第253話 ありったけの勇気を貴方に
クリスを男子寮に送りと届け私は魔塔へと水龍に乗って帰った
「ただいま。ミケお爺ちゃん。」
「おかえり。マナ。今日は遅かったな。」
「バレンタインだからね。お世話になっている人達にチョコレートを渡していたら遅くなっちゃった。」
「ルナはイベントに参加するのが好きだな…」
「もちろんミケお爺ちゃんにもチョコレートを用意してるからね!」
「それはどうもありがとう。」
「2年も一緒に住んでいると素直になってきたね。」
「怒ることに疲れただけだ。」
「ええ?魔法の修行中はめちゃくちゃ怒ってるよ?」
「日常生活も怒っていたら儂の頭の血管が切れるからな。」
「どうです?私と2年間一緒に住んでみて愛着湧いてきたんじゃないですか?」
「馬鹿言うな。愛着なんて初日から湧いている。マナもマオも儂の大事な弟子だ。」
「…えへへ。私、本当にここに来てよかったな。スノーには感謝しないとね。」
「スノーは面倒事を押し付けだけだよ。」
「いやいや。スノーには先見の目があったんだよ。」
「どうだか…」
「だって…私達のことを大事にしてくれてるでしょう?たぶんミケお爺ちゃん以外の人なら門前払いだったよ。」
「マナ…儂はマオを救いたい。たとえ世界が滅び、やり直すことになっても。」
「心配しないでミケお爺ちゃん。私は人類最強の聖女。私が全員救ってみせる。」
部屋に帰ろうと魔塔の階段を上がっていると
「マナ。」
と呼び止められたので振り返る
「あれ?スリー様じゃないですか。こんな夜遅くまで仕事してたんですか?」
「いや。一応報告しようと思って残っていたんだ。」
「報告?」
「マナから頼まれていたチョコはマオ君にちゃんと届けたよ。」
「え!そんなことを報告する為に待っててくれたの?いつでもよかったのに。ありがとう。スリー様。」
「フフッ。これは口実かな。今日はバレンタインだからね。マナから直接チョコを貰いたかっただけさ。」
「私に会う為に残ってくれたってこと?」
「そうだね。」
「えへへ…プライベートで会おうとしてくれるなんて嬉しい。いつか仕事よりも私のことを見てくれたらいいのになぁ。」
「何言ってるんだ?マナを守る為に仕事をしているだけだよ。私の優先順位はマナが常に1位だよ。」
「それならもっと遊んでくれてもいいのに。」
「今はそんな暇ないだろう?マナだって魔法の修行に専念しているじゃないか。」
「それもそうか…ねぇ。マオはチョコレート喜んでくれた?」
「うーん…みんなと同じチョコレートだから少し不満気だったかも。」
「え。」
「マオ君はマナの1番にどうしてもなりたいみたいだならね。」
「そっか…」
「あと2ヶ月ぐらいで予定通りマオ君は入学出来そうだよ。」
「私がまた浄化しないと人間には戻れないんじゃないの?」
「いや。マナが浄化しなくてもマオは人間になれるよ。」
「え!?そうなの?」
「正しくは…人間の姿に変身出来ると言った方がいいのかな?前のようにマナが浄化して人間化するのではなく、人間の姿をした魔王ってことさ。」
「そっか…」
「会うのがこわい?」
「怖くないと言えば嘘になる。でも…やっぱり早く会いたいよ。」
「マナがどんな選択をしても、私はマナの味方になる。」
「ありがとう。スリー様。」
私はチョコレート渡す
「いつもありがとうの気持ちを込めて。ハッピーバレンタインスリー様。」
「ありがとうマナ。愛を平等に。マナらしいチョコレートだね。」
「愛情に優劣をつけるべきじゃない。争いが生まれるから。」
「それでも…好きになった人がいるんだろう?」
「本当に…なんで好きになっちゃったかな…」
「いいんだよ。恋をするなんて年頃の女の子なら当たり前なんだから。今までが達観しすぎてたんだよ。恋をしてやっとマナは年頃の女の子らしく幸せになれるよ。」
「想像出来ないなそんな未来。」
「そう?私は目に浮かぶけどね。マナが幸せそうに恋をして笑う姿が。」
「夢見過ぎじゃない?」
「夢を抱くから人は強くなるんだよ。」
「…そうだね。まだ何も起こってないんだもん。夢を抱いて行動するべきなのかもね。」
「ありったけの勇気を貴方に。」
微笑んでスリー様は私に言う
その言葉はいつか私がスリー様に言った
勇気が出るおまじないの言葉
「ありがとう。スリー様。自分を信じて進むよ。」