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第250話 二面性

放課後になり、私は音楽室へと向かう

「みんな!ハッピーバレンタイン!!」

私はオーケストラ部員全員に手作りチョコレートを配る

この世界のバレンタインデーは告白をしてカップルが誕生するという王道な文化が根付いており

私のようにお世話になった人にチョコレートを渡す文化ではない

前世ではバレンタインに告白する文化が珍しく、バレンタインデーは職場や友達に配るものだったから

私がたくさんの人にチョコレートをあげることを予告していたので

有象無象にチョコレートをばら撒く変な女として見られているらしい

「こんなにたくさんチョコレートを作るのは大変だっただろう?ありがとう。マナ。」

たくさん用意していても1つずつ愛情や感謝を込めて作っているし、渡している

その気持ちを汲んでくれているのかニックは感謝を込めてお礼を言ってくれた

優しい人だ

「一気にいっぱい作ることはみんなが想像しているよりそこまで大変じゃないんだよ。1つずつラッピングする方が大変だったかな。」

「ご丁寧に1つずつメッセージまで添えてあるし、意外とまめなんだね。」

「まめなんかじゃないよ。普段はね。年1回ぐらいはちゃんとしようと思って。1人1人に感謝を伝える機会なんてあまりないし。」

「バレンタインデーは感謝を伝える日ではないと思うけどね。」

「前世ではそういう文化だったのよ。」

「マナは前世の記憶を鮮明に覚えているの?」

「うん。ほとんどそのまま転生したようなものだし。」

「へぇ。それは興味深いね。」

「私が初めて歌って弾いた曲は前世の曲だし。」

「もしかしてまだたくさん覚えていたりするの?」

「まだまだたくさんあるよ。この世界はクラシックしか音楽文化が根付いていないけど、前世ではJ POP文化が根付いていたからね。バンドとかアイドルとかが多いのよ。」

「マナがアイドルを知っているのそれでなのか!?マナがアイドルをやった時に歌った曲とかも前世の曲?」

「そうだよ。シャイニングツインスターズもそうだよ。前世なら記憶を頼りに曲もダンスも私が教えたの。」

「軽音学部の人達が作詞作曲してマナがダンスを考えているのかと思ってた…」

「私が軽音学部員に楽譜も用意して弾いて貰っていたのよ。」

「俺にも!俺にももっと前世の曲を教えてくれよ!」

「いいよ。せっかくだしバレンタインの曲にしようかな。」

「そんな曲があるの?」

「イベント毎に曲があるわよ。」

「過剰供給じゃないか!作曲家が多いのか!?」

「たくさんいたよ。」

「凄い世界だ…」

「じゃあバレンタインにぴったりな可愛い曲を弾きますね。」

私はバレンタインの名曲、バレンタインキッスを弾いて歌った

サビしかわからなかったけれど

「凄いね…これがJPOP?音楽は奥が深いなぁ…」

「楽譜があればもっと弾けるんだけどなぁ…うろ覚えだ。」

「今度前世の曲だけのマナのピアノショーでもやろうよ。」

「えぇ…私はキッカ国で認められるピアニストになろうとしているのにそんなことして大丈夫なの?クラシック以外の音楽なんて受け入れて貰えるなんて思えないけど。」

「いい音楽は誰が聞いてもいいものだよ。新しい文化をマナが取り入れていくなら流行りそうだけどね。」

「うーん…でもせっかくクラシック上手く弾けるようになってきたからなぁ…今はクラシック1本で頑張りたいな。」

「最近根をつめすぎじゃないか?」

「そう?好調だと思うけど。」

「最近はピアノを弾き始めるとすぐにゾーンに入って周りの音が何も聞こえなくなるじゃないか。」

「演奏中集中するのは当たり前でしょう?」

「それはそうだけれど…集中しすぎて不安になるよ。まるで…現実逃避するようにピアノを弾くから。」

「いいじゃない別に。上手くなってるし。」

「プライベートの些細なことが自分の音楽を彩るんだろう?もう少し心に余裕を持って弾いた方が…」

「ねぇ。上手くならなくちゃキッカ国では認めて貰えないからもっと技術を磨けと言ったのはニックでしょう?」

「それはそうだけれども…」

「ゾーンに入れるようになってからはもっと上手くなれたじゃない。今はピアノの技術を上げるのにベストコンディションなんだから。」

「マナは本来我が強いタイプなのかもね。」

「え…」

「いつも他人に合わせてばかりのマナだけれど…マナのピアノだけは我が強く、自分の表現というものを絶対に曲げない。まるで二重人格だ。」

「誰にだって二面性はあるものよ。」

「どっちが本当のマナなんだろうね。」

「そんなの答えは簡単よ。どっちも紛れもなく私だわ。」

「俺はピアノを弾いているマナとも話をしてみたいな。」

「いつもスパルタ指導してるじゃない。」

「違うよ。そういう意味じゃなくて。従順なマナじゃなくて…攻撃的で反抗的なマナと話してみたいな。」

「そんなの私じゃないわよ。」

「いいや。マナは攻撃的で反抗的な一面を持っているよ。マナの音楽がそれを証明している。それに…キッカ国でチーノを刺した宗教団体を壊滅させたマナを俺は知っているからね。」

「大事な友人が目の前で刺されたら誰でも怒るわよ。」

「みんなに優しいマナももちろんマナだろうけど。俺はもっと見てみたいな。マナの鋭い瞳で攻められてみたいね。」

「Mなの?」

「さぁ?マナに攻められたら目覚めちゃうかもね。俺が言っているのはマナのことをもっと知りたいってことさ。」

「人の悪い面をあまり覗かない方がいいわよ。痛い目に遭うわよ?」

「それでもいいさ。それも人生経験ってことで。俺は人と関わらずに音楽とだけ向き合っていた。でも…人との関わりで音楽が深くなると教えてくれたのはマナだ。人と関わって傷つくならその相手はマナがいいな。」

「嫌いになるわよ?」

「ならないよ。自信がある。だから…もっと俺を頼って生きてほしい。八つ当たりしてもいいから俺を頼って話してほしい。」

「ニックはメンタルケアも完璧ね。」

「こんなことまでするのはマナだけさ。俺はマナが好きだから。」

「ありがとう。ニック。私の師匠がニックで本当に良かった。」

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