第247話 元気になる魔法
冬休みも終わり、新学期が始まる
月日は流れ、今日はバレンタインだ
今年は1人で生チョコレートをお世話になっている人数分作った
「おはよう。マナ。」
「ハッピーバレンタイン。レックス。」
私はレックスに手作りの生チョコレートを渡す
「わぁ。ありがとう。今年は手伝えなかったからマナが1人で作ったんだろう?たくさん作るのは大変だっただろうに…本当にありがとう。」
「料理は趣味ですから。年に1回ぐらいしかお菓子は作らないからね。楽しかったよ。」
「今年は本命がいるのに全員に渡すんだね。」
「…まぁね。」
「少しは本命には特別扱いしてるの?」
「いや。別に。」
「フフッ。じゃあ俺は特別になっちゃったね。」
「どうして?」
「だって1番初めに貰っただろう?チョコをさ。」
「フフッ。そうね。」
「つまり俺はマナの1番の男ってこと!」
無邪気に笑うレックスはまさに太陽のようで
こちらも思わず笑顔になる
「相変わらずポジティブだね。」
「最近はあまり元気がなかったみたいだけど…やっと少し笑顔になってくれたね。」
「え…そう?」
「何かに怯えているみたいだなって思ってたよ。」
「…。」
もうすぐ3学期が終わる
春休みが終わり…
新学期が始まる
新学期が始まるということは
マオが帰ってくる
来年度の新入学生としてマオが入学する予定だ
スリー様が入学準備を進めていて
準備は万端に出来ており
マオは入学してくる
マオに会えることが
嬉しいけれど
弟としてではなく男として見て欲しいと願って出て行ったマオを私は上手に迎えれるだろうか
不安が募るばかりで
魔法の練習にのめり込み
ピアノの練習にのめり込んでいた
「聖女も色々大変なんだよ…」
「大丈夫さ!マナほど強く美しく完璧な聖女なんていない!マナの悩みなんて些細なこと!全て上手くいくに決まっている!」
「断言しちゃっていいの?」
「マナがいつもやってるじゃないか。言霊はおまじないだってね。」
「私を元気づけてくれているの?」
レックスは私の両手を握り跪き、祈るように言う
「マナの紡ぐ未来を。マナの目指すハッピーエンドが叶うことを信じてる。」
少しキザだけど私の為に尽くしてくれるレックスは
私の心を穏やかにしてくれた
「ありがとう。レックス。」
「願わくば。マナの隣に俺が選ばれますように!」
イタズラっぽく冗談めいてレックスは私を笑わせるように言う
レックスの気遣い野お陰で少し前向きに考えていける気がしてきた
人を笑顔にさせる才能なら
レックスの右に出るものはないだろう
スカーレット学園に到着して私はいつも通り隠し部屋へと向かう
「マナ!」
「おはようございます。イシュタル先生。毎朝いつも元気ですね。」
「今日はマナから愛の告白をされる日だからね!いつもよりも元気100倍さ!」
「チョコレートをあげるだけなのに話が跳躍しすぎていませんか?」
「バレンタインという日は好きな人に告白をする日だよ!」
「私はお世話になっている人全員に渡してしますけど。」
「他の有象無象は関係ない!今!この部屋では!私達は2人きりだし!愛の告白には絶好のロケーションだ!さあ!渡すんだ!その愛の結晶を!!」
私は用意したチョコレートをイシュタル先生に渡す
「うおおおおおおおおおおおお!!やったあああああああああああああああああああ!!」
「ちょっ…うるさい…防音設備の隠し部屋でも音漏れしちゃうよ…」
「ああ…最高だよ…神様ありがとう…マナに出会わせてくれてありがとう…」
「大袈裟すぎるよ。」
「何言ってるんだ!まだまだ言葉が足りないぐらいの愛を表現したいよ!!」
「いやもう十分です。間に合ってますので。」
「今日はスペシャル衣装なんだよ!」
「裸エプロンは着ませんよ。」
「私がそんな低俗な衣装を用意するわけないだろう?」
「去年着せようとしてきたくせに。」
「じゃーーーーーーん!!どう?どう?力作さ!!」
「…エプロンじゃん。」
「見てくれよ!このフリル!新婚の若妻が着るのをイメージして作ったんだ!」
「…制服の上から着ればいいの?」
「お願いします!!」
私はイシュタル先生が作ったエプロンをつける
「ポニーテール!ポニーテールでお願いします!」
私はリクエスト通りにポニーテールにする
「完璧だ…この世界で1番美しい若妻だよ…」
「結婚なんてしていません。」
「今だけ!新婚ごっこしよう!」
「えぇ…」
「契約。」
「…わかったわよ。」
イシュタル先生はパントマイムで新婚生活を表現する
「コンコン!ガチャ!ただいまー!!」
「おかりなさーい♡イシュタル先生♡ご飯にする?お風呂にする?それとも…マナにする?」
「もちろんマナで!!お願いしまーーーす!!」
と言ってイシュタル先生が抱きついてきたので
私は迷いなく電撃をイシュタル先生に喰らわせる
目の前でイシュタルは気絶してしまった
「…そろそろ教室行くか。」
エプロンを置いて私は教室に向かった