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第251話 友人

オーケストラ部の部活も終わり、生徒達はみんな寮に帰る

私もいつもは魔塔へと帰るが、今日はバレンタインデー。久しぶりに私の恩人へ会いに行きチョコレートを渡そうと女子寮へと向かう

コンコンと懐かしい扉をノックする

「…マナ?」

「久しぶり!マリアちゃん!」

私の入れ替わりの恩人アーネルド・マリアちゃん

「本当に久しぶりね。私のことなんて忘れちゃったと思っちゃった。」

「そんなわけないじゃん!いじわる言わないでよ〜。私だって恋愛しなくちゃいけない運命を背負ってなかったらもっともっっっとマリアちゃんとたくさん遊びたいんだからね!」

「フフフッ。こんな世界にした神様は本当にポンコツで無能ね。マナちゃんに命運を賭けるなんて責任重大なことさせるなんて本当にマナちゃんが好きなのかしらあの神様は。」

「好きだとは思うけど…やっぱりどこか私達とズレてるよね。感覚が。失敗しちゃえば世界崩壊してやり直そ〜なんてゲーム感覚で言っちゃうからね。」

「神じゃなくて悪魔よね。」

「たしかに。アハハ!!」

「どうぞ。入って。」

「お邪魔しまーす!」

私はかつて自分の部屋だった場所に入る

お邪魔しますと入るのはなんだか不思議な感覚だ

部屋は私の時とあまり変わっていない

私の私物はそのまま残っており

マリアちゃんの私物が少し増えている

「ハッピーバレンタイン!」

と言って私は手作りのチョコレートを渡す

「私からもハッピーバレンタイン。マナちゃん。」

「え!うそ!私にチョコレート!!」

「手作りだよ。」

「わぁ!さすがマリアちゃん!」

「マナみたいに上手く出来ないけどね。」

「そんなことないよ!すっごく美味しそうに出来てる!ありがとう〜!」

「マリアちゃんはどう?楽しい学園生活送れてる?」

「とても平和よ。」

「そうなんだ!よかった〜。」

「そうね…不満があるとすればマナちゃんとほとんど会えなくて寂しいことぐらいかしら。ここまで関わりがないなんて…自分がモブ令嬢なのだと実感しちゃうわね。」

「せめて同じクラスならよかったのにね。違うクラスだし、部活も違うし…会える機会も少ないからね。」

「来年は生徒会に立候補でもしようかしら。昼休みは生徒会の仕事をしているのでしょう?」

「え!いいじゃん!やろうよ!一緒に!!」

「会長はクリスだから立候補するなら副会長だけど…クリスと一緒に仕事するのは苦痛ね。」

「話せば案外いい人だよ!仲良くなれると思う!」

「マナちゃん。わかってないわね。私は仲良くするつもりなんてないわ。クリスはマナちゃんを穢そうとした野獣だという事実だけで一生許さない罪があるから。」

「ちょっと強引な所はあるけど…話せばわかってくれるから大丈夫だよ!」

「今日はマナに無理矢理キスして牢屋に入れられたって聞いたけど。」

「まぁ…時々暴走しちゃうだけで…」

「ケダモノ。マナちゃんにそんなことするなんて信じられない。気持ち悪い。一生牢屋から出てきて欲しくない。」

マリアちゃんのクリス嫌いに拍車がかかってしまっている

私と会えない時間が余計に憎しみを増してしまっていたようだ

私がクリスのこと好きなったなんて言ったら

マリアちゃんは絶対に反対するだろうな…

「今回は私が誘惑したのが悪いとローズ様も言ってたし…」

「は?優しいマナちゃんに勘違いして暴走しただけでしょう?ローズの言うことなんて聞かなくていいから。」

「そ…そうかな?」

「そうよ。気にしないで。マナちゃんは悪くない。」

「えへへ…それならよかった。」

こうして甘やかされるのは久しぶりで気分がいい

私の周りで私に甘い人間はレイぐらいしかいないからな…

