第265話 科学博物館
3年生になり、1か月が経った
マナはマオがとても大事な存在らしい
言葉ではマオを突き放すようなことを言うけれど
マナの1つ1つの行動がマオへの愛おしさを感じる
マオが授業でわからないことがあれば
丁寧に教えてあげていたり
クラスメイトから嫌味を言われた時なんて
激怒してマオを庇っていた
“この世で1番大事な人だから”
マナはマオのことをそう言う
過保護じゃないか?と思うほど
大事に大事に守っている
それでも恋人になるのはダメだよと言うマナは
1番残酷なことをしているのではないかと思ってしまう
だからといってマナを譲ることなんて絶対にしないけれど
この世界を人質にされたって
俺は絶対にマナだけは譲れない
校外学習が始まる
今年は科学博物館へいく
1年生の時も、2年生の時もマナと同じ班になることはなかったけれど
今年は同じ班になれた
俺とマナとマオの3人班だ
初めてマナと一緒に行動出来ることが嬉しい
今日はいよいよ待ちに待った校外学習の日だ
「マナ。どこに行く?」
「うーん…じゃあこの遠くまで飛ばせる紙飛行機の作り方の体験にでも行こうかな。」
「いいよ!」
俺達3人は紙飛行機作り体験へと向かった
係の人から説明を受けて俺は紙飛行機を折る
「難しい…折り紙なんて初めてだから…」
とマオが言う
「私も苦手なの。難しいよね。初めてだから上手に出来なくて当たり前だよ。」
「こんなことも出来ないなんてかっこわるい…」
「そんなことないよ。初めてだから失敗なんて当たり前なんだから。出来ないことがかっこわるいんじゃないよ。出来ない時に頑張れない人がかっこわるいの。」
「でも…好きな人の前で失敗するのは恥ずかしいよ。」
「フフッ。気にしないでいいのに。私はどんなマオだって大好きだから。」
マオとマナは係の人から説明を受けているのにも関わらず、出来上がった紙飛行機はぐちゃぐちゃだった
俺だけ説明通りに綺麗に折ることが出来た
「クリスは上手に折れたね。すごい。」
「説明通りに折るだけだよ。何故出来ないのか理解出来ない。どうして出来ないの?」
「紙飛行機が綺麗に折れるだけで偉そうにしないでよね。ほら、わかる?マオ。上手に折れたって性格が悪ければかっこわるいのよ。」
「うん。よくわかったよ。マナ。」
何故かマナに嫌われてしまった
上手に折れることは失敗だったようだ
2人が仲良くする空間に入りにくい雰囲気がある
聖女と魔王という2人の間には
俺には理解出来ない絆があるのだろう
最後に俺達は出来上がった紙飛行機を飛ばす
俺の紙飛行機は綺麗に飛びお手本通りに遠くまで飛ばすことが出来た
しかし…何故かぐちゃぐちゃだったマナの紙飛行機は驚くほど綺麗に飛び俺の紙飛行機よりも遠くへ飛んだ
「やったー!すごーい!!めっちゃ遠くまで飛んだ!!」
マナがはしゃいでいる
死ぬほど可愛い
「すごいね。おめでとう。マナ。」
「えへへ。この紙飛行機あげる。」
「え!いいのか?」
「うん。だからクリスの紙飛行機ちょうだい。」
「もちろんだよ!」
俺はマナが折った紙飛行機を貰った
マナからプレゼントされることは初めてで
俺は舞い上がっている
この紙飛行機は家宝にしよう
マナがトイレに行っている間にマオに話しかけられる
「どうしてマナはクリスに紙飛行機をあげたんだろうね。」
「さあ?今日の思い出にじゃないか?修学旅行のお土産の時、マナは思い出を買うって言ってたからな。」
「そう。じゃあマナはクリスとの思い出は欲しいけれど、僕との思い出はいらないんだね。」
「そうだな。さっさとマナのことは諦めろよ。マナは俺に夢中で、俺に恋しているんだから。」
「…マナは入れ替わっても絶対にクリスは見つけてくれるから好きだって言ってた。そんなの僕にだって出来るのに。僕だってマナがどんな姿になっても見つける自信があるよ。」
「そんなことをマナが言ってたのか?フフッ。愛の力があればマナの入れ替わりなんてすぐにわかるからな!!」
「マナが笑わせろって言った時に、犬のモノマネをしていたよな。あんなことして恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしい?そんなことで恥ずかしくならないよ。あの日は珍しくマナが俺にやって欲しいことを言ってくれたからな。難しかったけれど、笑わせることが出来てよかったよ。正確には笑われただけだけど。俺はマナに与えて貰ってばかりだから。幸せを。毎日貰ってばかりだから。俺からマナへ与えられるものはなんでもしてあげたい。マナがもっと俺におねだりしてくれたらいいのに。マナが望むことを叶えてあげたい。」
「…僕もマナから与えられてばかりだな。僕からマナに何かしてあげれたことって何もないかも。」
「ハハハッ!はい俺の勝ちー!!悔しかったらマナを笑わせろよ!!恥ずかしくて犬のモノマネも出来ない雑魚に俺は絶対に負けねぇからな!!」