第229話 復活のアイドル
怒涛の文化祭準備期間を経て
今日はいよいよ文化祭本番だ
私は早朝、学園へと行き
いつも通り隠し部屋へと向かう
「この日を首を長くして待っていたよ!マナ!」
ここの部屋で会うイシュタル先生はいつもテンションが高いけど
今日は一段とテンションが爆上がりしていた
「私の集大成の作品衣装をマナが着て私だけの為にアイドル復活してくれるんだ!!私だけの為に!!私だけのマナだ!!あぁーーーー!!神すぎる!!」
「忙しい日々の中、魔塔に帰ってから寝るまでの間、イシュタル先生の為にアイドルの練習してましたからね。」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「こんな気合い入った衣装作られちゃったらさ。まぁ期待に答えるようなパフォーマンスはしないとね。」
「あぁ!なんと慈悲深い!神様!!女神様!!」
「聖女です。」
「世界で1番可愛くて!世界で1番美しくて!世界で1番えっちな聖女様!!」
「えっちなのはイシュタル先生の前だけだし。」
「私の前だけえっち!?こんなにもえっちな聖女様を知っているのは全人類の中で私だけ!!世界中の人類にマウントが取れるよ!!」
「今日のアイドルマナを見るのもイシュタル先生だけ。」
私はイシュタル先生の渾身の衣装を身に纏う
上半身はキラキラのスパンコールを散りばめられたものでひとつひとつ手縫いで仕上げたものにこの衣装に込められた執念を感じる
ヘソだしの下のレーススカートはふわりと揺れる特注の高級レースだ
「どうですか?似合ってます?」
「このまま昇天して倒れそうになるのを堪えているよ…。」
「そんなんで最後まで見れるの?」
「死んでも思い出すぐらいに脳裏に焼き付けるさ。」
「そう。じゃあ私はイシュタル先生が転生して生まれ変わっても覚えているほどその魂に刻んであげるわ。私の本気のパフォーマンスをね。」
「輪廻転生を繰り返してもマナを推せるなんて!!こんなに幸せなことはないよ!!」
「ありがとう。素敵なファンを持って私も嬉しいです。」
「ありがたき言葉!ありがたき幸せ!!」
「今日の文化祭はまだまだ試練がいっぱいあるからね。今日1日の気合いを入れるにはこのアイドルステージはもってこいかもね。」
「最初がクライマックスだよ!!」
「バカ言わないでよ。今日1日中全てがクライマックスだから。世界最強の聖女様の本気を見せつけてやるわよ。」
一息深呼吸をする
目の前にいる変態教師はサイリウムとうちわを持って目を輝かせて待っている
私達の関係は歪だけど
イシュタル先生がいつも幸せいっぱいに笑うから
私の人生賭けてよかったなって思えるんだよ
今日1日本当は不安なこともたくさんあるけど
この衣装が勇気をくれるから
私の魅力を最大限に引き出してくれるから
魔法がかかったかのように
私は輝ける
「瞬きする暇もないぐらい夢中にさせてあげる。」
アイドルらしい決め台詞を言い放ち
私は歌って踊る
オーラを全開にして輝かせる
指先や髪の毛の揺れまで意識をして魅了する
可愛いくて力強い歌声で心を掴む
そして最強にビジュがいいこの顔で一瞬で悩殺させる
アイドル界隈では負ける気がしない
私は間違いなく伝説のアイドルだ
パフォーマンスが終わり私はお辞儀をして言う
「復活のアイドルマナを応援してくれてありがとう!イシュタル先生のおかげで世界で1番輝くアイドルになれたよ!!」
私がそう言うとイシュタル先生は嗚咽混じりに泣き崩れてしまった
「ひっぐ…ひっぐ…世界で1番…輝いていたよ…。マナ…私だけの為に…本当にありがとう…一生マナを推す…生まれ変わってもマナを推すよ…」
「たくさん愛してくれてありがとう。私は世界一幸せなアイドルです。」
「ううう…これ以上泣かせないでくれよおおおおおお!!聖域に触れてしまった!!もうマナで抜けないいいいいい!」
「ねぇ。やっぱりこの衣装借りてもいい?」
「いいけど…どうするの?」
「今日のオーケストラ部のステージで着ようかな。」
「えええええ!?本当に!?この衣装のマナをたくさんの人に知って貰えるなんて感激だよ!!是非そうして!!」
「うん。この衣装を着ると最強になれる魔法がかかってるから。」
「執念を込めているからね!!」
「絶対聴きに来てよね。」
「最前列で応援するよ!!」