまう

それでも負けたくない

まだ諦められない

マナを好きな気持ちだけは絶対に負けない


「魔王の森に住む魔物のモノマネをします!!」

僕は2人がいちゃついてる時に高らかに宣言する

2人は驚いて動きを止めて僕を見た


「ヴゥゥゥゥゥバァゥゥバァゥゥゥゥ!!!」


暫く静寂の時が流れる


「知らない魔物だったからわからなかった。ごめんね?」

とマナがフォローしてくれた

穴があったら入りたい

全身が発熱しそうなほど恥ずかしい

笑わせることも出来ず

笑われることすら出来ず

好きな女の子に気を遣わせてしまっただけという

最悪な結果になってしまった

まだまだクリスには敵わないけど

マナの為に一歩踏み出せたことを

まずは自分で褒めてあげよう

失敗することが悪いんじゃない

失敗した後に諦めるのが悪いんだと

努力することが大事なんだと

教えてくれたのはマナだから








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