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第264話 悪役令嬢

皆様お久しぶりです。フォルト・ローズと申します。

私達は3年生になり、1週間が過ぎました

変わったことといえば転入生が入ってきたことです

マオという名の平民

全ての魔法が使える平民として特例として転入生してきた

どうやらこのマオという男もこの世界の攻略対象らしく、マナに御執心だ

クリスとマオの猛アタックをマナは毎日受けている

日に日にマナは疲労が溜まっているようで

助けに行こうとしたが

“いいよ。ほっとけ。マナは選ばないといけないんだ。あと1年しか猶予がない。ここで手助けするのは簡単だが、問題を先延ばしにするだけだ。”

と婚約者のアーネルド・マリオ様にそう言われて止められた

マナはマオに全ての魔法が使えると暴露されてから

一気に孤立した

圧倒的な力を持ち

凡人と違う存在というのは

畏怖の気持ちが湧くようで

クラスの生徒達とマナの間には壁を感じるようになった

全ての魔法が使えるようになったぐらいで

マナの性格が変わるわけじゃないのに

人というのは残酷だ

孤立していくマナの姿は

前世の佐々木華を連想させる

高嶺の花の佐々木華

誰とも馴れ合うことなく

全て人間と壁を作る

孤高の存在

芸能人よりもオーラがあり

誰よりも美しい存在

佐々木華の黙っている姿こそ

アンティークのような芸術品のようだった

エラート・マナは…これからどうするのだろうか

佐々木華の時のように心は弱くないはずだ

いいことはいいと

嫌なことは嫌と

はっきりと言える強さを持っているはずだ

大丈夫

信じて待とう

マナの選んだ運命がきっと

この世界に平和をもたらすはずだから


「私に話しかけるな。」

遂にマナがキレた

まずい

このままでは佐々木華のように

全ての人間に心を閉ざしてしまうかもしれない

私はマナに声を掛けようとしたが

“待って。まだダメ。甘やかすな。”

とまたしてもマリオ様に止められる

本当に…大丈夫なのだろうか

孤立していくマナに

助けてくれる友人なんていない

苦しんでいるマナを見守ることが本当に正解なのだろうか


休日が終わり、月曜日になり登校する

話しかけるなという命令が解かれてマオもクリスもマナにべったりだ

「マナ。休日はいつも通り魔法の特訓をしていたのか?全ての魔法が使えるようになったのに今は何の訓練をしているんだい?」

「クリス。全部の魔法が使えるようになっても学ぶことはたくさんあるんだよ。そんなことも知らないのかい?王家の魔法教育なんてたかがしれているね。」

「疑問に思ったから聞いたまでだよ。それに俺はこの国を守れるように厳しい特訓を受けてきた。心配には及ばないよ。」

「厳しい特訓ね…ミケ様の特訓に比べたら雲泥の差だろうね。マナとクリスの戦略の差が雲泥の差だからね。今、クリスが魔王と戦っても一瞬で塵になるよ。マナと肩を並べて戦うことも出来ない。ただの足手纏いさ。」

「1人で魔王に勝てる人なんていないよ。」

「ハハハ!何を言っているんだい?目の前にいるじゃないか!たった1人で魔王を倒した英雄が。」

「…まだ倒せていないだろう?」

「倒したさ。でも…魔王が復活するかもしれない。魔王が復活した時、真っ先に塵になるのはクリスだろうね。何も抵抗出来ない無力なクリスは一瞬で死に絶えるだろうね。アハハハ!!」


「ねぇ。つまんない。」

マナが唐突にマオとクリスに言い放す

2人は呆気に取られてぽかんとしていた

「2人の言い争いなんて聞いてもつまらない。面白くない。楽しくない。」

「ごめんね?マナ。楽しい話を…」


「2人で漫才してよ。」

「え?漫才?」

「何それ…?」

クリスとマオは戸惑いながら答える

「あー…漫才じゃわからないか。とにかく私を笑わせてよ。」

「笑わせる…?」

「ど…どうやって?」

「それは2人で考えてよ。つまらない言い争いを見せられて気分は最悪なの。早く。私を楽しませて笑わせてよ。」

「…。」

「…。」

クリスもマオ君も困って固まってしまった

無理もない

いきなり笑わせろなんて言われたら誰だって戸惑う

「何よ。2人共固まっちゃって。私のこと好きなら私に惚れさせたいならこれぐらいできるでしょう?ほら。早く。やってみせてよ。」

傍若無人

ひどい無茶ぶりだ

美貌も権力も金も力も全てを手に入れている女は何をしてもいいのだろうか


暫く沈黙が続いた後


「ハーバランド・クリス!!犬のモノマネをします!!」

唐突にクリスが高らかに叫んで

宣言する

「バウ!!バウワウ!!バウワウワウ!!!」

クリスは渾身の犬のモノマネを披露するが

正直言って全く似ていなかった

ハーバランド国の王子様がマナを笑わせる為だけに

必死にモノマネをする姿は

マナに出会う前のクリスではありえないだろう

今のクリスは好きな女に好かれたくて必死に頑張る健気で幼気な青年だ


「プッ…アハハハハハハハハハ!!」

マナは今まで見たことない笑顔で大声で笑う

お腹を抱えて涙が出るほど大笑いしていた

「バウワウ!!バウワウ!!」

「アハハハハハハハハハハハ!!」

クリスはマナが笑ってくれたことが嬉しかったようで

犬のモノマネを何度も繰り返している

マナはその姿を気に入ったのかずっと笑っていた

ひとしきり笑った後にマナは言う

「あー!お腹痛い!めっちゃ笑った!!でもモノマネは全く似てなかったから失格ね。今のは笑わせたんじゃなくて、笑われたのよ。下手すぎてね。もっと芸を磨いてリベンジしなさい。」

「どっちも笑うならどっちでもいいんじゃないか?」

「全然違うわよ。ユーモアある面白い人が好きだなぁ〜。私の為に楽しませてくれる人になってほしいなぁ〜。」

私を笑わせろと言う傲慢なその姿は

まるで悪役令嬢のようだった






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