「私が副会長になってクリスとマナちゃんの仲を引き裂いてあげるから!安心してね!」

「うーん…みんな仲良く生徒会の仕事をしたいんだけどな…」

「仲良くする必要なんてない。仕事が出来ればいいんだから。」

「人間関係が拗れていたら仕事もやりにくいよ…」

「人間関係なんて…私とマナちゃんだけで十分なのに。」

「…え?」

「冗談よ。今日はわざわざ来てくれてありがとう。夜遅くなるからそろそろ帰りなさい。」

「うん。マリアちゃん。ありがとう!」

私は別れを告げてマリアちゃんの部屋を出た


学園から出る前に私は叫ぶ

「おーい!シガーレッド・アレクサンダー!!」

木陰からシガーレッド・アレクサンダーが出てくる

「こんばんは。マナ。」

「こんばんは。シガーレッド・アレクサンダー。今日もお仕事のストーカーお疲れ様!はい!チョコレートだよ!」

「俺のような脇役までわざわざありがとうございます。」

「何を言っているの?シガーレッド・アレクサンダーは脇役なんかじゃないよ。人生の主役はいつだって自分なんだから。それにシガーレッド・アレクサンダーは私の数少ない友達だからね。だからチョコレートをあげたかったんだよ。」

「それでもこの世界の主役は間違いなくマナだよ。マナの友達になれたのなら脇役から友人ポジションまで俺の地位は格上げされたということかな。嬉しいよ。ありがとう。」

「格上げとか変なこと気にするね。脇役だって主役だって関係ない。シガーレッド・アレクサンダーは私の大事な友人だよ。」

「ストーカー相手にそんなに心を許して大丈夫なのかな?俺はエド様の下僕であり、エド様が王家の肩入れをしている状況では俺達は敵対関係とも言えるのに。」

「え?シガーレッド・アレクサンダーは私の味方でひょう?だって黙っててくれてるじゃん。私がクリスが好きだって。」

「…俺は公平にしているだけさ。誰の味方でもない。エド様にもマナにも平等に。それがこの世界を救う為に必要なことだと信じているからね。」

「かっこいいね。」

「どこがですか?」

「自分の意見を持っていることが。何にも流されずに平等に物事を判断出来ることが。」

「こんなことは普通ですよ。」

「そんなことない。私には出来ないこと。自分で決断することは怖くて。周りに流されてばかり私とは違う。自分が普通に出来ることは案外他の人は難しいことだったりするんだよ。」

「そういうものでしょうか。」

「うん。シガーレッド・アレクサンダーの特別な才能だよ。」

「…アハハ。俺は…特別な人間になりたかったんだ。マナにそう言って貰えると…自信がついたよ。ありがとう。俺は誰に対しても平等に。物事を判断しよう。これは俺の特別な才能だから。」

「少し私の方へ味方してくれると有り難いんだけど。」

シガーレッド・アレクサンダーは堂々とした立ち振る舞いで答える

「お断りします。何事にも平等に。いくら友人の頼みでも聞けませんね。」

少しイタズラっぽく笑うその姿に

私も思わず笑みを溢した

「残念。」

「これから王城へ行くのでしょう?」

「うん。クリスを解放してもらわなくちゃね。」

「聖女様はお忙しいですね。」

「忙しくて大変なのにみんなわかってくれないんだから。聖女様みたいになりたーいって言われるけどさ。裏の努力とかぜーんぜん見てくれないんだもん。表向きのチヤホヤされてる姿だけ見てさ。本当に嫌になっちゃう。」

「俺はちゃんと見てますよ。マナの活躍は失敗から成功までね。聖女になりたいなんてとてもおもえないですね。いつもご苦労様です。」

「ありがとう。…ちゃんとやり遂げるから見守っててね。シガーレッド・アレクサンダー。」

「はい。それが俺の仕事ですから。」




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